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儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:ネオン・デーモン


『ネオン・デーモン』予告

 恒例の手短な感想から

ダサいよ。レフンマジダサい。

 といったところでしょうか。

 

 いや、これが本当にあのニコラス・ウィンディング・レフンの作品だというのでしょうか。信じがたいほどに、なんなんでしょう。この陳腐な比喩表現と、どっかで見たことあるような画面のオンパレードな映像集は……。

 粋がった、知ったか二流監督が撮る、どうしようもない芸術映画によくありそうな感じのイマジネーションが、所狭しと並ぶばかりのこれを、どうやって褒めろと言うのでしょうか。

 しかも、この映画は映像がダサいと言うのに、音楽も……なんの工夫もない、二束三文のトランス系の音楽が、ぴこぴこだらだら流されるだけで、ちっとも格好が良くないのです。フライング・ロータスなどの”イマドキの音楽”を知っている人が、これを先進的と見る向きはないでしょう。ニコラス・ウィンディング・レフンこんなに音楽のセンスがない人でしたっけ?

 

 まあ、所詮は映画音楽なので、そこまで先進的なものを求めてもしょうがないのは分かります。映像と物語のために、音楽があるのですから。しかし、この映画の場合、肝心の映像と物語がどうしようもないから、音楽のダサさまで光ってしまいます。

 で、肝心の映像と物語ですが、ニコラス・ウィンディング・レフンらしい感じは確かにあります。照明の独特さや、作風の雰囲気などは極めてニコラス・ウィンディング・レフン的ではあります。今回は「やたら真っ白な部屋」とかそういう画面づくりが多いので、鈴木清順の「東京流れ者」あたりでも意識してるんでしょうか。*1

 それ自体は嫌いではないのです。むしろ、好きな方です。

 実際、このブログでも過去作の「オンリー・ゴッド」などを扱ったりしたこともありますし、彼の作品の方向性は自分好みではあります。しかし、本作のこれは……繰り返しになりますが、ダサいのです。

 

 例えば、序盤、とある人が、とある女性の付けている口紅の名前を「レッドラム」だと言います。レッドラム。この時点で、「あー」と頭を抱えたくなった映画ファンも多いことと思います。REDRUMは逆さに読むとMURDER(殺人者)。スタンリー・キューブリックの「シャイニング」で出てきた”有名なネタ”ですね。

 このネタ……もう、いろんな映画で散々やり尽くされたネタなんですよね。ハリウッドのくだらない二束三文ホラー映画等々で、やったら引用されまくっていて、もはや「だ、ダセー……」としか言いようがないものとなってしまった表現です。「シャワーシーンで殺人が起こる」くらいに繰り返されすぎた、もはやギャグにしか使えないネタです。

 これを今更、堂々とやってしまう、ニコラス・ウィンディング・レフンって……。

 

 まあ、あえて言うならば、わざとシャイニングを引用することで「この映画の主人公は、そういう邪悪な意思に感応する性質がある」ということを、暗に示そうとしたのかもしれませんが……。

 そうです。どうもこの映画は「実際の世界で起こったことを映しているシーン」と「少女が感応して人の意思を幻視しているシーン」が交錯しているようなんです。*2実際、本編のクライマックスあたりに「彼女が夢でこれから起きることを幻視して、起きたら隣の部屋で実際に……」なんてシーンがありましたし。

 本編の途中、主人公のことを評して「彼女には光っているものがある」なんて感じの字幕のついたセリフがありましたが、あれ、原語では「彼女は"The thing"を持っている」って表現してるんですよね。ようするに、単に「スター性がある」と言っているのではなく、「なにか」を持っていると言っているんです。

 で、その、彼女の持つ"The thing"を奪い合おうとする、モデル業界の人達を描いた作品が本作、ということなんでしょう。写真に撮るという行為も、セックスも、カニバリズムも、ようは彼女のThe thingを自分のものにしようとしている、という意味では同じです。(ネタバレになりそうな部分だけは白字で表記)

 そして、"The thing"を奪い合おうとしている人たちーーそれ全体を含めた業界自体が、シャイニングにおけるホテルのような場所であり、様々な光で彼女の誘う姿はまさに「ネオンデーモン」なんだという。

 ようするに、そういう映画なのでしょう。

 そんな映画を、女優である奥さんのリブ・コーフィックセンのために作ったと。(なにがあったんだか、知らないですけど)

 

 ここまで。

 ここまで読み取った上で自分は言いますが、本作はダメです。

 アレハンドロ・ホドロフスキーの表現を究極にしょぼくしたような、ネオンライトの三角形ーーおそらくは、ネオンデーモンの象徴なんでしょうが、なんというか、ネオンライトの三角形自体が、そもそも、面白くもなんともないのです。

 鏡の使い方も、ちっとも面白くありません。たまに「あ、このシーン、実は鏡を撮っているんだー」と驚かされることはありますが、「で、だから?」と言いたくなってしまうところも事実です。実相寺昭雄の「鏡地獄」とか、世の中には鏡を利用して、なんとも面白い映像を取った作品なんてウジャウジャありますから。

 いやー、ホント、ニコラス・ウィンディング・レフン……どうしちゃったんでしょうね。

*1:追記:レフンが東京流れ者のオマージュをするのは、いつものことですけどね。それでも、今回は"濃いめ"にオマージュされている感じがするのです……というのを、書き忘れていました。

*2:もちろん、あくまで自分の憶測ですが…

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