儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:アトミック・ブロンド


映画『アトミック・ブロンド』特別予告 "Sweet Dreams"

 恒例の手短な感想から

やっぱ微妙だったわー。さ、撤収!

 といったところでしょうか。

 

 ……まあ、正直、それなりに目の肥えた映画ファンならば、だいたいの人が「あー、やっぱりなー」と思うのではないでしょうか。この映画、予告編の段階で香ばしさが半端ではなかったですから。

 宣伝が上手く頑張って、格好良い予告編にしていたのですが、ソレと同時に「ここまで格好いい予告編にしているのに、隠しきれていない、この『アレ』な感じはなんなんだ?」と感じていた人も多いことでしょう。

 実際、自分はそうでした。

 

 そして、予告編だけでも十分に不安要素があったというのに、その上、続いて出てくる映画スタッフの情報が……監督、デヴィッド・リーチ

 思わず「誰だよ、お前」と言いそうになってしまいますが、この人は、一応、ジョン・ウィックの共同監督です。しかし、ジョンウィックの監督だと知ってしまったからこそ、なおのこと不安になってしまうわけです。

 

 ジョン・ウィック自体は確かに素晴らしい映画なのですが、同時に、あの映画が素晴らしいのは、製作総指揮のキアヌ・リーブスが自分の趣味を見境なく、とにかく、ぶっこんでいるからです。

 正直、ジョン・ウィックは監督の手腕で面白くなったとは言い難い内容でしょう。

 そして、本作の製作総指揮にキアヌ・リーブスはいません。言ってしまえば、本作はキアヌ・リーブスのマニアックな趣味がない、「ジョン・ウィック」なわけです。……面白くなるとは正直思い難いのです。*1

 

 実際、面白くなかったわけですが。

 まず、本作、ものすごい決定的な欠点を言ってしまうと、監督の手腕自体に明らかな問題があります。いえ「監督が能力不足だ」と言うつもりはありません。本作の問題が技量不足とか、そういうものではないからです。

 むしろ、本作の問題は、監督がなにか巨大な勘違いをしている部分にあるといっても過言ではないでしょう。

 どうも、変に「ジョン・ウィック」なんてヘンテコ映画に関わってしまったせいで、デヴィッド・リーチ監督は「ヘンテコな編集、分かりづらい構成が素晴らしい芸術として認められるのだ」と思いこんでしまったようなのです。

 実際、この映画は編集や話の構成が中途半端にヘンテコです。辛うじて、なにが起こっているのかは分かるのですが、それと同時に、妙に回りくどいシーンが入っていたり、妙なカットが突然割り込んだりして、なんとも見づらいのです。

 例えば、これがアレハンドロ・ホドロフスキーや、鈴木清順などのように「やることなすこと、全てが意味が分からず、けれども、芸術的な完成度が凄い」というレベルに昇華できていれば良いのですが、そこまでのレベルには到底達していない程度で見づらいのです。

 ようは、単に下手くそな編集にしか見えなくなってしまっているのです。

 

 しかも、そういう構成にしているわりに、そもそも肝心のこの映画の筋書き自体がかなり陳腐です。

 ハッキリ言いますが、おそらく、観客のだいたいがこの映画の冒頭10分くらいで「あー、シャーリーズ・セロンの正体って多分、アレだよね?」「なんか、無理やり居合わせている、この人くさいなー」と目星を付けられるのではないでしょうか。

 そして、実際この映画はそういうオチで終わります。

 おそらく、作り手的には「大どんでん返し」のつもりで作っているものと思われますが、最初からバレバレなので、この筋書きは見ていてちっとも面白くないのです。

 

 アクションも……まず、シャーリーズ・セロンは腹に力を入れて「ヤーッ」と叫ぶことを覚えるべきです。あんな気の抜けた発声で闘われても説得力がまったくありません。妙にリアル寄りなアクションシーンとして作るのならば、なおのこと、ここは抜かせないでしょう。

 

 最後に、自分は本作をフェミニズム的な映画として持ち上げるのは、ものすごく違和感があるということは、ハッキリ言っておきます。なぜって、ガーターベルトを着こなした、ブロンドの女スパイが女性同士で絡んだり、闘ったり、騙したり、騙されたり……これ、全部、男の願望そのものですから!*2

 むしろ、この映画ほど男性の欲望に忠実な映画はない、と言えるのではないでしょうか。

*1:そもそも、共同監督でしかもクレジットなしという時点で……

*2:そもそも、ブロンドヘアーって時点で……ですし。

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