儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画レビュー:ルネッサンス


2007年7月公開映画「ルネッサンス」特報 - YouTube

 

 アヴァロン社が蔓延っている未来のパリにて。少年時代に辛いトラウマ経験を持っている、主人公、カラスは、現在、特殊部隊で警部をしている。彼は上司の命令も逆らって、人質を救出してしまうような、ちょっと反体制的で、なおかつ腕利きの警部だ。そんな彼のもとに、イローナ・タジエフというアヴァロン社に務める優秀な研究者が誘拐されたという報が届く。イローナを救出するよう上司から命令されたカラスは、イローナの周辺について、アヴァロン社の周辺について、捜査を進めていく。

 

 ほとんど、白と黒で描かれただけの画面というのが、非常に特徴的なアニメ映画となっています。それも、ただモノクロというだけでなく、画面のライティングが非常に昔のノワール映画を連想させるようなライティングとなっております。しかも、ノワール以上に画面はほとんど真っ黒。実写のノワール映画のように、黒に濃淡がなく、アニメ映画として黒い部分はベタ塗りのように均一な黒――真っ黒で塗りつぶされているので、言ってしまえば、この映画はノワール以上に、正しい言葉の意味でのノワール映画とも言えるかもしれません。

 

 設定自体は、至ってシンプルな、よく見たことがあるSFの設定が使われています。ハードボイルドとSFのガジェットが混ざった近未来都市のパリの様相は、ブレードランナーや、エンキ・ビラルのバンド・デシネなど、様々なSF作品を連想することだと思います。

 

 ただし、この映画はその一連の作品群からすると、よりハードボイルド色が強いものとなっています。ネタバレになるので言及は避けますが、オチの終わらせ方や、オチに至るまでの展開や場所などは、完全にノワール映画そのものといった趣になっています。そういった意味でも、正当な、ノワール映画の発展形とも言える映画でしょう。

 

 また、この最初はただ観づらいだけにも感じてしまう、強烈な白と黒の画面ですが、映画本編では、後半に差し掛かっていくにつれ、このモノトーンな画面を効果的に使うシーンが多数存在しており、その部分は、映像表現としても非常に面白いです。

 早い話が、決して、ただ変わったことがしたくて、このモノクロ画面にしているというわけでもないのです。ちゃんとこの画面には狙いが存在しています。

 この狙いに気付けたとき、この映画はとても面白い映画に感じることでしょう。

 

 映画の筋書き自体は、ちょっと中途半端というか、ご都合なところもあったりしますし、テーマの追い方もちょっと浅いような気がするところもありますが、ただし、この手の作品においては、テーマや話よりも、画面の素晴らしさに注力していることが多く、そのせいで、追い方が浅くなってしまうのは仕方ないところでもあります。基本的に、こういったSFかつハードボイルドという映画が好きな人は、好意的に鑑賞できると思います。

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