儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:キングコング 髑髏島の巨神

映画『キングコング:髑髏島の巨神』VR映像【HD】2017年3月25日公開

 恒例の手短な感想から

まさか、こんな出来になっているとは……。

 といったところでしょうか。

 

 まさか、こんな出来の映画になっているとは……。

 上記の予告編を見て、自分は非常に期待をしていたわけです。巨大生物が生息する幻の島「髑髏島」で、怪獣たちが大迫力の激闘を繰り広げ、その激闘にひたすら戸惑い、流されていくばかりの人間たち――もう怪獣映画のツボをここぞとまでにおさえた予告編を見て、自分は今年公開の映画の中でも、トップレベルでの過剰な期待をしていたわけです。

 ギャレス・エドワーズ版のゴジラシン・ゴジラ巨神兵東京に現わるパシフィック・リム等々――それらの特撮を見ても、どこか「僕が見たい怪獣映画はこれじゃないんだよ」というモヤモヤを、ようやく解消してくれる究極の一作が誕生したのではないか、と。

 そんな期待を寄せて、映画を見に行ったわけです。

 

 まさか……それがまさか……

 この過剰な期待を、余裕で上回るなんて……。

 

 信じられないです。本作「キングコング 髑髏島の巨神」は、間違いなく、今年の映画の中でもトップレベルに位置する大傑作です。

 基本的な話の筋書きや、テーマは単純で、ともすればテンプレ的とも言われかねないほどにベタなハリウッド映画でしかないのです。*1どれほどに単純かというと、もう最初らへんの人物の造形などから、「どいつが死んで、どいつが生き残るのか」がなんとなく分かってしまうほどに単純です。

 ベタな、いわゆる「死亡フラグ」が立っていたり、ありがちな設定が押し並べられていたり、ありがちなクライマックスがあり、怪獣の扱いもありがち――この映画は、話の筋書きだけを見ればありがちとしか言いようがないほどにありがちな出来なのです。

 しかし、それを分かっている自分さえ――いえ、それを分かっている自分だからこそ、本作は「とんでもない一作だ」と断言できます。

 

 ここまで単純な話とテーマでありながら、本作は、そんな単純な話を見たとはとても思えないような強い感慨が、胸に残るのです。

 

 これは一重に、撮影や演出の上手さに起因していることは確かでしょう。

 怪獣映画には、一つだけ、とても重要な”表現しなければならない”描写が存在しています。こう書くと、頭の痛いことに映画ファンほど「戦争批判の描写」だとか、「うんちゃらのメタファー」だとか言い出す傾向がありますが、自分が言いたいのはそういう意識高そうな話ではありません。

 もっとシンプルな話です。

 怪獣映画は、怪獣映画であるかぎり、怪獣はとてつもなく強くて、大きくて、こいつは倒せないんだ。人間にはどうしようもないんだという、荒唐無稽なまでに人間の矮小さを観客にまざまざと分からせる表現が、必要なのです。

 つまり、ただ怪獣がぎゃわーんと咆哮して、グシャングシャンと街を破壊していくのが、怪獣映画なわけではないのです。「人間と比較して、怪獣がいかに優位な存在か」「人間と比較して、怪獣はいかに巨大なのか」――これを実感させる表現が、必要なはずなのです。

 

 本作、キングコングはこの表現が完璧なのです。パシフィック・リムや、シン・ゴジラでさえ、キチンと描くことができなかった「うわ、でっけぇ!」「うわ、強すぎる!」を実感させる描写が、この上ないほどに上手いのです。

 怪獣同士が巨大なスケールで戦闘をする様子を、その足元で闘いつつ逃げつつ翻弄されていく人間の視点から描いており、だからこそ、「本当にそこに怪獣がいて、闘っているような」錯覚を覚えてしまうのです。

 

 そして、その"人間の矮小さ"が表現できているからこそ、本作がどれほど単純なテーマと筋書きだろうと、気にならないのです。キングコング自身が、怪獣たち自身が、話と関係なく「人間はちっぽけだ」「人間を超えた大きな視点・大きなスケール・大きな世界というものが存在するんだ」という強烈なテーマを発しているからです。

 むしろ、単純なテーマであるほど、怪獣たちが放つテーマが際立っているとも言えます。

 

 これが出来ているだけで、近年の怪獣映画としては最高の出来と言ってもいいくらいです。

 

 その上、本作は更に、怪獣映画以外の側面も有しているのだから……とんでもないというか――つまり、大傑作としか言い様がないのですが。

 

 そうです。本作、キングコングには怪獣映画以外の魅力もふんだんに入っています。それは例えばクトゥルー神話的な魅力なども入っていたりするのです。本作は、太古に地球を支配していた邪悪な生物たちの存在を匂わせています。

 しかも、なにが素晴らしいって、この映画の美術が本当に素晴らしいのです。

 大昔の、廃墟と化した戦艦が神殿となっている様子や、髑髏島に住む島民たちの様相など、怪獣映画だけではなく、一種のダークファンタジー映画としても楽しめるほどに、美術が耽美な魅力を放っているのです。

 また、実はどことなく「進撃の巨人」っぽいところもあったりします。*2

 

 これらもネタバレにならない範囲で、言及しているだけで、正直、本編にはもっと細かくいろんな映画を思い出すような場面が仕込まれています。これほどに多数のジャンル映画の魅力を内包している作品は、かなり珍しいくらいです。

 以上ですが、いや、それにしても素晴らしい作品でした。

 ちなみに、4Dでの鑑賞はかなりオススメです。

*1:過去の怪獣映画たちを巧みにオマージュしてはいるのですが……

*2:というか、進撃の巨人が好きな人が見たかったものが、本作にはあるはずです。

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