儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説


『映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』本予告第1弾

 

 恒例の手短な感想から

ふざけているようで、ちゃんとしてる!

 といったところでしょうか。



 本作に対してこのような感想を書くことはかなり意外かもしれませんが、自分が鑑賞したかぎり、この「この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説」は、かなりちゃんとした面白い映画でした。

 

 もともとTVシリーズの時点で、昔の90年代前後にあったファンタジーアニメやライトノベルの薫陶を受けたことが分かる内容で、とても好感を持っていたのですが、その好感を決して裏切らない内容になっていると言えます。

 90年代のファンタジーアニメの薫陶とは、ズバリ言って「既存の真面目なファンタジーに対する、強烈な皮肉であり、パロディ」という面です。簡単に言ってしまえば「おふざけファンタジーです。

 

 この素晴らしい世界に祝福を!――通称「このすば」は、90年代のファンタジーアニメにあった「おふざけファンタジー」という要素を、見事に2010年代のいわゆる「異世界転生ものなろう小説」の形式に違和感なく混ぜることが出来ており、そこが何よりも優れています。

 フォーチュン・クエストなどのライトノベルと、本作の比較をしてみれば「このすば」が、いかに上手くそれらの要素を「なろう小説」に巧妙に溶け込ませたか、よく分かることでしょう。

 

 そして、本作、劇場版「このすば」も、おふざけファンタジーの点がとても素晴らしいクオリティで出来上がっております。

 凶悪なはずの魔王軍が逆にボコボコにされているという観客の予想を裏切る展開や、金勘定と己の欲に目ざとく異様に俗っぽいファンタジー世界住民の姿など、従来のシリーズ以上に本作はおふざけの面が強くなっており、単純に見ていて楽しいのです。

 

 最初の展開こそ「おいおい、そのテンションで映画をやられても困るぞ」と言いたくなる瞬間もあるのですが、そんなものはあっという間になくなり、あれよあれよと話が次々に転がって、主人公であるカズマはいろんな酷い目にあったり、逆に酷いことをしようとしたりと、飽きない展開が続くようになっています。

 本当におふざけファンタジーとして、よく出来ているのです。

 

 そして、おふざけファンタジーだからと言って決して魔法などの描写に手を抜かないのも好感が持てます。TVシリーズでも、この点に感心していましたが、劇場版はそれ以上に手を抜いていません。

 

 なにせ「なるほど、この迫力ならば劇場版として映画にするのも当然だな」と思わせるだけの、迫力ある豪勢な画づくりでバンバンと魔法が飛んでいくのですから。



 実は劇場版にあたって、本作、製作するアニメ会社が変更したりしているのですが、まったく違和感がないほどによく出来た仕上がりです。むしろ「え、そこまでやります?」と言いたくなるほどに、作画などで過去シリーズのオマージュを入れているくらいです。

 

 その上、前述したように「わざわざ長い尺で、デカイ音響を用い、巨大スクリーンを使う映画にするだけの」内容にブラッシュアップすることも出来ているのです。

 正直、エンタメ映画としては、十二分に満足な内容と言って間違いありません。

 

 しかも、本作はそれだけに飽き足らず、「ちゃんと一本の物語として」まとめる工夫も行っています。

 わざわざ原作から話の流れを変えてまで、映画の冒頭に「めぐみんの爆裂魔法でカズマが困っている」シーンを出し、最後に対比として「めぐみんがカズマに『爆裂魔法だけじゃ困るでしょ?』と尋ねさせ、カズマが『爆裂魔法だけで行けよ』と言う」シーンを入れることで、一つの物語として綺麗にテーマをおさめたことは、本当に英断だと言えます。

 

 おかげで映画として、かなり綺麗でしっかりとした作品になったと言えます。おふざけファンタジーにも関わらず、この作品は「しっかり」しているのです。

 

 このシリーズを知らない人でも、初見で楽しいと思える映画にすらなっているのではないでしょうか。

 いろんな人にオススメできる、素晴らしい映画です。

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