儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:ボス・ベイビー


『ボス・ベイビー』すべて日本版予告 (2018年)

 恒例の手短な感想

なにこれ。感想に困るんだけど…

 といったところでしょうか。

 

 意外と世の中には知られてないものの、ディズニーやイルミネーションの3Dアニメーション映画と同じくらいのペースで出続けているドリームワークス製の3Dアニメーション映画ですが、久々に新作が世の中でちょっと話題になっている気配があったので見てきました。

 本作、ボス・ベイビー

 ワーナーブラザースで作っていた3Dアニメーション「コウノトリ大作戦」が好評*1だったことを受けて、ドリームワークスが二匹目のドジョウで狙ったのが本作なのでしょうか。

 

 ただまあ、そんなことは本作ではどうでも良い話です。それ以上に本作を鑑賞した大概の人はこう思ったことでしょう。

「なんじゃこりゃ」と。

 自分も予告編や話のあらすじなどから想像される映画の内容と、本編のあまりの乖離に終始、絶句していました。本作、あまりの出来に呆れるとか、怒るというよりも、戸惑いが強すぎてどう反応したらいいのかよく分からないのです。

 決してクオリティが低いわけではないのですが、本作、あまりにもやってることがおかしすぎるのです。演出、話の構成、カメラワークに至る全てが異様です。一つ画面内で複数の時系列が同時に進行したり、話がヘンテコな入れ子構造になっていたり、とにかく、子ども向けのアニメにしてはやたら難しい内容になっているのです。

 

 なぜこのように難しい内容になってしまっているかというと、理由はこの映画の本編中にも言及されていますが、本作の主人公が「かなり妄想癖のある男の子」であるからです。この、子どもの妄想している視点で話が紡がれているために、終始、物語全体が異様にシュールな内容となっているのです。

 しかも、妄想している世界の中で、更に主人公が妄想しているシーンまであったりして、だんだん見ているうちに「えっと、この妄想は、妄想の中で妄想している妄想だったっけ? それとも、ただの妄想だったっけ? それとも現実の中で起こっている出来事だっけ?」と訳が分からなくなってくるのです。

 

 本作は言ってしまえば、デビット・クローネンバーグの「裸のランチ」とか、今敏の「パプリカ」が、子ども向けに、甘口にアレンジされたような映画と言えるでしょう。



 さて、ここまで読んだあなたはどう思ったでしょうか。

 きっと「で、そんな映画、誰に対してニーズがあるのか? ニッチすぎるのではないか?」と思われたことでしょう。まさにその通りで、この映画は誰に向けて作っているのか、サッパリよく分からないのです。

 裸のランチやパプリカのような映画が好きな人からすると、本作の若干難解な表現は「とは言っても、子供向けでまだまだヌルい」と感じる程度のものでしかありません。目新しい表現などでもないのです。

 そして、もちろん子ども向け映画としても、なにがしたいのかよく分かりません。ギャグは異様に大人向けで、なぜかインディージョーンズのパロディを始めたり、ブラックジョークを始めたり、子ども向け映画として明らかにおかしいのです。

 

 更に厄介なのが、だからといって本作「クオリティが低い映画」なのかというと、そうでもないのです。それなりには面白いのです。粗もありますし、クライマックス付近がいい加減だったりして、「ちょっとな」と言いたくなるところもありますが、貶すほどでもないのです。

 だから、つまらない映画でもないのです。

 しかし、誰かに向けて作っている映画でもないのです。

 あらすじや予告編を見て期待した観客を、悪い意味で裏切る出来なのも間違いないのです。

 

 そういう映画であり、つまりは、本作ほど悪い意味で感想に困る一作もないでしょう。

*1:主に、本ブログとかで↓

harutorai.hatenablog.com

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