儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:ブラック校則


映画『ブラック校則』(11.1公開)予告編

 恒例の手短な感想から

良いんじゃない?

 といったところでしょうか。



 いえ、決してずば抜けていい出来の作品だというつもりは毛頭ないのですが、そうだとしても本作が面白い作品であることは事実でしょう。タイトルにもあるとおり、本作は若干前に世間で騒がれた古臭い「意味が分からない校則」――ブラック校則のことを、描いた作品です。

 

 センセーショナルな話題を安易に追って作られたと思しき本作は、主役二人がジャニーズアイドルで、しかもテレビのドラマとの連動企画で作られた映画という時点で普通の映画ファンの食指はまず届かないものと思われますが、これを見に行かないのは少し勿体ないです。

 なぜなら、本作、この手の学園もの――例えば「グレッグのダメ日記*1」や「志乃ちゃんは自分の名前が言えない*2」などと比べても、結構良い出来の作品であることは、間違いないからです。

 

 少なくとも自分は、前述の映画より、この映画の方が掲げたテーマに対してだいぶ誠実な態度で作られているように思います。特にブラック校則という問題を単に「校則がムカつく」という話だけでは済まさず、ブラック校則は最終的に一人一人が別に持っている「価値の否定」になっている、というところまで掘り下げて物語を描いているのは、なかなか良いです。

「この作り手たちは、ちゃんとテーマと向き合っているのだなぁ」と感心しました。

 

 特に自分は、地味に教育指導の体育教師は「生徒たちを見下している」のに対し、校長先生は「ビジネスライクに割り切っていて、生徒などどうでもいいと思っている」と、同じ学校側で校則を強いている人でもスタンスが違うところが、結構考えられているなと感心しました。



 また、映画の作り手たちがこの「一人一人の価値」という根本的なテーマに対して、決して映画自体の描き方が矛盾を起こさないように気を付けているのも、だいぶ良かったです。自分はちょっと前に「閉鎖病棟」の感想記事で「自分たちが提示したテーマと実際に描いている物語が自家撞着している」と指摘したことがあります。

 閉鎖病棟の作り手たちは、本作の作り手たちから爪の垢を取って煎じて飲むべきではないでしょうか。

 

 いかに本作が自家撞着に陥ってないかを示すのは、なによりも本作のヒロインのキャスティングでしょう。モトーラ世理奈さんというファッションモデルの方なのですが、この方、パッと見ても分かるくらいに、顔のそばかすがとても目立つモデルです。

 ちょっと昔だったならば「モデルとして欠点だ」と言われかねないレベルのそばかすなのですが、さすが今の世代というべきか、そのそばかすを、むしろチャームポイントとして活躍している方なのです。

 まさに「一人一人の価値」というものをテーマにする本作としては、この上なくベストなキャスティングだと言えるでしょう。

 

 そして、その主役の脇を飾る――いろんなところに欠点があり、性格の悪いところもあり、しかし同時に良いところもあったりする登場人物の数々。これら登場人物の善悪のさじ加減も絶妙で「完璧に悪い人も居なければ、良い人も居ない」というバランスに仕上がっております。*3やはり、ここもちゃんとテーマを体現することが出来ているのです。

 

 その上、脚本は様々な過去の「学園もの映画」を参照しながら丁寧に作っており「あ、これあの映画のアレか」と言いたくなる箇所がいろんな箇所で見られます。例えば前述した「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」や有名な作品でいえば「桐島、部活辞めるってよ。」リンダリンダリンダ!」などの映画を思わせる撮り方や描写がそこかしこに潜んでいるのです。

 

 あえて言うなら、若干、描写のいくつかが中二病めいているところもあるのですが――なんというか、この映画の青臭さの場合、そこもまた良い味になっているように思います。自分がそれくらいオジサンになったのかもしれませんが(まだ30にもなってないのに、こんなこと言ってたら怒られそうな気もしますが……)この映画で中二病めいた「安っぽい大人への反抗」的な描写があっても、「青春だからねぇ」ということで良いのではないでしょうか。

*1:以前もこのブログで取り上げたことがありますが、グレッグのダメ日記は、クロエ・グレース・モレッツが出演していること以外の取り柄がほぼない駄作映画です

*2:本作にも出てくる吃音症をテーマにした映画です。志は良かったのですが、内容的には納得がいかない描写の多い映画でした。

*3:主人公たちも完璧な善人ではないのが特に素晴らしいです。

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