儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:日本で一番悪い奴ら


日本で一番悪い奴ら Twisted Justice (2016) 映画予告編

恒例の手短な感想から

ここ数年でもかなり上出来の実録もの

といったところでしょうか。

 

 相当に素晴らしい映画であったことはまず言及しておきたいです。この映画は、予告編の段階で相当に面白そうだという期待がありましたが、期待を余裕で上回る出来の映画になっています。

 ある種、ちょっと実録ものを更新している部分さえあるのではないかと思うほどの傑作です。基本的にこの映画、文句らしい文句を入れられる箇所がありません。

 

 俳優たちの演技も申し分ありません。むしろ、主演の綾野剛やYOUNG DAISに至っては「ここまで演技のできるやつだったのか…」と、感心すると思います。

 また本編自体の内容も当然素晴らしかったです。基本的には、ヤクザの組員と刑事がチームを組んで、犯罪の検挙数を上げることに躍起になるという話なのですが、そんな話でありながら、実は銃殺などで分かりやすく人が殺されるシーンが一つも本編に出てこなかったりします。

 

 たとえば、今年公開された映画で「ブラックスキャンダル」なんて映画がありました。当ブログでも取り上げたことのある作品ですが、あの映画と本作、実のところ話自体は、ほとんど同じことをやっていたりします。

 しかし、実際の内容はまったく違う印象を受けるはずです。ブラックスキャンダルでは、本編が非常に血みどろでした。こちらはまったくそうではありません。

 それでも、本作はブラックスキャンダルに匹敵――いえ、それを超えるほどに、闇社会の、人間の恐ろしさを実感できる一作になっているのです。

 

 これはブラックスキャンダルよりも、本作のほうが圧倒的に、日本人にとって身に覚えのある内容が多く描かれているからでしょう。

 目の前でものすごい凄惨な暴力行為が行われているのに、触らぬ神に祟りなしとばかりに、そんな暴力なんてなかったかのように無視するという描写や、会議の中で誰かが「それはおかしいでしょ」と指摘しながらもグダグダと議論を重ねた結果、いつの間にか態度が軟化していて、気がついたらかなり無理のある論理で賛成している描写などに代表されるように、この映画は"日本の社会ではありがちなリアリティ"を捉えることが出来ているのです。

 事なかれ主義と成果主義という、明らかに矛盾している二つの主義をごちゃごちゃに混ぜ合わせた主義によって成り立っている日本社会の姿、日本人自身でさえ時としてまったく理解ができないほどに奇妙なこの社会の姿をこれでもかとよく捉えることに成功しています。

 結果、この映画を見て、自分も含めた日本人全員が「形は違えど、この光景は自分も覚えがある」と思うのです。

 

 また、これほどの凄惨な内容にも関わらず、妙に場面によっては間抜けに見えるほどに笑える光景だったりするのも、非常に興味深いですし、だからこそリアリティが強いです。

 もちろん、なんだか間抜けな場面を入れたりするのは、昔のヤクザ映画からずっと日本映画が得意としている描写なのですが…。

 

 最後になりましたが、この映画に関して唯一の文句というか、諸注意です。

 予告編のロゴを見て分かるとおり、東映と日活が配給している映画になります。映画で日活…となると薄々気づいていることだとは思いますが、結構、ソッチ系の描写も多い一作になっています。

 正直「これを15禁でよく押し通したな」と思うレベルです。

 

 というわけで、そういうのが苦手な方だけは、なるべく本作の鑑賞には注意していただきたいと思います。

 下手すると(主に綾野剛ファンの方などが)鑑賞後、二日ほど寝込みかねない描写ですので…。

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