儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画レビュー:ジャンボ・墜落 / ザ・サバイバー

 

ジャンボ・墜落 ザ・サバイバー [DVD]

※今回も、予告動画は発見できませんでした。

 真夜中、ジャンボ機・747旅客機が町の広場に不時着してしまう。原因はまるで不明。しかも、忽然と町中に堕ちたジャンボ機は直後に、爆発・炎上し、事故現場は悲惨なことに。懸命な消火作業が行われ、生存者の救出を試みるが、状況から考えて、乗客350名及び、乗員14名の命はほぼ絶望的と思われた。

 しかし、そんな事故現場の中で、一人だけ生存者が存在していた。事故現場から歩いて出てきた彼は、ケラー。747旅客機の機長だった。

 ケラーは、事故当時の記憶を全てなくしていた……。

 

 

 一見すると、航空パニックものであるように思える邦題だと思います。

「ジャンボ・墜落 / ザ・サバイバー」ですから。

 ジャンボ機が墜落しそうになるという、パニック映画なのではないかと思った方も多いのではないでしょうが。が、しかし、この映画は、まったくパニック映画とは違う映画であると断言しておきます。

 というよりも、パニック映画を見たい方には、この映画はまったくオススメしません。なぜなら、間違いなくパニック映画好きなあなたが期待していた内容からすると、正反対にかけ離れた映画であることは間違いないからです。むしろ、この映画をオススメしたいのは、例えば、「永遠の子どもたち」や、「リング」や「エクソシスト」などが好きな人です。それくらい、映画自体のテイストは、オカルト・ホラーの趣が強いものになっています。

 撮影も独特で、映すべきメインの登場人物と、カメラの間に遮蔽物があったり、あるいは俳優がなにを演じているのかギリギリなんとか分かる程度の真っ暗な場所を舞台に選んだりと、全体的にカメラに何が映っているのかよく分からないシーンが多かったりします。

 何が映っているのかよく分からないからこそ、この映画に、非常にモヤモヤとした、なんだか気持ちの悪い感触を覚える人もいるのではないでしょうか。

 

 実は、この映画はそこが素晴らしいのです

 この映画は、全体に渡ってモヤモヤとする感触を大切にしている映画です。おそらく大抵の人は、この映画を見終わった後で、モヤモヤとした気持ちを抱えてしまうのではないでしょうか。風の唸りとも人のうめき声とも取れるような、非常に曖昧な効果音や、幾つもの「ちょっと解釈に戸惑うようなシーン」の数々が、明白にそれを示しています。また、ラストの終わらせ方も然りです。

 とにかく、モヤモヤする映画なのです。全ての話が解決してるはずなのに、なぜか、なにかを見落としてしまっているような気分になるのです。しかし、だからこそ、異様なほどの人の印象に残る映画にもなっています。見終わった後で「なんだか分からないけれども、なんだか凄いものを見た」という気がしてしまうのです。

 

 ホラー映画やホラー小説には、「あえて、モヤモヤするようにラストを作ることで、なんだか分からない不安感を受け手に覚えさせる」という手法が存在しています。明確な作法として存在しているかどうかまでは分かりませんが、名作と呼ばれるホラー映画、ホラー小説の大体は、オチまで見終わっても/読み終わっても「なんだか、しっくりしない」ことの方が多かったりします。

 この映画もまた、その手法を使った映画なのです。

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