儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:キングスマン:ゴールデン・サークル


映画「キングスマン:ゴールデン・サークル」予告B

 恒例の手短な感想から

さすがのマシューヴォーン。最高だ!

 といったところでしょうか。

 

 マシュー・ヴォーンという監督に外れなし! そう言ってしまいたくなるほどに、作品を作れば良作か名作しかないマシューヴォーン監督ですが、本作も相変わらず最高でした。

 前作のキングスマンは、このブログでも書いたように「あまりにも特異すぎる傑作」であり、あれの続編を撮るとなると、さすがにマシューヴォーンと言えども難しいのではないかと考えていましたが、杞憂だったようです。

 

 もちろん、何もかもがずば抜けた出来であった前作ほどの作品かと問われると若干、疑問のある部分はありますが、いわゆるシリーズものの二作目と考えると、本作は十二分な魅力のある成功作でしょう。

 前作のキングスマンに見劣りしない、続編となっています。

 

 まず、本作は前作からすると明確に方向性を変えています。前作は、強くオールド007をオマージュしており、前面に華麗さを押し出した上で、その華麗さを皮肉っているようなスプラッタギャグを挿入するような方向性でしたが、これをやめています。

 本作はどちらかというと、華麗さよりも地に足のついた泥臭さがよく出ています。それは主な舞台がアメリカに移っていることからもよく分かりますし、なによりこの映画の主題として使われている、数々のカントリー系楽曲を見ても明白なことです。

 そして、全体的によりコメディ色が強い出来となっています。ネタバレになるので避けますが、某ポップミュージシャンがこの映画で終始活躍する姿は間違いなく、観客の爆笑を誘うことでしょう。他にも小さいエロギャグなどが織り混ぜられており、前作以上に笑える一作となっています。

 

 そして、この上記二つの変化により、前作とはアクションの方向性さえも変化が見てとれるようになっています。

 断言しますが、アクションシーンに関しては本作の方が編集、スタント、流れているBGM、コメディチックなシークエンス含めて、前作よりも全てが上です。特にクライマックスのアクションシーンは、相変わらず音楽センスが抜群のマシューヴォーンによる、見事な選曲と絡まって、興奮間違いなしのシーンになっています。

 正直、このシーンだけでこの映画の評価が3割は増していると思えるくらいに素晴らしいです。

 

 ただ、もちろん、本作には欠点がないわけではありません。まず、なによりも本作は筋書きが、かなり適当です。前作も若干ツッコミどころはありましたが、本作はツッコミどころしかないような状態だと言えます。

 ただし、冷静に考えれば、なのですが。

 本作はクリフハンガー的に衝撃の展開が次々待ち受けているので、正直、冷静に考えている暇がないため、ツッコミどころが、あまり気にならないのです。

 

 なにより、ツッコミどころだらけとはいえ、話のテーマに、相当な時事ネタを取り扱っていることは評価に値します。本作は間違いなく、ドゥテルテ大統領の麻薬戦争や、ドナルド・トランプのような存在、そして、それらを通して、世界中の右左構わず、正義にひたすら突っ走ろうとしている狂気の風潮を痛烈に皮肉っていることは間違いないでしょう。

 

 また同時に実は麻薬常習者や、人間のおかしな感覚を皮肉っている内容でもあります。

 冷静に考えれば、そもそもの麻薬自体、常習していれば、本作で敵が巻いていたウイルスの感染症状に近いようなことは、将来、起こるはずなのです。しかし、その危険性を気にせず、なんなら開き直って麻薬を常習するくせに、それがウイルスとなった途端に人間は大騒ぎしてしまうわけです。

 これはなんとも皮肉げな設定でしょう。

 

 このように、本作は相変わらず絶妙なマシューヴォーンの手腕をよく表す一作となっているのです。

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