映画感想:アウトレイジ最終章
新キャストも登場!北野 武監督最新作『アウトレイジ 最終章』特報!
恒例の手短な感想から
結構良かった
といったところでしょうか。
実のところ、一部のネットでは微妙な評判が立っているようですが……まあ、ネットの人たちって、最近は「無限の住人」もまともに評価できない、「シン・ゴジラ」ではゴジラを明らかに見てないまま、いい加減なことを言い出す、と、あまり当てにならない ことが多いですし、気にしない方が良いのかなと。
少なくとも、自分としては結構面白い最終章だったと思っています。第一作目ほどではないけど、ビヨンドよりは間違いなく面白かったかなと。
第一作目、ビヨンド、とアウトレイジは、北野武の気分によって、様々に雰囲気を変えてくるわけですが、今作は武映画の中でも「日常の中で、急にバイオレンスがやってくる歪さ」「ヤクザ世界の異様さと恐ろしさ」がかなり強調された内容となっています。
そういう意味では、今作が一番アウトレイジの「全員悪党」というコンセプトに忠実な作品と考えて良いのではないでしょうか。
武映画としては、ここまでコンセプトに忠実な映画は珍しいでしょう。北野武監督は、こういう映画には必ず「全体の雰囲気からすると、明らかにはみ出ているおかしな要素」を入れがちでした。
が、それが本作にはほとんど無いのです。
もちろん、今までの武映画的な描写自体は入っているのですが、その描写が映画全体からすると違和感がないのです。
だからこそ、武映画として物足りない気持ちになる人もいるのかもしれませんが、正直、武映画ファンでもない人からしてみれば、そんなことはどうでもいいとも言えます。
自分からすれば、アウトレイジという映画は「ヤクザたちの腹黒いやり取りの面白さ」「罵声浴びせあい大会の中でそこはかとなく感じる快感」「銃で人があっさり殺されていくさまの恐ろしさ」
この三つこそが本質です。
ここが究極的に描けていれば、それで十分なのです。本作は、ビヨンドよりも明らかに上記の三つを満載しています。
西田敏行を筆頭に、役者陣がアドリブやらなにやら飛ばし合いまくる、ヤクザのやり取りと罵声大会は、いろんな意味で面白いですし、今作のアウトレイジは、本当に次々と人が銃殺されていきます。
これだけでアウトレイジとしては、十分なのです。
その上、誰も彼もが様々な腹黒い思惑を抱え、暗躍し、それらが交錯した結果、誰の思惑どおりにも物事が進んでいかないという、人間社会の難しさを執拗に描き出す本作には、図らずも作品全体に異様な虚無感が漂っています。
北野武が憧れる、ルイ・マルの「鬼火」などの映画にあった、底の知れない虚無感を抱いている本作は、実は武映画的な要素がないにも拘らず、最も武映画的であると言えるのではないでしょうか。