儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:見えない目撃者


【本予告】映画 『見えない目撃者』/9月20日(金)公開

 恒例の手短な感想から

かなり面白いけど、かなり怖い

 といったところでしょうか。

 

 韓国のサスペンス・スリラー映画を元に作り上げた映画ということで、本ブログとしては「22年目の告白-私が殺人犯です-」をどこか思い出すような過程を経ている映画だなぁと思いながらの鑑賞となりましたが、いやー、本作「22年目の告白-私が殺人犯です-」とは、印象がまったく異なります。

 

「22年目の告白」はアクションや残酷描写を軽めにしつつ、謎解き部分をより面白くしていくという、いかにも日本人らしいやり方でのリメイクを図っていましたが、本作、見えない目撃者はその逆を行っています。

 端的に言って、向こうの映画らしい残酷表現やスリラー部分を、違和感なく日本に置き換え、とにかく観客に「恐怖の殺人犯がいる」というリアリティを感じさせることに注力しております。これでもかと言うほどに血塗れた映画となっており、なんなら、犯人の凶悪さと不気味さは、元の韓国映画版よりも酷くなっているという始末であったりします。

 

 本当に「園子音や三池崇史でもないのに、よくここまでやりますね」と言いたくなるほどに死体の描写も殺人の描写も、ものすごく恐ろしい描き方がなされている映画となっており、そっちの方面に振り切って日本リメイクさせたプロデューサーの野心的すぎる判断が光る一作と言って過言ではありません。

 

 

 しかし、おかげで本作は本当に面白い映画になっております。多少、「え、その演出は安いでしょ」と言いたくなる部分も数箇所あるのですが、本当にそれは数箇所だけの話です。

 それ以外はまったく手を抜いていない映画であり、おかげで映画の始まりから終わりまで、吐きたくなるほどの緊張感とハラハラをまとっていて、一瞬も目が離せない映画となっています。

 特に個人的には「本当に日本映画なのか、これは」と言いたくなるほど、カメラワークが素晴らしかったです。邦画っぽい撮り方を徹底的に排し、代わりに照明からスローの使い方から構図に至るまでが韓国の映画っぽい撮り方に変わっているのです。これは感心しました。

 

 プロデューサーとして向こうの人が関わっているので、そのため、このようなカメラワークを可能に出来たのかもしれませんが、それにしても、邦画の中で本作が特異な出来となっていることに変わりはありません。

 

 この特異なカメラワークのおかげで、観客は「この映画はなにか雰囲気が違う」「なんだか雲行きが怪しい」と予感することが出来、その予感があるからこそ、後に来る恐怖が一層引き立ってくれるのです。

 

 そして、その引き立った恐怖感の中で、犯人役を演じた浅香航大さんの怪演としか言いようがないサイコパスっぷりや、巧みに論理的に主人公たちを「そうせざるをえない状況」に追い込んでいく脚本の構築などが、観客にガンガンとキツイ一撃を加えていくわけです。

 あまりにもキツイ一撃が多いので、怖がりな自分なんて、この映画を鑑賞した帰り道は「道路脇から殺人犯とか急に出てこないよな」と警戒しながら帰ってしまいました。それくらい、本当にこの映画にはシャレにならないものがあります。

 

 ただ、惜しむらくは、若干鑑賞していて気になったのですが……犯人が主人公を捕まえたときに言っていた「俺とお前は同じだ」って言う犯人の独白――あれ、この映画に要りました?

 セリフとして、ちょっと説明的すぎる点も問題あるのですが、それ以上に、この物語ならば、そもそも主人公と犯人を対比する必要性がないのでは……。あと、犯人に切りつけられた盲導犬の姿も「犬に、そんな微妙な特殊メイクしか施せないんなら、そのカットを入れないほうが良かったんじゃ……?」と気になりました。

 

 その二点だけ惜しいのですが、それ以外は本当に素晴らしい映画だと思います。

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