儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:チャッピー


映画『チャッピー』予告編 - YouTube

 

恒例の手短な感想から

基本的には傑作!なのだけど…玉にキズが…

といったところでしょうか。

 

 まず、映画の前半が特に素晴らしかったということは最初に記しておきます。何が素晴らしかったのか? チャッピーがギャングとして強盗をしていく姿がカッコ良かったから? あるいはAIロボットがニンジャっぽく手裏剣を投げる姿が素晴らしいから? あるいは暴力的な行為が気持ち良いほど見事にキマっているから?

 いえ、どれも違います。本当に素晴らしいのは、この映画前半のチャッピーは、スラム等の場所に生まれた子どもを暗に示しているところが素晴らしいのです。絵なんて役に立たないものは描くんじゃないと言われ、銃を持たされ、それがカッコイイんだとひたすら教えこまれ、根性のない子どもは、根性だめしにいろんな虐待を受け、一人の強盗犯に成長していく。

 後進国のスラム街に生まれるということが、どういうことであるのか。日本の、一部の、脳天気な映画ファンたちが「カッコイイ」などと無神経に言っている"彼ら"がどういう幼少期を過ごして、ギャングとなっているかが、チャッピーという存在を通して的確に観客に伝わるところがなによりも素晴らしいのです。これが彼らの幼少期に経験する、紛れも無い現実です。第9地区もそうでしたが、ニール・ブロムカンプはスラム街の様相を、SFをメタファーにしながら的確に描いていくのが実に上手いです。

 

 ただ、それは前半のみの話です。第9地区でも同じだったように、この作品もまた後半になると作品の色を変え、非常に分かりやすいエンターテイメントになっていきます。ここが賛否両論点になりそうな気もしますが、僕自身はそこまで大きな違和感は感じませんでした。こういう展開になること自体は別にいいのです。いいのですが…。

 むしろ、僕は「後半に映画のタッチが変わってしまうこと」よりも「終盤の演出」が非常に気になりました。ハッキリ言って、スローモーション+ハンス・ジマーのどーんが多すぎです。しつこいくらいに多すぎです。ジャンプの某海賊漫画かよ!と内心でツッコミを入れたほどです。

 もちろん、こういった演出でギャングスタ的な映画にしたいという意図は分かります。確かにそういう意味で、スローモーションでベタベタなくらいに見せ場をつくって、どーんという場面を多少出すのは、悪くないのです。ただ、いくらなんでもやり過ぎです。そして、ハンス・ジマーの音楽が、異様なほど悲壮感を煽るので…煽りすぎているので、かなり見ていて印象がおバカ映画っぽいです。

 また、正直、この映画のラストも…。一見すると良いオチのように見えますが、しかし、誰もがちょっと思考して「え、それって本当にいいことなのか? というか、それで本当に問題が解決してるの…?」と疑問を抱いてしまうオチだと思います。ニール・ブロムカンプ監督が意図的に、そういうオチにしているのならばいいのですが…。

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