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儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画レビュー:リカちゃんとヤマネコ 星の旅

映画レビュー 好評・絶賛評

ーリカちゃんとヤマネコ 星の旅の予告編は見つかりませんでした。

(※今回はレビューです。感想を言うにしても、内容を紹介しないと始まらないほど、ほとんどの人が見ていないので)

 

 

むかしむかし――というか、1993年――その年に完成した一つのアニメ映画がありました。そのアニメ映画は、のちに機動戦艦ナデシコ等で有名になる、チャチャ三羽烏の一人、佐藤竜雄さんが初の劇場監督を務めたものであり、そして、大人気ドール「リカちゃん」のOVAシリーズから派生したものであり、リカちゃん初の劇場版でもあったのです。

その劇場アニメの名前は「Lica the movie リカちゃんとヤマネコ 星の旅」

夏休み、主人公のリカちゃんは、作曲を行き詰まらせていた父親、香山ピエールとともに、山奥の避暑地にやってきます。その山奥には、小さな村「星降村」があり、リカちゃんはなんやかんやあって、その村の女の子、星野ゆきと出会います。リカちゃんは星野ゆきと仲良くなりながら、「星降村」には、七夕に「星祭」というお祭りをやることを聞かされます。その後、リカちゃんは神社の神主の息子であるという、カオルや、生意気な口の少年ジロウ、その妹であるサキ、その他、村の子供たちとも仲良くなっていき、リカちゃんは七夕の星祭の準備に参加するようになっていきます。参加するうち、リカちゃんは石像として祀られている「元祖・ヤマネコ」など、その村の不思議な側面を徐々に見ていくようになります。そして、あるとき、迷子になってしまったサキを探すために入った山の中で、リカちゃんは石像ではない、本物のヤマネコと遭遇して――

という内容の映画です。

ですが、その映画は劇場で公開されることがなく、そのまま終わってしまいました。1995年の公開を待っていたこの映画は、バブル崩壊等によって、結局、公開される機会を失ってしまったのです。それどころか、フィルムとして公開される機会すら失ってしまい、結局、完成から数年後の1997年にようやくOVAとして販売され、世の中に出たのでした。劇場公開されることのなかった、劇場アニメである、この作品は果たしてその程度の作品だったのでしょうか。上記のあらすじを見れば分かる通り、これは典型的な夏休み映画です。夏休みに子どもがどこかへ遊びに行き、その遊びに行った先で冒険をして、成長して、帰ってくるという、その類型の映画。毒にも薬にもならず、その場で子どもたちを楽しませながら、さらりと次の年に忘れられてしまうような映画。そんなものだったのでしょうか。

いえ、まったく違いました。

どころか、この「Lica the movie リカちゃんとヤマネコ 星の旅」は、見たら絶対記憶に残ってしまうような映画だったのです。強烈なほど、どうかしているとしかいいようがない展開が、次々と押し寄せ、頭が軽くフラフラするようなぶっとび映画。それが「リカちゃんとヤマネコ 星の旅」でした。どれくらいストレンジだったかというと、後々「リカちゃん」の製造メーカーであるタカラが、スーパードール★リカちゃんの企画を説明するさい、この作品を杉井ギサブローさんに見せながら「これとは違う感じで…」と反面教師として挙げたというほどだったのです。リカちゃんが途中で悪夢を見る展開があったり、中盤の日本昔ばなし風の美しいアニメーションの中で語られる、ボンクラ男の物語とか、そして、ラスト20分くらいに突然、どう考えても、2001年宇宙の旅のスターゲートオマージュとしか思えないシーンが出てくるところなど、とてもではないけれど、リカちゃんの劇場版映画とは思えない、SF&ファンタジー要素特濃の78分のフィルムでした。

主役のリカちゃんもこんなかんじで、

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見ていて、なんだか、胸にギュッとくるものがある表情を浮かべたりもします。

センス・オブ・ワンダー

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このとおり、まったくもって素晴らしいセンスがあり、そして大きく夢があります。

絵の美しさもさながら、

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凶悪な龍なんかも出てきたりします。

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こ、これは一体なんの映画なんだろう……?と思われる方も多いことでしょう。この画像のようにこの映画には、本当に様々な場面がぎっしりと詰まっています(注:本当に上記の画像はひとつの映画から取ってきた画像です)とにかく特濃です。濃いのです。リカちゃんの映画だから、相当、淡くて甘ったるいものだろうと思って見るとかなりの不意打ちを食らってしまう、それくらい濃い映画だったのです――。

 

―――――

リカちゃんの映画とはとうてい思えないような、どうかしている展開が続く映画が「リカちゃんとヤマネコ 星の旅」でした。その上、これほどまでに無茶苦茶なことをやらかしているのに、なぜか、ラストはとても綺麗に着地し、そして、見終わってからどこか寂しい気持ちが見てた人の胸に込み上がってきます。エンディングにかかる曲も素晴らしいクオリティで、登場人物たちの星祭の様子と相まって感傷的になります。そもそも、音楽自体が非常に素晴らしいものです。日本の祭りらしく、太鼓や横笛の音を取り入れつつ、どこか軽さがありながらも、オーケストラの音の厚みによって緊張感を損なっていません。音楽だけでも一見の価値があります。リカちゃんとヤマネコ 星の旅、僕はかなり好きです。一年前に見てからずっとこの映画のファンです。この映画は傑作といっても過言ではない、と僕は勝手に思っています。

 

※一応、注釈をつけておきますが、上記の画像にある龍などは、星祭というお祭りのメタファーとして映画上に登場していることが、映画をよく注意してみると分かったりします。龍というのは、お祭りで使うお神輿、星たちは喧嘩祭りに参加する若者たち、といった具合に解釈していくことが可能です。日本のお祭りという行事には、一つ一つにちゃんと意味があって、その背景には昔から言い伝えられている「物語」があったりします。ようは、この作品のラスト20分にある、上記の画像のような怒涛の展開は、その「隠された物語」を外にちゃんとした具体的な形で出してみた結果なんですね。なので、一見、この絵面は、リカちゃんという映画を破綻させているように見える絵面ですが、物語上は星祭との関連があり、実はまったく破綻していません。レビューだけでは誤解が生じると思いましたので、念のために注釈しました。

※もう一つ、注釈。〈1993年に完成していた――〉というのは、監督の新宿ロフトプラスワンで行われた、誕生日会で「監督がそんな発言してたよなぁ」という僕の記憶によるものであり、しかも、僕はあのとき酔っていたので、記憶違いの可能性は高いです。

追記:ED曲、ネットを探していたら発見しました。


夏のゆうべ

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