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儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:ももいろそらを


映画『ももいろそらを』予告編 - YouTube

 ※絶賛評です。

 

 

見る前から、良作であるという噂を聞きつけていた本作ですが、はっきり言います。

ももいろそらを。かなり面白い映画でした。上記の予告編を見れば分かりますが、全編モノクロ。しかもこれに輪をかけて、本編はBGMなし(予告編にはカノンが流れていますが、本編にはカノンなんて出てきません)どころか主題歌すらありません。そんな映画だというのに、色彩があって、そこかしこに緊張感があり、そして、とても笑える上質のエンターテイメント映画になっていました。

ちょうど、作品の雰囲気としては、最近、一部の映画ファンの間で話題になった、「横道世之介」に近い感じの映画です。というか、作品内に出てくるモチーフに似ているところがありますので、横道世之介と比較して語ると面白いのではないでしょうか。(ちなみに、僕自身はそこまで横道世之介 は好きではないです。僕自身としては比較すると「ももいろそらを」のほうが好きです)

特にこの映画の白眉は、登場する三人(川島いづみ・小野蓮実・黛薫)の女の子たちの描写でしょう。この三人によって繰り広げられる会話は、どこかの女子高生たちの会話をそのまま盗聴して、それを元にセリフを決めたんじゃないかと思うほどリアルで、面白おかしく、苛立つところもあったり、怖くもあったりします。三人とも人物としての設定自体は、かなりの誇張やありえないところがいっぱいなんですが、この、リアルな会話だけで、その「嘘だろ。そんなはずないよ」という設定までも飲み込めてしまいます。それくらい、三人が本当に現実にいるような錯覚がするくらい、会話の場面には強い現実感があるんです。

これは、もちろん、それぞれの役者さんが頑張ったということでもあるのでしょう。(特に蓮実役の子の演技は素晴らしいです。あまりにも上手で見てると本気で腹が立ってきますから)しかし、それだけではないと思います。三人とも本当に十八歳であるという、それだけで備わっている説得力があるんだと思います。なぜなら、本当の十八歳じゃないと、あの、なんだか呂律が怪しかったり、叫んだりするときに少し恥ずかしがっていたりする、生の感じは出てこないからです。あれ以上、歳が上へ行くと、精神的に落ち着いたり、割り切れたりするようになってしまいますし、あれより歳が下だとあそこまでの演技ができません。程よく演技ができ、かつ、どこか演技じゃない素も出てしまう年齢だからこそ、異常なほどの現実感があるのです。

 しかも、「ももいろそらを」は、その現実感を捉えようとするカメラの方もとてもいいです。この映画では、撮っているカメラが、ブレたり、ピントがガチャガチャになってしまうシーンがあったりします。この普通の映画で言えばガタガタのカメラワークなのですが、「ももいろそらを」では、それが却って生々しく見える要因となっています。ようは、ピントがガチャガチャになったり、ブレたりすることでドキュメンタリー映画であるかのような錯覚を観客にもたらしてくれるわけです。また、BGMはないけれども、周りの雑音はしつこいほど入れられている、この映画の音声も、僕は大好きです。役者さんの出している声がちょっと聞こづらい場面さえあったりするくらいなのですが、それがなおドキュメンタリーめいていて、現実感をより引き出すことに成功しています。

それ以外にも、この映画の良かったところはまだまだあります。例えば「色彩のない画面、BGMのない画面」は見ていて押し付けがましさがありません。笑うところや、緊張するところを、BGMで押し付けていないし、感動するところや感嘆するところを画面の色彩で押し付けていないのです。個人的にはそこも非常に気に入っています。この映画の描きたかったことからすると、感動的なBGMや色彩なんてあったら邪魔なだけです。特にBGMがあったら、一気に非現実感が増してしまい、見ているこちらが醒めてしまったはずだと思います。それをなくしたのは、大正解でしょう。

あえていえば、少し話の筋書きに甘いところ――特に終盤の展開、いづみの心境の変化――があったりもしますし、脚本も「それはちょっと説明的すぎるだろう」という印刷屋の顛末の語りとかがあったりします。が、そんなことは大体の人にとっては気にならない程度のものでしょう。

 

この映画の好きなシーン。

・いづみが印刷屋から借用書をもらったときにさり気なく呟く。「字、きたね」

 とてつもなく自然に演技をしているものだからびっくりしました。

・光輝からの電話の直後、頭にきたいづみが取った行動。

 なんだか自分もあんなことをやったことがあるような気がして。

・「バーカ」「バーカ」と言い合い続けるいづみと蓮実。

 ここから既に、女子の会話にあるギスギス感がとてもよく表現できています。最高です。

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