儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPER SPACE ―亜空の深淵―


映画『モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPERSPACE -亜空の深淵-』予 ...

ネタバレはしてないつもりです 追記をしたので、そこだけちょっとネタバレあり

 

 

佐藤竜雄監督のファンであると、はっきりこのブログでも書いている僕なので、当然のごとく、見に行ってきました。『モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPER SPACE ―亜空の深淵―』

まず、手短な感想を言ってしまうと、

やっぱり期待通りに面白かったのでホッとしている

という感じでしょうか。

 

長年、佐藤竜雄ファンをやっているので、佐藤竜雄監督ならまあ面白い作品にしあげてくれるに違いないとは思っていました。ですが、それでもやっぱり、実際に見てみるまでは「自分は期待しすぎているんじゃないのか」とか、思ってしまうのも当然です。

そんなファンの期待を裏切らない内容になっていることは間違いないです。間違いなく、これはモーレツ宇宙海賊ですし、佐藤竜雄監督の作品になっています。

今回の劇場版は、佐藤竜雄監督の作品の中でも「かなりはっきりとエンターテイメントとして作られているもの」になると思います。佐藤竜雄フィルモグラフィーの中でも、”エンターテイメント性を重視した佐藤竜雄作品の最右翼”と言っていい出来だと思います。『劇場版機動戦艦ナデシコ』や、『ねこぢる草』のようなものではないでしょう。どちらかというと、テイストとしては『リカちゃんとヤマネコ星の旅』に近いものです。実際、本作品劇中にある、年下の少年が、年上のお姉さんの横顔を見てドキマギする描写などは『リカちゃんとヤマネコ星の旅』でも描かれていました。

これはやはり、監督も各所で明言している通りに『宝島』が元ネタにあるというのが大きいところでしょう。つくる段階の時点で、これはエンターテイメントに徹すると決めていたのでしょう。そして、その結果、確かに佐藤竜雄作品の中でも群を抜くほど分かりやすい、ともすれば古風な、エンターテイメントに仕上がっています。おそらく、老若男女誰が見ても面白いと思える内容だと思います。

とはいえ、エンターテイメントに徹したといっても、やっぱり染みだしてしまう佐藤竜雄監督の作家性というものもあります。「あー、ここ佐藤竜雄監督らしいアレだよね」というシーンや描写や表現もいっぱいあったりするので、佐藤竜雄テイストが損なわれているというわけではありません。いつもどおり――というよりいつも以上に――セルフオマージュが連発されています。どのくらい、オマージュしているかというと、絵コンテで参加した『妄想代理人』のマロミっぽいアイマスクまで出てきたりします。そして、無限彼方が見る夢のあの描写。無限彼方という名前が発表された時点で、一部の佐藤竜雄ファンが色めき立ったことと思いますが、あの夢の描写は、それ以上に色めき立つでしょう。どう見てもアレですから。この描写。

また、監督の大好きなプロレスもキッチリ入っていました。*1

正直な話、佐藤竜雄監督やモーレツ宇宙海賊云々の看板を外したとしても、この作品はかなりいい出来の映画になるのではないかと思います。脚本も、非常に巧みに伏線を張りつつ*2、観ている側の予想をナナメに裏切る形で持って行ったりするところや、「親」という要素の丁寧な扱い方、電子戦・艦隊戦・冒険の要素が次々に展開していく話の繋ぎ方など、なによりもまず映画としてちゃんとしていると思いますし、かなり完成度が高いです。僕はこの映画の始まり方が特に好きです。非常に上手く省略しながら、最小限でいろんな状況を数十秒で観ている側に受け取らせる描写の上手さは、佐藤竜雄という看板を抜きにしても、純粋に褒められるものだと思います。もちろん、その後も遜色なく出来がいいと思いますが、なによりもこの導入部がよく出来ています。

 

映画として考えると画面のルックが、序盤、ちょっと窮屈かなと思うところもあります。人物のアップが多すぎるように感じられますし、映画にしては画面の使い方が広くない印象があります。*3ただ、そういう観ている側が気になるところに「宇宙船は窮屈に作られている」といった具合に上手いフォローをさり気なく出したりしてもいるので、よほどこういうのが気になる人でないかぎり、気にすることはないかもしれません。

全体としては、90分ちょっとの時間が、本当にとても短く感じるほどのハイテンションな作品です。間違いなく、「モーレツ宇宙海賊って萌えアニメ?」「佐藤竜雄監督って誰?」という程度の知識の人が見ても全然楽しめる内容でしょう。

いやー、やっぱり面白かった。

*1:正直、僕はあの人とあの人がプロレス始めたところで笑ってしまいましたが。「あー、やってるなー」という感覚です

*2:気づかない人が多そうなので、ちょっと追記します。ラストシーン、彼方がヨット部の”アレ”で亜空の深淵から帰ってくることに成功しますが、あれの伏線、実はちゃんと劇中で立てられています。弁天丸が亜空間を飛んでいる最中に、彼方が”アレ”は”亜空間ダイバーにとっての命綱だ”と彼方が言及していました。だから、”アレ”を目印にして、彼方を回収できたというオチなんです

*3:自分が結構、画面近くの座席だったせいもあるかもしれませんが

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