儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

2016年映画ランキング

2017年、あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。

というわけで、早速、2016年に公開され、自分が鑑賞した映画からランキングを発表していきたいと思います。一応、上半期のランキングはこのようになっております。

 

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上半期はかなり荒れ気味でしたが、なんと2016年、蓋を開けてみたら思いの外、下半期に良い映画が多く、順位は18位からの発表となっております。

2016年映画ランキング


18.ブラックスキャンダル

感想記事はこちら

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だいたい、上半期に理由を話してしまった感がありますが、なかなか面白いグッドフェローズリスペクト映画です。少しテーマ性も違って、なんというか「色違いのグッドフェローズ」的な愉しみ方も出来る映画です。ただ……それ以上でも以下でもないんです。従って、どうしても、こうなるんです。


17.海よりもまだ深く

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これもここで十分でしょう。なんというか、是枝監督の作品はよく出来ていて、これも面白いのですが、ただ「いや、もういいだろ、こういうの」という気がしてしまうのも事実でして……。


16.ちはやふる -上の句-

感想記事はありません。

これもこの順位まで取れれば十分ではないかと思います。確かに、最初見たときは「邦画がここまで頑張るなんて!」という感動込みでだいぶ、評価しましたが、蓋を開けてみたら今年の邦画、結構、コンスタントに面白い映画が多くて……「ちはやふるで喜んでいた自分たちは一体何だったのか」と。


15.怒り

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邦画ラッシュが続いております。実は感想記事では、そこそこ苦言も呈しているのですが、ただまあ「この映画自体は面白い」というのも事実なので、この順位です。何度考えても「実は、あまりしっくりこない」下手な映画なのですが、その「しっくりこない」感じがテーマに偶然、ぴったり合っていて相乗効果を醸し出している偶然の傑作です。


14.シン・ゴジラ

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この映画も感想記事ではいろいろ言っていますが……まあ、この順位が妥当ではないでしょうか。本作はエンターテイメントとして本当によく出来ていると思います。意識高い連中に、ヘンテコな選民意識を植え付けさせ「恋愛要素のある映画などを生み出しているから邦画がつまらないのだ」と、言い出す知ったかバカどもが、よりにもよって邦画が面白かった2016年にはびこったのも、そこまで人を喜ばせられるのは、本作が優れたエクスプロイテーション映画だから、と言えるでしょう。


13.コウノトリ大作戦!

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本作がこれほどに面白い映画だったとは、鑑賞前はとても想像していませんでした。女性層が喜びそうなゆるふわ映画、くらいのテキトーな宣伝しか掛けられてしませんでしたから。しかし、中身はなんとも、よく出来たピクサーのパチもん映画。というか、スタッフはピクサーの人なので、似ているのは当たり前。なおかつ、なんともブラックなジョークが蔓延る子育て苦労映画なのです。赤ちゃんはかわいいけど、まあ大変だよ、という映画。子育ての苦労、というものは最近特にツイッターなどで盛り上がっている話題なわけで、もうちょっと上手く宣伝すれば、世の中に広まった可能性もあったのになぁ……となんだか歯痒い気持ちです。

 

 

12.アーロと少年

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本当はこの順位に入れたくないんですが、これより上は、個人的な思い入れとか、そういうものが多く詰まっている映画であるため、どうしてもこの順位に収めるしかありませんでした。冗談抜きで、様々な映画の影に隠されてしまった傑作アニメーション映画です。シンプルなストーリーと設定、なおかつ、古き良き映画を思わせる演出とキャラクターの数々……下手なアメコミ映画よりも全然、渋い良い映画です。


11.オデッセイ

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「あれ…上半期ベストじゃなかった?」
……記憶にございません。

 まあ、なんというか、思い直すとこれくらいが妥当な順位だった気がするなぁと……。


10.ズートピア

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話題になるのも納得の面白さの本作でした。しかも、なおかつ、ラプンツェル以降のディズニー映画と違い、自分のような厄介なディズニーファンも納得の出来栄えなのだから、本当に素晴らしいです。……その分、子どもがだいぶ置いてけぼりにされた感はありましたが。しかし、このディズニー自らがディズニーの闇に切り込んでいったこの映画。ある種、ディズニーが最後の切り札を切ってしまった感じもあり、以後、ジョン・ラセター体制は果たして生き残れるのか、と少し不安です。本作が良く出来ているだけに。


9.聖の青春

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いや、これはもう誰からどう見ても贔屓の9位ですよ。本気で「本作は、今年一番の地雷映画になりかねない」と危惧していましたから。例えば、ひたすら主人公の内省が続くような内容だったり……感動BGMだらけの代物になっていたり……と。本作は、その全ての危惧を破って、どうにかちゃんとした作品に仕上げていました。なにより、とても静かな本作には、映画として独特の魅力があります。ハンス・ジマー調の「どーん」が流行っている今だからこそ、余計に、この魅力は光っているようにも思うのです。


8.ひな鳥の冒険

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いや、なんで長編よりも短編のほうが上の順位なんだという話ですが……。しかし、それくらい評価したいほどに本作は素晴らしかったのです。実際、ディズニー/ピクサー側も本作を大きく評価していたのか、ディズニーの次回作「モアナと伝説の海」の内容は、ある意味で本作を、流用して、よりブラッシュアップさせたとも言える内容です。そういう意味も含めて、本作は必見の一作なのです。


7.五日物語 ~3つの王国と3人の女~

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寓話をここまで突き詰めて映像化できたのか、と、この順位も納得の一作です。ギレルモ・デル・トロに続く、ファンタジー映画のつくり手が現れた、と喜ばしい一作でもあります。実は、監督のマッテオ・ガローネ氏はどちらかというと、社会派の印象が強い監督なのですが、そんな印象など吹き飛ばしてしまうような素晴らしく作り込まれた美術と画面がそこにはありました。本作も見逃せない一作でしょう。


6.この世界の片隅に

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日本版「ヒューマン・コメディ」の大傑作です。魅力的なキャラクターと、多少の疵はあれどもリアルに描かれた人々の生活を描写した本作は、戦争映画の傑作として間違いなく、語り継がれていくことでしょう。宮﨑駿の後継者、とはるか前から目されていた片渕須直監督にようやくスポットが当たったという意味でも喜ばしい映画です。アニメ業界人の中で評判になるアニメ映画は、大抵「作画の実験とかそういうものばかりに注視していて、後は感動をぶち込んで煮しめればいいや」と言わんばかりの、不勉強な演出根性が垂れ流される映画も多いのですが、本作は、そういったこともありません。そこも大変素晴らしいのです。


5.ミラクル・ニール!

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モンティ・パイソンが苦手な人でも楽しめる、コメディ映画が5位です。理由は、だいたい上半期にも書いてありますが、なんといっても、パイソンズが最後に集結した一作であり、しかも、普通に面白いというここに尽きます。


4.ハドソン川の奇跡
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クリント・イーストウッドは化物か。そう言わざるをえないほどに、素晴らしい一作でした。なんとも、地味な映画ですが、しかし、だからこそいいのです。派手派手でいちいちBGMがギャーギャー喚き出し、馬鹿でも分かるように、これ見よがしにテーマを提示して……なんて無粋なことをしないから素晴らしい映画なのです。ひたすらに、実直な主人公や周りの人々の姿は、古き良き映画を見るかのようです。まだ、こんな映画を撮れてしまう末恐ろしいウェスタン爺に敬意を表して。


3.聲の形

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え、意外!?と思った方も多いかと思います。そうなのです。実は、自分の中では、今年は「アレ*1」よりも「ズートピア」よりも「この世界の片隅に」よりも、「聲の形」が一番アニメ映画で心に残っているのです。そこまで話題にはならなかった本作ですが、自分の個人的な人生経験なども重なる一作で、かなり、感情移入して見た一作です。思い入れも半端ではありません。なにより、ラストが「いかにも映画らしい、含みを残した終わり方」になるのも、今年のアニメ映画では本作だけなのです。


2.日本で一番悪い奴ら

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上半期ベストから順位が揺るぎませんでした。いや、何度考えても素晴らしい映画だったと思います。ヤクザのスパイと警察の間で描かれる、ただならぬ友情の関係性などにもよく見られる、嘘も本当も全て交えた複雑な人間関係。そして、複雑な人間関係が存在するがゆえに、組織というものが至ってしまう恐ろしい結論や、トチ狂った行動の数々。それらは、誰にとっても他人事ではないものです。だからこそ、本作は銃殺沙汰など一つもないのに、異様に怖いのです。


1.アイアムアヒーロー

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なんとこれが一位か、という感じかもしれませんが。年間のベスト・ワン、となると、自分の中では「普通に面白い映画」ではダメなわけです。欲を言えば、面白い以上の強烈な何かがあって欲しいのです。その何かが、強烈に合った映画は、間違いなく本作でした。本作には、下手したらシン・ゴジラさえ超えてるのではないかと思われるレベルでの「あぁ、この国、もう終わった。この人達はもう終わりだ」と思わせてしまう絶望と日常の崩壊があります。それも「決して幸せとは思えない、しかし、後からしてみたら十分に幸せだった」……そんな絶妙なバランスの日常が崩壊してしまう、という、この問答無用のリアリティに「喜怒哀楽」を超えた何か強い感情を覚えてしまうのです。しかも、そんな難しいことを、決して傑作を撮ってきたとはいえない、人たちが作り上げてしまったのです。
……なんだか、上半期と同じようなことを言ってしまっていますが。

ともかくとして、今年は「邦画が頑張っていた(それも、駄作を作っていたような人たちが特に頑張っていた)」ということもありますし、それの象徴として本作が一位というのがピッタリではないかと思うのです。

 

以上が、2016年ランキングになります。

 

 

総評としては……

「邦画は頑張った!」

ランキングも、上位3位が邦画な上に、全体的にも邦画が過半数という状態です。こんな年があろうとは、自分も想像していませんでした。しかも、どの映画もメジャー配給で公開館数の多い映画ばかりだったという驚き。こういう場合、今までは大抵アニメ映画だったのですが、今年は実写が多いのです。信じられない年があったものです。なお、来年からは、地雷案件が多数出てくるようなので、邦画が面白いのはひょっとすると今年までかもしれません。来年も面白い映画を作っていてほしいのですが……。

 

そして、

「洋画がヤバい……」

今年、対照的にクオリティが落ちていたのは洋画です。芸術映画もエンタメ映画も、全てひっくるめて今年の洋画はかなり危険な水準にありました。上半期では「ヨーロッパ映画のハリウッド化」を危惧しました。確かにそれも酷かったのですが、その上、下半期になってだんだんと露呈してきたのは「ハリウッドのゲームムービー化」です。
一体何度「うわーまるでゲームみたいな画面だなー」と思ったことか。演出のチンタラしている感じや、クライマックス付近の構成は、必ずと言っていいほど「中ボスが出てきて、その後でラスボスが出てくる」構成になっているところ、ゲームのミッション感あふれる「〇〇から攻撃して!」展開などなど、挙げればキリがないほど、あちらこちらが「ゲームっぽい」のです。戦場の描写はほとんどが、FPS/TPSゲームのそれっぽいことも挙げられるでしょう。
実際、来年にはゲームを映画化した作品で大きいものが出てきますし「ハリウッドのゲームムービー化」は今後、大きな問題になると思います。そのことも含めて、来年は「ひょっとすると洋画もつまらない年かもしれないな」と少し危惧しています。

 

 

そんな状況でも、なんとか、来年も面白い映画を拾っていきたいと思います。

*1:アレとは、アレである。アレと言ったら、その…アレなわけだよ。「僕の映画……ひょっとして……アレになってるーっ!?」とか、まあ、そんなとこだ。

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