儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:レディ・プレイヤー1


映画『レディ・プレイヤー1』30秒予告(遺言編)【HD】2018年4月20日(金)公開

 恒例の手短な感想から

んー。スピルバーグ大親分に一言……最高ッッッ!

 といったところでしょうか。

 

 公開前から「スピルバーグが世界中のポップカルチャーを集めた映画を作っているらしい」と話題持ちきりだった本作。

 しかも、最近のスピルバーグ作品ではかなり珍しく、"王道の痛快娯楽作になる"との話を聞いていて、どんな出来なんだろうかと不安と楽しみが入り混じりながら、多くの人が待ち望んでいたことだと思います。

 

 結果から言ってしまいましょう。

 本作は、最高です。

 

 実のところこの手のクロスオーバー映画というのは、珍しくなく――というか、身も蓋もないことを言ってしまえば、クロスオーバーは誰でも考えつく陳腐なアイディアなので――近年でも「シュガー・ラッシュ」やら「ピクセル」などの作品がありますし、それ以前にも多くのクリエイターがクロスオーバーに挑戦してはいたのです。

 ただ、どの作品もこの「レディ・プレイヤー1」に叶うことは決して無いでしょう。レディ・プレイヤー1」は、クロスオーバー系映画として、今後大きな金字塔となり得るほどの作品です。

 

 今までのクロスオーバー系映画は「言っても元ネタの再現度がいい加減」だったり「実は、原作を完全無視して、映画の筋書きにとって都合がいい設定に書き換えている」ことが多かったものでした。

 ですが、本作「レディ・プレイヤー1」はさすが、オタク総本山の大親分・スティーヴン・スピルバーグと言うべきか、全ての作品への再現度が半端じゃないほど高いのです。

 

 途中、パロディとして使われる某有名ホラー映画*1のシーンの再現度はもちろんのこと、あの有名アニメ映画のあれ*2とか、あの有名FPSゲームのあれ*3とか、登場人物同士のセリフで出てくるナードなネタとか、終始、画面にちょこちょこと出てくるだけだった、Overwatchのトレーサー*4でさえも「これ、本物のトレーサーじゃん!」と思えるくらいに完璧に再現しているのです。

 

 そして、そんな完璧に再現した各ポップカルチャーたちを、「オアシス」という舞台の上で、シュールなまでに、ごった煮にしてしまうのです。それは最高に決まっているでしょう。

 最近、VRchatなどで好きなアバターを使ってVRで交流する遊びが一部で流行っていますが、本作の「オアシス」の絵面は、まさにアレが更に発展したような内容となっており、冗談抜きで「現代の感性」を実に見事に切り取っていると言えます。*5

 また、このごった煮具合も素晴らしく、元ネタのゲーム、映画、アニメが分かっている人ならば、腹を抱えて笑うしかないほどに無茶苦茶なことになっています。本作のクロスオーバーは「パロディとして、最高に笑える品質」なのです。

 

 キャラクター同士のやり取りで出てくる、ナードなネタに関しては原作者で脚本にも関わったアーネスト・クラインが齎したものかな、とも思うのですが、*6そうだとしても、ここまでキッチリ再現させられたのはスティーヴン・スピルバーグ自体の力量によるものも大きいと考えられます。

 ハッキリ言ってスピルバーグ大親分、感性がとても若いです。

 

 更に年の功であるスティーヴン・スピルバーグはただ若者の感性に共感するだけでなく、その感性に対して、年長者として諭すような視点も本作に多く織り交ぜているのが、また素晴らしいです。おそらく、これはいかにも、こういう映画を撮りそうな若手映画監督では絶対に出来なかったことでしょう。

 特にそれを象徴するのが、実は現実世界パートでの描写にあります。現実世界パートでの画面……この上なく、70年代80年代のSF映画っぽいんですよね。いえ、画面がそれっぽいだけでなく「わざわざフィルム撮りして、若干荒い画質」にするほどの徹底ぶりで、かつてのひたすらにドキドキ・ワクワクした子供向けSF映画の傑作たちを思い起こさせるような、画面にしているのです。

 

 ストーリー自体もひねくれているところがなく、純真な心を思い出してほしいという作り手のメッセージがストレートに伝わってくる内容となっており、上記の「ひたすらワクワクするだけだったSFの映画」のような画面と相まって、大人の自分でさえ、なんだか、懐かしい気持ちを思い出してしまうのです。 

 最近、冷笑的な視点が多い世の中へ一石を投じようとしていることは間違いないでしょう。*7

 夢です。そう、この映画にはとても夢が詰まっています。夢いっぱいの心で見た、少年時代の自分が、この映画にはまだいるのです。

 その上で、本作のクロスオーバーで「まさか、あの作品とあの作品の、アレが同じ画面で闘ってるなんて!」という夢の共演を次々と果たしていくわけです。

 最高に決まっていますよ。子供の頃の、純真な気持ちにわざわざ観客を戻した上で、その子供の頃に見たかった「夢の光景」をこれでもかとこの映画は見せつけてくるのです。本作のクロスオーバーは「夢として、最高に感動できる品質」なのです。

 

 だからこそ、本作はクロスオーバー系映画の金字塔となりえるのです。

*1:ネタバレすぎて言えないです

*2:ものすごいネタバレだから言えるわけがないです。まさか、映画の冒頭からアレが出てくるとは

*3:これもネタバレなので……。あのシューターゲームシーン、全然違う2つのゲームが混ざってるから凄いことになってるんですけどね

*4:これくらいは、ネタバレしても大丈夫ですよね? そこまでトレーサーは重要な役割で出ないですし

*5:余談ですが、本作のいろんな物がごった煮状態でパロディされていて、で、なおかつそれが異様にシュールという作品……最近、どこかで見たことあるよなぁーと思っていて気づきました。それ、ポプテピピックじゃん、と。だから、本当に「オアシス」の姿って、今の若者の感性そのものなんです。

*6:アーネスト・クラインは、ファンボーイズという映画の脚本も手がけているのですが、これも終始いろんな映画のナードな小ネタが散りばめられている一作でした。

*7:前脚注のポプテピピックなんて、まさに冷笑的な作品です(笑)

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