映画感想:劇場版シティーハンター〈新宿プライベート・アイズ〉
「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>」本予告第二弾 | 2019年2月8日(金)全国ロードショー
恒例の手短な感想から
あの時代を切り取って、2019年に張り付けたような快作
といったところでしょうか。
これが本当に20年以上も隔てて作られた新作なのだろうか、と誰もが驚愕したことだと思います。ここまで、昔のシティハンターそのまま、昔の北上司そのままのテイストで、今のシティハンターを描くことが出来るのかと。
それくらい、本作シティハンターは、80年代終わりから90年代初頭にあった、この手のコメディアクション作品の良さと悪さの全てがよく出ている作品だと言えます。つまり、悪く言ってしまえば、論理や考証を、テンポとドデカイ設定と人間ドラマで強引に押し流していくご都合主義とも言えますし、良く言ってしまえば、観客に深く考えさせないよう工夫を凝らした度量の大きいスタイルとも言える、あの感じです。
久々のシティハンター新作は、驚くべきことに、あの感じをそのまま発揮しているのです。冗談抜きで、この映画の作り手たちは20年前からタイムスリップしてきたのではないか、と疑ってしまうほどに、本作はなにもかもが、あのままなのです。
もちろん、本作定番のキャラクターたちが、本当にあのままのノリでスクリーンに映っているのは言うまでもないですが、それ以外にも初登場シーンで、思いっきりポケットに手を突っ込みながら壁走りしている冴羽獠や、誰がどう見てもターミネーター2の丸パクリじゃねーかと言いたくなるショットガン発射シーンなど、細かいところを見ても本当に枚挙に暇がないのです。
話の内容に至っても、細かいギャグの殆どがエロギャグで、作り手に向かって「このクソ親父どもが」と言いたくなってしまうところもあれば、大筋の方は大筋で、冷静に考えたら「いや、そうはならないだろ」と突っ込みたくなったり「防弾だからって台詞で入れとけば問題ない……わけあるかぁ!!」と一家言吐いてみたくなってしまう、雑な辻褄合わせなどもあったりして、本当にあの時代の空気を2010年代という下地に転写してしまったような、脚本となっています。
挙げ句に、前述のショットガン発射シーンは「これ、ひょっとしてわざとやってるんじゃないか?」と疑いたくなるタイミングでバンクシーンとして再利用されていたりなど、古めかしいアニメ映画のテクニックも、詰め込まれたりしていて、実はアニメーションの面でも、どことなく懐かしみを覚えるようなものとなっています。
本当にありとあらゆる箇所が、昔にタイムスリップしている作品なのです。
「悪いところまで、あの時代のまま」という評は普通の作品ならば、悪評となってしまうかと思います。しかし、この作品の場合は、むしろ好評と言えるでしょう。明らかに本作は、そういったあの時代の悪い面も含めて、「あの時代の懐かしさ」として顧みようとしている作品であることは明白だからです。
若干、ズレたたとえになりますが、クエンティン・タランティーノ映画でわざと昔のジャンル映画っぽく、下手な撮り方や下手な編集を入れようとするようなものです。あれに野暮なツッコミを入れてもしょうがないですし、むしろ、そことクエンティン・タランティーノ的な映画センスの掛け合わせから出来る奇妙さこそが一番楽しいものでしょう。
同じように、本作もまた、昔懐かしいあの感じと「言っても2010年代なんだな」と感じられる部分との奇妙な掛け合わせに面白さがあるのも事実です。
例えば、敵の用いている兵器がこの上なく現代的で、なおかつ、それに対する一般人たちのスマホを掲げて「かわいいかわいい」連呼する姿もまた極めて現代的なのです。が、別のシーンでは、なぜか人々がビアガーデンで酔っぱらって、のんびり外の景色を眺めながら涼んでいたりするのです。
この時代観をごった煮してしまっている奇妙キテレツさ!
「時代が昔なのか今なのか全然分からん!」と叫びたくなる、この可笑しさです。
これが、そもそもシティハンターという作品にあった荒唐無稽さとよくマッチしており、いかにもシティハンターらしいオチの付け方や人間ドラマの描き方などの妙技、そして上述した作品そのものから、ずっと発せられている懐かしさと相まって、本作がなんとも楽しいのです。
自分としては、本作にとても満足しました。