儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:パシフィック・リム:アップライジング


『パシフィック・リム:アップライジング』日本版本予告

 恒例の手短な感想から

このスケール感とこの熱の温度が決め手(欠点として

 といったところでしょうか。

 

 巷ではあまり良い評判を聞かないというか、「思ったよりはマシ」「でも、まあ嫌いな人もいて仕方ない」といった方向の評判が多い、パシフィック・リムの続編ですが、困ったことに自分もまったく同じ感想を抱いてしまいました。

 確かに本作、「思ったよりかはマシ」なのです。しかし、かといって最高の出来かというと程遠く、「これはある程度貶されるのも仕方ないよなぁ」と納得するしかない作品でした。どうやらパシフィック・リムという映画も、他のハリウッド映画と同じく「シリーズを重ねれば重ねるほど微妙さがどんどん浮き彫りになっていく宿命」を背負ってしまっているようです。

 

 特に本作は、製作の段階で大揉めに揉めて色々転じて、出資する国ごと変わってしまって、配給する映画会社も一新されてしまったので、なおのこと仕方ないことかもしれません。監督も、ギレルモ・デル・トロから、NETFLIXのよく分からない監督へと継承され、ここまで色々変わってしまっては、雰囲気が大幅に変わってしまうのも仕方のないことでしょう。

 

 ただ、雰囲気が変わったにしては良い出来ではあります。特に本作で改善が見られたのは人物ドラマについてでしょう。稀に本作を人物ドラマの観点から貶そうとする人がいますが、それは明らかに本作を的確に評せていません。

 本作、アップライジングは、間違いなく前作よりも人物ドラマの部分は良くなっております。ハッキリ言って、前作のパシフィック・リムは人物ドラマという観点では、かなりいい加減な作品でした。

 登場人物の言動は、終始、その場その場でスタンスが変わって、ちょっと前のシーンと正反対の行動を取りまくっていたり、登場人物大半を最終的にイイ人にしてしまおうとするギレルモ・デル・トロ特有の作風も重なって、「いやいやいや、おかしいでしょ」と言いたくなるところが満載でしたから。

 本作の、明らかに出資元の国への目食わばせで、急に活躍の場面をねじ込まれた感が強い中国企業描写を加味しても、明らかに本作の方が矛盾点が少なく、ちゃんと登場人物たちの設定等を練り込めています。

 この点はとても良いのです。

 

 が、問題は「人物ドラマが良くなってもなぁ……」というここにあります。人物ドラマが良くなっても、なぜ、「それでもなぁ」という評価になってしまうのか、それは簡単で本作がパシフィック・リムだからです。

 

 当たり前ですが、前作のパシフィック・リムがどんなに人物ドラマが支離滅裂でも、多くの人から支持されたのは「そこが本題ではないから」です。怪獣とロボットが戦うというコンセプトが全ての映画であり、そこが最高だから評価されたわけです。

 

 で、なによりも本作はそこが微妙な出来で収まっているのです。

 ハッキリ言って、ロボットSFとして本作は面白くないのです。本作のロボット描写は全体的に「ロボットアニメのそんなに重要じゃない回だけど、ちょっと盛り上がってる回で出てきそうな感じの温度の戦闘」という形容が合っているかもしれません。

 テッカマンブレードに対してのテッカマンブレード2的な扱いと言いますか。とにかく「こんな御大層な続編映画でやる内容じゃない」と言いたくなってしまうレベルの――「これなら、それこそ、NETFLIXで60分くらいの番外編として放送すりゃいいじゃん」と言いたくなるレベルの――創意工夫と熱意と盛り上がり具合であるのが、この作品の最大の問題点となっています。

 早い話が、続編なのにスケールダウンしているのが問題なのです。

 

 このスケールダウンを良く象徴しているのは、登場するロボットと怪獣たちです。どちらもデザイン的にも、戦闘スタイルとしてもバリエーションが感じられないのです。というか、ハッキリ言ってロボットは全部同じにしか見えませんし、怪獣は全体同じやつにしか見えません。

 前作のロボットは、一体ごとの差異が明確にあり、怪獣も一体ずつ異なる能力を駆使していましたが、そういった描写がなくなっているのです。しかも、ロボットと怪獣ともにデザイン自体、同じに見えるということを抜いて考えてもあまりセンスが良くありません。

 

 正直、本作はエヴァの紛い物と、ゴモラの紛い物が戦っているという印象しか残らないです。

 そして、何よりも本作は熱い展開がまったくありません。特にラストは冷静に考えれば、物を計算して落としているだけ、で、それで「いけー!」と言いたくなるかと言われると、勿論まったくなりません。

 

 そこが決定的に本作が貶されてしまう点なのです。

 

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