儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:インターステラー


映画『インターステラー』最新予告編 - YouTube

 恒例の手短な感想から

見やがれ!これが正しいワームホールだ!

といったところでしょうか。

 

 さすが理論物理学者のキップ・ソーンが協力しているとだけあって、とにかく、ワームホールブラックホールなどの描写がよく出来ています。おそらく、現時点の科学技術で考えられるかぎり「正しい/あるいは正しいところに限りなく近い」表現がなされています。僕はもう、これが大スクリーンで見られただけで大満足です。もうストーリーとかどうでもいいです。限りなく、ホンモノっぽいワームホールを、大きなスクリーンで、もう手で触れるんじゃないかというほど間近まで接近して、中に飛び込んで、擬似だけれども体感することが出来た――これだけで、僕はもう結構です。この描写を見るだけで、ご飯が何杯も食べられることでしょう。

 僕はSFに、こういうものを求めているんです。もちろん、難しいストーリーや複雑な構成などもそれはそれで大好物ですが、それよりもなによりも、僕はSFの作品に”面白い現象”が見たいのです。人が人の頭だけで想像できるものを遥かに超えた、理論的に突き詰めていった出来上がるトンデモナイ現象、考えもつかないような現象、それが見たくて見たくて仕方ないのです。そして、この映画は、そういう欲求を完璧に満たしてくれる映画だといえるでしょう。正直、現象さえ見られればそれで大満足なんです。話なんか存在しなくてもいいのです、例えば、POWERS OF TEN*1のように…。

 ――まあ、これは僕個人の、ものすごい狂った思想なので置いておくとしても、確かに映画として出来が良いものであるのは事実でしょう。話も非常によく出来ています。テーマとして「人間の愛がつくりあげるコミュニケーション」というものが、入っていますが、これの処理も上手い。ありがちなダメ映画のように「愛で何でも解決できます!」という処理は決して行っていません。あくまで話がちゃんとロジカルに収まるようになっています。しかし、それでいて、「信頼」によって繋がった物語であることをキチンと表現していました。あの場面、この場面、色んな場面で、この映画は「信頼」が試される内容となっており、そして、繋がった「信頼」が物語を解決する構成になっているのです。

 

 ここらへんは非常に上手いです。ただ、映画に欠陥がないかというと、それが違ったりするのが困るところなのですが。

 これは監督であるクリストファー・ノーランの過去作にも言えることなのですが、どうも経済的な認識がノーランは怪しいところがあります。サプライサイド経済学を本気で信じちゃってるようなフシがあるといいますか…とにかく、いろいろと経済的な言及には違和感が大きいです。

 なにより、最後、人類が住んでいるアレが、この映画、最大の欠点かもしれません。あの状態と経済状況の人類がどうやってあんなものを作れるというのでしょう。ただ、物語としてアレを登場させたのは非常に正しいとも思います。物語に希望を持たせたかった、という意味では、”物語に必要なご都合主義”だったのでしょう。

 映画上でも、「穏やかな夜に身を任せるな」なんて詩がありますし、そういうことなのでしょう。穏やかな夜とはつまり、簡単に言ってしまえば、死ということです。死はこの世のなによりも穏やかな夜です。死ぬ運命に身を任せるな、とにかく抗い続けていくべきだ、とそういう意味の詩です。だからこそ、無理やりにでも、最後に人類を救済するオチに持って行きたかったのだと思います。

 個人的には、多少、怪しいところがあっても、そんな希望を見せようとしてくれただけで、十分です。

*1:POWERS OF TENとは科学映画でして、こんな内容になっています。


Powers of Ten™ (1977) - YouTube

見れば分かりますが、ストーリーがありません。でも、映像的に非常にグッとくるものがあります。ただ、ものすごい拡大とものすごい縮小をしているだけの映像なのですが。現象を見せる映画とは、ちょっと違うかもしれませんが、僕はこういうのが好きなのです。

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