映画感想:LEGO(R)ムービー
※ネタバレはないです
さて、お馴染み、簡単な感想から
ものすごく面白かった。これはすごい。
といったところです。
くもりときどきミートボールのフィル・ロード/クリストファー・ミラー監督作品ということもあって、僕は視聴前から、かなり期待をしていたのですが、その期待をまったく裏切らない内容と言えそうです。
まず、なによりもこの映画で目につくのは「数々のパロディネタ」です。オープニングシークエンス直後に出てくる「8 1/2」という数字で、だいたい、この映画の方向性というものが分かりますが、子どもどころか、大人でさえ、映画ファンでもないかぎり分からないネタのオンパレードです。そして、パロディの量も半端じゃ無いほど多いでしょう。レゴのブロックシリーズでは、ティーンエイジミュータントタートルズや、スーパーマン、バットマン、ロード・オブ・ザ・リング、シャキール・オニールなど、様々なキャラクターがレゴ化され、商品化されてきましたが、それらが一遍に大量に出てくるのがこの映画なのです。
しかも、映画中で繰り広げられるジョークが半端じゃ無いほど面白いです。さすが、フィル・ロード/クリストファー・ミラー監督といった感じでしょう。くもりときどきミートボールでも、かなりブラックなジョークが、画面のそこかしこに見て取れましたが、今回はそれに輪をかけてすごい状態です。ブラックジョークの巣窟みたいな映画になっています。そういったところでも、子ども向きかどうか迷われるところの多い映画なのですが。
また、主人公も、子どもの共感を呼ぶのかは難しいところです。なにせ、主人公は、何の取り柄もない、誰の意見にでもすぐ賛成してしまう、個性というところが一欠片も存在しない、ビルの建設作業員である、エメットですから。子ども向け映画で、主人公が建設作業員というのは、なかなか聞かない話ではあります。
しかし、この何もない、平凡なエメットというキャラクターが非常に良く出来ています。何もないからこそ、常に、なにかをしたいという願望を持っていて、でも、何もないから何をしたらいいのかわからない、そんな人はきっとこの日本中、世界中、どこにでもいることだと思います。
そんな彼が、平凡なまま、平凡さを活かして活躍する姿は、僕らのような一般人にとってとてつもない感動を与えることでしょう。
さて、ここまでこの感想文を読んだ人は、この映画のことをどう思ったでしょうか。きっと「この映画は子ども向けと称しつつ、実は大人の共感を呼べるようにできている、変わった映画なのだなぁ」という印象を抱いたことだと思います。
確かに、それはそうなのです。
この映画は子どもよりも、むしろ、大人が楽しめるように作られています。しかし、同時に、それでもやっぱりこの映画は「このレゴ・ムービーという映画がが子どものものである」とはっきり示してもいるのです。あえて、ここまで子ども向けではないかのように、感想を書いてきましたが、この映画はそれでもやっぱり「子どものもの」なのです。
この映画に一体どんな展開が待ち受けているのかは、ここでは明記しませんが、この映画の作り手たちは、はっきりと「この映画は、この映画を喜んで見ている大人のものではない」と言い切っています。「この映画にある”大人向け”の要素を自分の中で”子どもなりに解釈して”楽しんでいる、そんな子どものために、この映画はあるのだ」と言っています。
この映画を見に行って楽しんでいる大人――まさに、僕のことですが――は、本当ならば子どもが楽しんでいるところを見て、喜ぶべきなのかもしれません。
そんな自戒まで用意されている、とても周到な映画が、レゴ・ムービーでした。