儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:ランダム 存在の確率


『ランダム 存在の確率』映画オリジナル予告編 - YouTube

 

恒例の手短な感想から

意外と面白いぞ、これ!

といった感じでしょうか。

 

 正直、SFのネタとしては、もう何度目だよと思うくらいのネタだと思います。物理学的に言ったところの(量子論的に言ったところの)多世界解釈を元にした、不思議な現象に登場人物たちが巻き込まれる、という映画なのですが、この時点で、だいぶありきたりな話ではあると思います。特に多世界解釈を元にしているあたりが。

 多世界解釈を元にした物語なんて、ハッキリ言いますが腐るほど存在しています。去年の小説で、ルース・オゼキの「あるときの物語(上)あるときの物語(下)」なんてのがありましたが、これも多世界解釈を使っていました。

 多世界解釈って、SF的――また文学や映画などの物語的には、ものすごくご都合が良い話なのでしょうね量子力学等の物理学を、そこそこ勉強した人からすると、多世界解釈は言うほど凄い話でもなんでもないのですが、おそらく、量子論における他の解釈よりも圧倒的にイメージが分かりやすく、かつ、自分たちの足元をぐらつかせてくれる部分があるため、物語屋の人たちにはウケがいいんでしょう。そのため、便利な舞台装置として利用されることが多いのだと思います。

 常識を覆す面白い現象を簡単に生み出してくれる、あっという間に、話が面白くなる、物語にとっての”科学”調味料が多世界解釈と言ってもいいかもしれません。

 この映画も例に漏れず、低予算ながら簡単に面白い話が作れる科学調味料として、このとおり、多世界解釈を物語に加えたのでしょう。

 なので、この映画のアイディアが素晴らしかったかというと、かなり微妙です。ちょっとSFに詳しければあるいは科学に詳しければ「まあ、よくあるこの手の話のウチの一つかな」で済む程度のアイディアしか使っていません。 

 

 ですが、個人的な感想としては、アイディアこそ微妙であったものの、この映画は、話自体が非常によく出来ていたので面白かったです

 まず、8人の登場人物の描き分けがよく出来ています。短い映画で、かつ、いろんな人が交錯して会話するような映画ですが、登場人物を全員、ちゃんと最初から最後まで見分けることができます。それくらい、各キャラクターの性格付けや、見た目の印象などをキッチリ分けることが出来ています。

 そして、それぞれの登場人物の人間模様を描くのも、非常に上手いです。各登場人物に生じる、微妙なすれ違い、そのすれ違いに至るまでの過程が、とても巧みで見ている人を惹きつけてくれます。

 更に、この映画、ベタな手法ではありますが、ちゃんと観客をドッキリさせられるように、様々な場所でいろんな演出を凝らしています。なので、見ている間中は、結構ハラハラする場面も多いのです。

 映画自体は、そこそこ、頭を混乱させるようなつくりになっていますが、そういった映画が苦手な人でも、最後まで飽きることなく見通せるはずでしょう。

 オチもなかなか良いです。どこかで見た話のような気もしますが、多世界解釈ものの中では結構、良い意味で酷いオチを採用しています。その分、主人公の彼女ではない、黒髪の彼女は一体なんだったんだろうという疑問は残ってしましますが(描写から察するに、彼女は恐らく、別の世界の…?)それを差し引いても、面白い終わり方でした。

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