儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:ムタフカズ-MUTAFUKAZ-

 


映画『ムタフカズ』30秒予告

 恒例の手短な感想から

 散漫な出来

 といったところでしょうか。

 

 まず、初めに確実に誤解がないよう、言っておきたいのですが、草彅剛は本作の主人公の声優としては、あまりにもハマり役だったと思います。あの、ちょっとナヨっとした感じで、面倒くさがりそうな声は、まったく違和感がないレベルで、本作のキャラクターとマッチしていました。

 また、本作が魅力のない映画だとも思いません。むしろ、魅力はよく溢れています。特にこの映画の前半は、本当に画面にのめり込んで見そうになってしまうほど面白いです。

 

 どこからどう見ても、GTA5に相当強く影響を受けているように見える、ギャングスタ的なビジュアルや各種登場人物の設定、そして、銃とバイオレンスに満ちた舞台、その中で出自不明な主人公が、とある出来事から徐々に巨大ななにかに巻き込まれていくストーリーライン――どこか既視感がありながらも、しかし、見たことがない作品に仕上がっており、かなり好感を覚えていました。

 その好感も後半に入って全て消滅してしまいましたが。

 この映画は後半、ストーリーラインが無茶苦茶なことになります。おそらく作り手は露悪的にやっているのだと思われますが、これがハッキリ言ってちっとも面白くないのです。別に、そういう雰囲気や設定の作品ですし、無茶苦茶な筋書きになっても良いとは思うのです。

 しかし、この映画の場合は、それが作り手のマスターベーションで終わってしまっているのが、残念なのです。

 

 本作の、一番の問題は「何がしたいのかは、分かるが、それにしては関係ない話をしすぎだ」という、ここにあると思います。

 本作が、何をしたいのかは非常に分かりやすいのです。簡単に言ってしまって、主人公と、ある女の子の間に生まれる愛の話をしたいことは、物語全体を見ても明白なことです。

 それ自体は別に良いのです。この映画はいかにもギャングっぽく、バイオレンスな話です。そこで、純真な話をテーマにするというのは、もはや、この手の作品の常套手段でもあります。

 

 ただ、本作の場合は、この愛の話がちっとも頭に入ってこないのです。もっと彼女が主人公をどこかで労ろうとする場面や、あるいは、主人公がもっと彼女に好意を伝えようとする場面があれば、頭に入ってきたのだと思います。

 が、実際の作品では、それらの場面の代わりに「地球温暖化がどうだ」というつまらない陰謀論や、結局、話とあまり関係がなかったプロレスラーたちや、くだらない脇役同士の物語的に極めてどうでもいい銃撃戦などが入っており、とてつもなく散漫な出来になってしまっています。

 

 そんな状態の作品で、クライマックスに、取ってつけたようにキスシーンだけ入れられて、それで納得しろと言われても……そんなの小学生くらいしか納得しないでしょう。

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