儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

2017年上半期映画ランキング

今年も気がつけば上半期を過ぎました。

自分としては短いような長いような、不思議な半年でした。

前置きはさておいて、いつものごとく、今年もまだ上半期ですがたくさんの映画を見ることが出来ました。そんなわけで、今年、映画館で見た映画のランキングを書いていきたいと思います。

 

12位 モアナと伝説の海

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  今年の映画は「選べば粒ぞろい」な状況でした。そのため、なかなか自分としてはランキングに入れたい映画が多く、12位からのスタートになっています。

 で、本作ですが、良い映画だとは思うのですが、それと同時にあまりにも思い入れがないんですよね。あと、個人的にただオマージュがワンシーンあっただけで「海のマッドマックス」とかネット上で騒いでた人たちが、ウザすぎて……。*1

 それは別としても、感想記事では書きませんでしたが、エンドロール後のリトルマーメイドを自虐したギャグなども「で、出たー。自虐ギャグを言えば賢いとか勘違い奴ー」とか言いたくなりましたし、「最後に結局、鉤爪貰えちゃうんかーい!」とも思いましたし、良い映画だと思うけど、そこまで思い入れがないのです。

 

11位 22年目の告白 -私が殺人犯です-

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  良い映画だと思うけど、思い入れがない映画その二です。なんでしょうね。この映画に関しては「面白かったけど、まだダークナイトなのかよ!」というそこに尽きると思います。

 自分が大人になってみて気づいたのですが、正直、ある程度大人になってから、ダークナイトみたいなテーマで興奮できる人ってちょっと引きますね。なんというか、だいぶ周りのことを見下している幼稚な人間観を持ってないと、あのテーマって共感が難しいでしょう。え、その歳にもなって中二病ですか、と。

 この映画も同じなわけです。

 

10位 美しい星

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  10位からは、思い入れがある映画たちになっていきます。この美しい星も、個人的には非常に思い入れがある一作だと言えます。正直、吉田大八監督にはそこまで期待していなかったのですが、今回は非常に頑張ったなと。

 感想記事でも書いていますが、今敏監督のアニメ映画を思い出すような、日常の風景にあまりにも異質なものが混ざり合っている、この不思議な感覚を出した実写映画というものは、実はありそうでなかなか無いのです。大抵は、そういう異質さを恐怖の方向性で演出してしまいがちですし……。

 しかし、本作は見ても分かる通り、コメディなわけです。特にリリー・フランキーの怪演は最高でしたねー。ここまで情けなくて、輝いているリリー・フランキーを見たのは、初めてのような気がします。

 

9位 SING/シング

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  モアナとは対照的に、確かに映画としては粗削りでいろいろとおかしいところだらけであったものの、音楽映画としてはもう優秀すぎて、思い入れが半端ではないのが本作です。本当に素晴らしい音楽映画でした。ジャズの描き方も、実は結構「お、なかなかいいとこを抑えてるじゃねぇか」って描き方してるんですよね。

 色とりどりに音楽を揃えているからこそ、内容として飽きないものになっていますし、一層にテーマが引き立っています。音楽に本当に敬意を払っているのだなと思えるのです。自分の好きなジャンル以外を糞だの何だのと貶して「だから、俺様がすごいんだ」とでも言いたげな人たちでは、到底叶わないものがこの映画にはあるのです。

 本当に、本当に、ララランドを褒めている人たちは、この映画を見て反省してほしいです。ジャズ以外の音楽が低俗なんてことはないのです。

 

8位 帝一の國

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  これも最高でした。一部の映画ファンに賛否両論を起こしていた「ジャッジ!」の監督が、満を持して放った一作でしたが、この映画を見るかぎり賞賛していた側が正しかったことは間違いないでしょう。(ちなみに、自分は賞賛側でした)

 どこまで馬鹿馬鹿しい設定でも、馬鹿馬鹿しい人物造形でも、ここまで突き詰めてちゃんと人物たちの描写を積み重ね、突き詰めて登場人物たちの関係性を浮き彫りにし、突き詰めて画面を作り上げて撮れば、ちゃんと観客の心を掴めるし、観客を沸かせられますし、観客の感動を呼べるのだと証明した貴重な一作です。

 個人的には感動の場面で、わざと登場人物の涙を隠した演出も「やるなぁ」と感心しました。そうですよ。映画は涙を隠すべきです。だらだらと雫を溢すような描写は避けるべきなのです。それだけで感動シーンが、一層に引き立つのです。

 今後の実写化案件において、また一つ、指針とすべき優秀な教科書が追加されました。

 

7位 無限の住人

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  三池崇史監督が、久々の特大ホームランを放った一作です。まあ、なんといってもグロテスク!そして、なんともカッコイイ殺陣の数々。

 もちろん、時代劇をそれなりにさらって来た自分からすれば、まだまだ甘いところもあって「三池は、全力出しても三隅研次には遠く及ばない監督だなー」とか思ったりもするのですが、それはそれ。

 三池独特の残酷描写は、鬱展開上等の変態漫画家・沙村広明と見事な融合を果たして、過去最高の出来となったと言えるでしょう。

 なんとも痛そうな描写の数々!しかも、本作はどこか五社英雄監督を思い起こさせる、唐突な話運びや、とにかく見どころを凝縮して詰め込んだ内容で、個人的には尚の事、それがぐっと来てしまいます。ある種、日本版「ジョンウィック」です。気がつけば、邦画も再びこれくらいの時代劇ならば撮れるまでに復調していたんですねー。

 

6位 ナイスガイズ! 

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  これを公開初日、まだ誰の前評判もない状態で嗅ぎつけて見に行けたことが、今年の自分の中でも誇っていいことかなと思っています。本当にここまで老若男女、誰にでも見せても面白いと言ってもらえるであろうサスペンスコメディが出てくるとは思っていませんでした。

 いや、もう最高でしょう。本作こそがライアン・ゴズリングの真価を引き出した作品と言っても過言ではないです。ライアン・ゴズリングファンも、必見の一作です。しかも、内容はビバリーヒルズコップやらの、往年のハリウッドエンターテイメントを、ちゃんと現代向けにブラッシュアップをさせることも成功しているわけです。

 あの手のサスペンスコメディが、ちゃんと今っぽい映画として生まれ変わって、生き残れる道があったことを示したことも賞賛に値します。

 

5位 わたしは、ダニエル・ブレイク

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 今年の映画の中でも、最も異色の政治映画でしょう。

 しかし、正直、最近のケン・ローチ監督作の中では本気で傑作と言える内容であり、ダニエル・ブレイクという人物を通じて様々な人たちが、ジレンマな状況で苦しむ姿を映した本作は単純に映画としても面白い一作です。

 どこまでもどん底な状況であっても、必死で朗らかに、健気に、ちゃんと普通の人間として日常を謳歌しようとする主人公たちの姿には、様々な人が自分を投影できるはずだと思います。

 そんな人でさえ、決して、救われることがない――いえ、そんな人たちが救われない状況を生んでいる"制度"を変えなければダメなのだ!と訴える本作は、間違いなく、これからの世の中の行方を示していると言えます。

 

4位 夜は短し歩けよ乙女

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  あーなんでこう、亜細亜堂出身のアニメ監督って映画で外れがないんでしょうね。

 亜細亜堂とはドラえもんの監督・芝山努が率いてるアニメ会社なのですが、ここから排出された監督たちは、まあどの人も非常に高クオリティの映画を作ってしまうんです。

 湯浅監督も例に漏れず、今作も、相変わらず最高なわけです。最初から最後まで延々とハイテンションなまま、終わりまで突っ走ってしまうこの素晴らしさ。しかも、上映時間は内容の濃さに反して「あれ、思った以上にみ、短い!?」――映画の濃さは尺に比例しないことがよく分かる好例です。

 しかも、原作のテンションを再現どころか、何倍にも膨らませてこの内容にしてしまったわけですから、本当にとんでもないです。ただ、今年はコレ以上にぶっとんだ湯浅監督作があったのですが……。

 

3位 夜明け告げるルーのうた

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  みんな、この映画を見た後はおそらく、斉藤和義歌うたいのバラッドYOUTUBEで延々と再生したことでしょう。いや、それにしても、とんでもない一作でした。本作の狂いっぷりは世界的にも比類ないレベルに相当すると思います。

 感想記事で書いた「10分に一回、ピンクエレファントパレードがやってくる内容」とは、この映画を最高に言い表していると思います。本気で、そのレベルで狂っています。しかも、本作はアニメーションにFLASHソフトを使っているらしく、FLASH独特の線の動き方と相まって、まあ見ていて変な感触しかしないのです。

 しかし、変な感触しかしないことが、この映画にとっては大事なのです。

 むしろ、まともになったら、絶対に駄目なわけです。一瞬でも、観客の目を覚まさせてはいけないのです。目が覚めたら「僕は一体、なんで喜んでいるんだ?」と自問自答の世界に沈むことは必然です。延々と催眠を掛け続けることが必要なのです。その点においてFLASHソフトのアレな感じは、催眠を手助けしていました。

 おかげで、誰もこの映画を一片も説明できないこと……。というか、あんまり内容を憶えていないのです。楽しかった感触しか残ってないのです。まるで眠りの中で見る夢のような映画と言えるでしょう。

 

2位 ブルーに生まれついて

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 本来ならば去年の映画ランキングにあるべき映画なのですが、自分が見たのが今年なので今年の映画に含んでいます。しかし、それにしても素晴らしい映画でした。JAZZ映画にありがちなジャンキーな要素や、哀愁漂う雰囲気などを備えつつも、ただ今までのJAZZ映画とはひと味違うものに仕上げてきた傑作映画です。

 特にラストの「あぁ……そうなっちゃったかぁ」というオチを、セリフではなく、歌っている曲の歌詞と演者たちの演技で観客に伝えてくるシーンは白眉です。それがチェット・ベイカーというのも、また味わいを深くしています。

 ジャズを少しでも理解したいと思う、あなたに是非おすすめの一作です。

 
1位 キングコング 髑髏島の巨神

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  本気で怪獣映画として、かなりの傑作だと考えています。ちゃんと人に伝わってさえいれば、下手すれば怪獣映画の新しいマスターピース足り得ていたのではないかとさえ思うほどに、大傑作の本作ですが、なぜかイマイチ話題になってくれませんでした。

 しかし、本作は正直に言って、これほど鑑賞したときにお得な気分になれる映画はないと思うのです。モアナ的な要素やら、進撃の巨人やら、もののけ姫やら、スター・ウォーズやら、ジュラシックパークやら、様々な映画の要素が実はこれでもかと隙間なく詰め込まれているのですから。挙句、廃墟の様子などはニーアオートマタやブレスオブザワイルドなど、今年話題になったファンタジーゲームさえも想起させるものでした。

 それほどに素晴らしい要素がたくさん詰め込まれているので、なおかつ、この映画はキングコングなのです。もう最高でしょう。

 誰が見たって問答無用で面白いと感じる一作のはずなのです。

 ポスターもなんともお洒落でかっこいいこと!

 そして、このタイトルですよ。

髑髏島の巨神

 全てに文句がないでしょう。だから、一位です。

 

 というわけで、上半期ベスト・ワンは「キングコング 髑髏島の巨神」でした。正直、下手すると今年のベストワンもこれの可能性も重々あります。それほどに同作は素晴らしい一作でした。

 さて、上半期の総括になりますが「話題作がことごとく、微妙」という結構、酷い状況だったなーと思っています。

 ツイッターで活躍するあの人この人、雑誌で活躍するあの評論家この評論家――みんな揃って「えー…? あんた数年前はこういう映画を貶してる人じゃありませんでしたっけ?」って言いたくなるほど、微妙な出来の映画を妙にプッシュしていくこと。

 なんとなく、ここ数年続いていた転換期の終わりが近づいているな、という実感があります。全体的に政治的な理由や、ジャンル差別的な理由でみんなが映画を変に褒める状況が続いているなぁと。

 

 2017年下半期も期待の作品は多数あります。おそらく、期待されていない傑作も多数あることでしょう。

 この状況下で、周囲に惑わされずに面白い映画をつかめるよう、相変わらずのマイペースで本ブログは運営していきたいと思います。

 

以上です。

*1:ああいう人たちって、他の作品を認めず貶す傾向があるんで僕は大嫌いです。

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