儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:パディントン


くまのパディントン / Paddington 予告編

恒例の手短な感想から

 パディントンでしょうか…?いいえ、ベートーベン。

といった感じでしょうか。

 

 一応、Rotten Tomatoesなどの海外サイトでは高評価を得ているらしいのですが、えーっと…実際の本作は、正直、見た目もパディントンでなければ、中身もまったくパディントンじゃない――どころか、内容がどう見ても90年代によくアメリカで作られていた、二束三文のファミリー映画以外のなにものでもない映画でした。

 で、こういうレビューを書いていると、うるさい原作ファンが喚いているだけと思われてしまうかもしれませんが、まったく違います。なぜなら、この映画、原作の「くまのパディントン」とまったく内容が違うとか、パディントンっぽくないとか、パディントンが原作の格好をほとんどしてないとか、そういう話以前のところから巨大な問題が存在しているからです。

 先ほど、「90年代によくアメリカで作られていた、二束三文のファミリー映画」という表現を自分は使いました。この文章を読んだ方は、自分が皮肉でそういう比喩を使っているのだと読解した人も多いのではないでしょうか。

 いえ、実は、違うのです。比喩でもなんでもないのです。本当にこの映画の中身は、パディントンのように見せかけた「ただの90年代によくアメリカで作られていた、二束三文のファミリー映画」なのです。

 

 なぜなら、話の筋書きが「ベートーベン」の二番煎じですから。

 ベートーベンというのは、バーナード犬「ベートーベン」を主人公としたファミリー映画シリーズなのですが、この第一作目の「ベートーベン」に今回のパディントンは、ものすごく話の筋書きが似ているのです。

 ベートーベンのあらすじは、端的に説明して「いかにも真面目で堅物サラリーマンな父親を中心に、なんだか仲が上手くいっていないニュートン一家に、突然、バーナード犬のベートーベンが転がり込んできてしまう。ベートーベンは、犬らしく、家中をごちゃごちゃに汚してしまったり、ベッドの上で濡れた体をバタバタやってしまったりして、父親から追い出してやる!と言われてばかり、だがしかし、そんな父親もなんやかんやあって、次第にベートーベンを受け入れるようになってくる。しかし、そんな中で、元々生体実験用の動物として狙われていたベートーベンが、悪者たちに連れ去られてしまう。このままではベートーベンは生体実験の餌食に!ニュートン一家はベートーベンを救うために決死の行動。いかにも堅物真面目人間だった父親が、家族であるベートーベンのために大胆な行動を取ったりして大活躍。奥さん、息子、娘揃って『パパ見直したわ!』となって、大団円」というのが大まかな話なのですが。

 どうですか、ほとんど一緒でしょう。

 90年代、ベートーベンやホームアローンを下敷きにしたような、微妙にパクったようなファミリー映画は嫌というほどありましたが、まさに本作はそれと同じなのです。本当に「90年代によくアメリカで作られていた、二束三文のファミリー映画」と同じ作りになってしまっているのです。

 

  正直、家族の設定といい、敵として主人公を捕まえようと麻酔銃を打ってくるキャラが出てくるところといい、なにからなにまで、そっくりで、この映画における「ベートーベン」を「パディントン」に置き換えれば、まんま、今回の本作「パディントン」にそっくりな映画が出来上がります。

 それくらい、既製のエンターテイメント映画の枠組み、骨子に、なんにも考えないまま、パディントンというキャラクターを押し込んで作っただけの”工業製品”が本作「パディントン」なのです。

 

 そして、そんなライン工みたいな作り方をした映画のせいなのか、いろんな場面のクオリティがびっくりほど低いです。正直、パディントンという看板を除いて、単純なファミリー映画として見ても、元の「ベートーベン」より劣化してるような場面が散見されます。

 例えば、あるシーンでは、ミッション・インポッシブルのパロディが、急に始まったりするのですが、これが、まったく本編と関連性もなければ、面白くもない上に、子どもが見ても分からないと誰得すぎる状態なのです。

 例えば、あるシーンでは、ブラウンさんたちがまったく文脈的に意味不明なタイミングでキスし始めたりしています。この一家、全編に渡って、行動が支離滅裂なのですが、それが極まっているのがこの場面だといえるでしょう。

 挙句に、重要な事を全部セリフで説明してしまう始末。

 逐一、いろんな場面で「なにをどうトチ狂ったら、パディントンという看板を掲げた映画でこんなことやる気になるの!? いや、というか、そもそも単純に話としてつまらない!」と言いたくなる場面がやたら出てきます。

 この映画、そもそも映画としても、面白くないのです。最初の20分くらいは「お、全然、パディントンっぽくないけど、良いんじゃないのかな?」という感じはするのですが、それからどんどん評価が下がっていくばかりで、かろうじてある面白さも、再三繰り返すように「ベートーベン」から借りてきたような面白さとなっており、非常に残念な作品と言わざるをえません。

 

 イギリス・フランスの合作映画らしく、画面自体はおしゃれに芸術的な撮り方をしているのですが、僕としては、この映画で評価できるのはそこくらいです。

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