映画感想:Blue Eyes - in HARBOR TALE -
Blue Eyes - in HARBOR TALE - 予告編 - YouTube
手短な感想から。
たった30分がたった30分に思えない傑作だ!
そんなところでしょうか。これだけの短いフィルムでここまで、強い感慨を抱いたのは佐藤竜雄監督の「ねこぢる草」以来かもしれません。ただ、ねこぢる草は、30分のフィルムで、おこづかいの道中から、とてつもなく長い旅をして、天変地異、果ては地球滅亡まで行ってしまう内容でしたが、この映画はまったく逆です。全編通して、横浜の港、それも赤レンガ倉庫周辺のみなとみらいのみで話が展開するようになっています。
映画としてはいくつかの、短編映画と掌編映画がくっついているオムニバス映画となっています。表題作である「Blue eyes in HORBOR TALE」とそれよりも前の話である「HORBOR TALE」あとはいくつかの、本当に短い掌編が入っています。
どの作品にしても共通して言えるのは、非常に映像が綺麗だということです。輝く青い海の感じや、夜になった、横浜みなとみらいの景色など、現実以上にとても美しく描かれており、これだけでも相当に心を奪われることは間違いないでしょう。
そして、全体的に音楽のクオリティがかなり高いです。特に一番最初の短編「HORBOR TALE」の音楽が、完璧というレベルでものすごいことになっています。*1そして、全体的に物語に描かれる、イマジネーションの凄さも言及しない訳にはいかないでしょう。なんというか、ここまで少年時代のイマジネーションを保ったまま、それを表現できる人もいるんだなと感心してしまいました。本当に、とても自由に、そして、とても面白いイマジネーションが次から次へと登場していきます。この作品の監督は、一時期NHKでやっていたクレイアニメ「ニャッキ」の監督でもある、伊藤有壱さんだそうで、なるほど、納得です。
内容としては、ストップモーションアニメであり、キャラクターも非常にかわいらしいものが多いので、全体的には子供向けの映画であるといえるかもしれません。事実として、映画を見ていた子供たちは結構、本作の内容を楽しんで見ていましたし、話のあらすじを考えても、積極的に大人を対象にしたわけではないのも事実です。ただ、大人が見てもかなり面白い内容であることは間違いないです。
まず、この映画は子供向けにありながら、普通の人がイメージする子供向けの映画やアニメとは違い、かなり教訓じみていません。なにが正しいとか、なにが素晴らしいとか、そういうことは何一つ提示していません。早い話が、説教臭くないのです。
テーマがない、というわけではありません。例えば、二つの短編を通して「旅立つ」ということがなんとなくテーマにあったな、とか。「自立」ということテーマにしているのだろうか、とか。むしろ、「死」をテーマにしているようにも取れる気がする、などなど。全体的になんとなくテーマがあることは分かると思います。
この説教臭くないところがこの映画のかなりの良い点です。
その結果、「HORBOR TALE」も「Blue eyes in HORBOR TALE」も、非常に話としては不思議な終わり方をするようになっています。この不思議な終わり方が、なんとも表現できないけれど良いのです。
この不思議な終わり方によって、この作品を見ると、この作品でしか体験できない唯一無二の感情を覚えるのです。
まさに傑作だといえるでしょう。