儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

4月に見た映画

リメンバー・ミー


映画『リメンバー・ミー』日本版予告編

ボス・ベイビー


『ボス・ベイビー』日本語版予告編

パシフィック・リム:アップライジング


『パシフィック・リム:アップライジング』日本版本予告

・ゾンビ・ガール

ゾンビ・ガール(吹替版)
 

・ トライアングル

・ ハウンター

ハウンター(吹替版)
 

・ レディ・プレイヤー1


映画『レディ・プレイヤー1』15秒CM(大ヒット編)大ヒット上映中

 

以上、七本が4月の鑑賞映画でした。鑑賞本数少ない代わりに、ものすごく映画館に足を運んだ一か月で、4月だけは新作映画を4本も見ています。それくらい、最近は期待作が多かった月でした。

映画感想:レディ・プレイヤー1


映画『レディ・プレイヤー1』30秒予告(遺言編)【HD】2018年4月20日(金)公開

 恒例の手短な感想から

んー。スピルバーグ大親分に一言……最高ッッッ!

 といったところでしょうか。

 

 公開前から「スピルバーグが世界中のポップカルチャーを集めた映画を作っているらしい」と話題持ちきりだった本作。

 しかも、最近のスピルバーグ作品ではかなり珍しく、"王道の痛快娯楽作になる"との話を聞いていて、どんな出来なんだろうかと不安と楽しみが入り混じりながら、多くの人が待ち望んでいたことだと思います。

 

 結果から言ってしまいましょう。

 本作は、最高です。

 

 実のところこの手のクロスオーバー映画というのは、珍しくなく――というか、身も蓋もないことを言ってしまえば、クロスオーバーは誰でも考えつく陳腐なアイディアなので――近年でも「シュガー・ラッシュ」やら「ピクセル」などの作品がありますし、それ以前にも多くのクリエイターがクロスオーバーに挑戦してはいたのです。

 ただ、どの作品もこの「レディ・プレイヤー1」に叶うことは決して無いでしょう。レディ・プレイヤー1」は、クロスオーバー系映画として、今後大きな金字塔となり得るほどの作品です。

 

 今までのクロスオーバー系映画は「言っても元ネタの再現度がいい加減」だったり「実は、原作を完全無視して、映画の筋書きにとって都合がいい設定に書き換えている」ことが多かったものでした。

 ですが、本作「レディ・プレイヤー1」はさすが、オタク総本山の大親分・スティーヴン・スピルバーグと言うべきか、全ての作品への再現度が半端じゃないほど高いのです。

 

 途中、パロディとして使われる某有名ホラー映画*1のシーンの再現度はもちろんのこと、あの有名アニメ映画のあれ*2とか、あの有名FPSゲームのあれ*3とか、登場人物同士のセリフで出てくるナードなネタとか、終始、画面にちょこちょこと出てくるだけだった、Overwatchのトレーサー*4でさえも「これ、本物のトレーサーじゃん!」と思えるくらいに完璧に再現しているのです。

 

 そして、そんな完璧に再現した各ポップカルチャーたちを、「オアシス」という舞台の上で、シュールなまでに、ごった煮にしてしまうのです。それは最高に決まっているでしょう。

 最近、VRchatなどで好きなアバターを使ってVRで交流する遊びが一部で流行っていますが、本作の「オアシス」の絵面は、まさにアレが更に発展したような内容となっており、冗談抜きで「現代の感性」を実に見事に切り取っていると言えます。*5

 また、このごった煮具合も素晴らしく、元ネタのゲーム、映画、アニメが分かっている人ならば、腹を抱えて笑うしかないほどに無茶苦茶なことになっています。本作のクロスオーバーは「パロディとして、最高に笑える品質」なのです。

 

 キャラクター同士のやり取りで出てくる、ナードなネタに関しては原作者で脚本にも関わったアーネスト・クラインが齎したものかな、とも思うのですが、*6そうだとしても、ここまでキッチリ再現させられたのはスティーヴン・スピルバーグ自体の力量によるものも大きいと考えられます。

 ハッキリ言ってスピルバーグ大親分、感性がとても若いです。

 

 更に年の功であるスティーヴン・スピルバーグはただ若者の感性に共感するだけでなく、その感性に対して、年長者として諭すような視点も本作に多く織り交ぜているのが、また素晴らしいです。おそらく、これはいかにも、こういう映画を撮りそうな若手映画監督では絶対に出来なかったことでしょう。

 特にそれを象徴するのが、実は現実世界パートでの描写にあります。現実世界パートでの画面……この上なく、70年代80年代のSF映画っぽいんですよね。いえ、画面がそれっぽいだけでなく「わざわざフィルム撮りして、若干荒い画質」にするほどの徹底ぶりで、かつてのひたすらにドキドキ・ワクワクした子供向けSF映画の傑作たちを思い起こさせるような、画面にしているのです。

 

 ストーリー自体もひねくれているところがなく、純真な心を思い出してほしいという作り手のメッセージがストレートに伝わってくる内容となっており、上記の「ひたすらワクワクするだけだったSFの映画」のような画面と相まって、大人の自分でさえ、なんだか、懐かしい気持ちを思い出してしまうのです。 

 最近、冷笑的な視点が多い世の中へ一石を投じようとしていることは間違いないでしょう。*7

 夢です。そう、この映画にはとても夢が詰まっています。夢いっぱいの心で見た、少年時代の自分が、この映画にはまだいるのです。

 その上で、本作のクロスオーバーで「まさか、あの作品とあの作品の、アレが同じ画面で闘ってるなんて!」という夢の共演を次々と果たしていくわけです。

 最高に決まっていますよ。子供の頃の、純真な気持ちにわざわざ観客を戻した上で、その子供の頃に見たかった「夢の光景」をこれでもかとこの映画は見せつけてくるのです。本作のクロスオーバーは「夢として、最高に感動できる品質」なのです。

 

 だからこそ、本作はクロスオーバー系映画の金字塔となりえるのです。

*1:ネタバレすぎて言えないです

*2:ものすごいネタバレだから言えるわけがないです。まさか、映画の冒頭からアレが出てくるとは

*3:これもネタバレなので……。あのシューターゲームシーン、全然違う2つのゲームが混ざってるから凄いことになってるんですけどね

*4:これくらいは、ネタバレしても大丈夫ですよね? そこまでトレーサーは重要な役割で出ないですし

*5:余談ですが、本作のいろんな物がごった煮状態でパロディされていて、で、なおかつそれが異様にシュールという作品……最近、どこかで見たことあるよなぁーと思っていて気づきました。それ、ポプテピピックじゃん、と。だから、本当に「オアシス」の姿って、今の若者の感性そのものなんです。

*6:アーネスト・クラインは、ファンボーイズという映画の脚本も手がけているのですが、これも終始いろんな映画のナードな小ネタが散りばめられている一作でした。

*7:前脚注のポプテピピックなんて、まさに冷笑的な作品です(笑)

映画感想:パシフィック・リム:アップライジング


『パシフィック・リム:アップライジング』日本版本予告

 恒例の手短な感想から

このスケール感とこの熱の温度が決め手(欠点として

 といったところでしょうか。

 

 巷ではあまり良い評判を聞かないというか、「思ったよりはマシ」「でも、まあ嫌いな人もいて仕方ない」といった方向の評判が多い、パシフィック・リムの続編ですが、困ったことに自分もまったく同じ感想を抱いてしまいました。

 確かに本作、「思ったよりかはマシ」なのです。しかし、かといって最高の出来かというと程遠く、「これはある程度貶されるのも仕方ないよなぁ」と納得するしかない作品でした。どうやらパシフィック・リムという映画も、他のハリウッド映画と同じく「シリーズを重ねれば重ねるほど微妙さがどんどん浮き彫りになっていく宿命」を背負ってしまっているようです。

 

 特に本作は、製作の段階で大揉めに揉めて色々転じて、出資する国ごと変わってしまって、配給する映画会社も一新されてしまったので、なおのこと仕方ないことかもしれません。監督も、ギレルモ・デル・トロから、NETFLIXのよく分からない監督へと継承され、ここまで色々変わってしまっては、雰囲気が大幅に変わってしまうのも仕方のないことでしょう。

 

 ただ、雰囲気が変わったにしては良い出来ではあります。特に本作で改善が見られたのは人物ドラマについてでしょう。稀に本作を人物ドラマの観点から貶そうとする人がいますが、それは明らかに本作を的確に評せていません。

 本作、アップライジングは、間違いなく前作よりも人物ドラマの部分は良くなっております。ハッキリ言って、前作のパシフィック・リムは人物ドラマという観点では、かなりいい加減な作品でした。

 登場人物の言動は、終始、その場その場でスタンスが変わって、ちょっと前のシーンと正反対の行動を取りまくっていたり、登場人物大半を最終的にイイ人にしてしまおうとするギレルモ・デル・トロ特有の作風も重なって、「いやいやいや、おかしいでしょ」と言いたくなるところが満載でしたから。

 本作の、明らかに出資元の国への目食わばせで、急に活躍の場面をねじ込まれた感が強い中国企業描写を加味しても、明らかに本作の方が矛盾点が少なく、ちゃんと登場人物たちの設定等を練り込めています。

 この点はとても良いのです。

 

 が、問題は「人物ドラマが良くなってもなぁ……」というここにあります。人物ドラマが良くなっても、なぜ、「それでもなぁ」という評価になってしまうのか、それは簡単で本作がパシフィック・リムだからです。

 

 当たり前ですが、前作のパシフィック・リムがどんなに人物ドラマが支離滅裂でも、多くの人から支持されたのは「そこが本題ではないから」です。怪獣とロボットが戦うというコンセプトが全ての映画であり、そこが最高だから評価されたわけです。

 

 で、なによりも本作はそこが微妙な出来で収まっているのです。

 ハッキリ言って、ロボットSFとして本作は面白くないのです。本作のロボット描写は全体的に「ロボットアニメのそんなに重要じゃない回だけど、ちょっと盛り上がってる回で出てきそうな感じの温度の戦闘」という形容が合っているかもしれません。

 テッカマンブレードに対してのテッカマンブレード2的な扱いと言いますか。とにかく「こんな御大層な続編映画でやる内容じゃない」と言いたくなってしまうレベルの――「これなら、それこそ、NETFLIXで60分くらいの番外編として放送すりゃいいじゃん」と言いたくなるレベルの――創意工夫と熱意と盛り上がり具合であるのが、この作品の最大の問題点となっています。

 早い話が、続編なのにスケールダウンしているのが問題なのです。

 

 このスケールダウンを良く象徴しているのは、登場するロボットと怪獣たちです。どちらもデザイン的にも、戦闘スタイルとしてもバリエーションが感じられないのです。というか、ハッキリ言ってロボットは全部同じにしか見えませんし、怪獣は全体同じやつにしか見えません。

 前作のロボットは、一体ごとの差異が明確にあり、怪獣も一体ずつ異なる能力を駆使していましたが、そういった描写がなくなっているのです。しかも、ロボットと怪獣ともにデザイン自体、同じに見えるということを抜いて考えてもあまりセンスが良くありません。

 

 正直、本作はエヴァの紛い物と、ゴモラの紛い物が戦っているという印象しか残らないです。

 そして、何よりも本作は熱い展開がまったくありません。特にラストは冷静に考えれば、物を計算して落としているだけ、で、それで「いけー!」と言いたくなるかと言われると、勿論まったくなりません。

 

 そこが決定的に本作が貶されてしまう点なのです。

 

映画感想:ボス・ベイビー


『ボス・ベイビー』すべて日本版予告 (2018年)

 恒例の手短な感想

なにこれ。感想に困るんだけど…

 といったところでしょうか。

 

 意外と世の中には知られてないものの、ディズニーやイルミネーションの3Dアニメーション映画と同じくらいのペースで出続けているドリームワークス製の3Dアニメーション映画ですが、久々に新作が世の中でちょっと話題になっている気配があったので見てきました。

 本作、ボス・ベイビー

 ワーナーブラザースで作っていた3Dアニメーション「コウノトリ大作戦」が好評*1だったことを受けて、ドリームワークスが二匹目のドジョウで狙ったのが本作なのでしょうか。

 

 ただまあ、そんなことは本作ではどうでも良い話です。それ以上に本作を鑑賞した大概の人はこう思ったことでしょう。

「なんじゃこりゃ」と。

 自分も予告編や話のあらすじなどから想像される映画の内容と、本編のあまりの乖離に終始、絶句していました。本作、あまりの出来に呆れるとか、怒るというよりも、戸惑いが強すぎてどう反応したらいいのかよく分からないのです。

 決してクオリティが低いわけではないのですが、本作、あまりにもやってることがおかしすぎるのです。演出、話の構成、カメラワークに至る全てが異様です。一つ画面内で複数の時系列が同時に進行したり、話がヘンテコな入れ子構造になっていたり、とにかく、子ども向けのアニメにしてはやたら難しい内容になっているのです。

 

 なぜこのように難しい内容になってしまっているかというと、理由はこの映画の本編中にも言及されていますが、本作の主人公が「かなり妄想癖のある男の子」であるからです。この、子どもの妄想している視点で話が紡がれているために、終始、物語全体が異様にシュールな内容となっているのです。

 しかも、妄想している世界の中で、更に主人公が妄想しているシーンまであったりして、だんだん見ているうちに「えっと、この妄想は、妄想の中で妄想している妄想だったっけ? それとも、ただの妄想だったっけ? それとも現実の中で起こっている出来事だっけ?」と訳が分からなくなってくるのです。

 

 本作は言ってしまえば、デビット・クローネンバーグの「裸のランチ」とか、今敏の「パプリカ」が、子ども向けに、甘口にアレンジされたような映画と言えるでしょう。



 さて、ここまで読んだあなたはどう思ったでしょうか。

 きっと「で、そんな映画、誰に対してニーズがあるのか? ニッチすぎるのではないか?」と思われたことでしょう。まさにその通りで、この映画は誰に向けて作っているのか、サッパリよく分からないのです。

 裸のランチやパプリカのような映画が好きな人からすると、本作の若干難解な表現は「とは言っても、子供向けでまだまだヌルい」と感じる程度のものでしかありません。目新しい表現などでもないのです。

 そして、もちろん子ども向け映画としても、なにがしたいのかよく分かりません。ギャグは異様に大人向けで、なぜかインディージョーンズのパロディを始めたり、ブラックジョークを始めたり、子ども向け映画として明らかにおかしいのです。

 

 更に厄介なのが、だからといって本作「クオリティが低い映画」なのかというと、そうでもないのです。それなりには面白いのです。粗もありますし、クライマックス付近がいい加減だったりして、「ちょっとな」と言いたくなるところもありますが、貶すほどでもないのです。

 だから、つまらない映画でもないのです。

 しかし、誰かに向けて作っている映画でもないのです。

 あらすじや予告編を見て期待した観客を、悪い意味で裏切る出来なのも間違いないのです。

 

 そういう映画であり、つまりは、本作ほど悪い意味で感想に困る一作もないでしょう。

*1:主に、本ブログとかで↓

harutorai.hatenablog.com

映画感想:リメンバー・ミー


映画『リメンバー・ミー』日本版予告編

 恒例の手短な感想から

手堅い!面白い!…面白いんだけどもねぇ…

 といった感じでしょうか。

 

 イルミネーション・エンターテイメントのアニメーション作品に圧され気味で評価も売上も人気でありながらも、、子ども向けとして、最近、今一つ伸びないディズニーピクサー作品。ディズニー自体もその状況からの脱却を図りたいようで、近年の作品は、今までのディズニーイメージを覆すような作品が多く作られてきました。

 特に「ディズニーのパブリックイメージとは違う、エスニックな伝統文化を取り入れ、オールドディズニーを異なる視点から切り取っていこう」とするような作品が多く、本作もまたそのような試行錯誤の一作であることは間違いがないでしょう。

 

 リメンバー・ミー

 

 本作は音楽をテーマに作られているのですが、昔のディズニーほど音楽に対する深い尊敬を抱いていたアニメーション会社はないでしょう。これは音楽にイマジネーション豊かな映像を付け加えた「ファンタジア」は、もちろんのこと、ウォルト・ディズニーが作曲家に作らせた数々の名曲を見ても明らかなことです。

 そんな音楽をテーマにしてきた、ということからして、ディズニーの必死さと奮闘が伺えます。

 

 そんな本作の出来ですが、非常に手堅い出来であると言えるでしょう。

 音楽を伝統的に嫌悪している一家に生まれてしまった、音楽が好きで好きで仕方ない少年。彼が、家族と自分の夢の板挟みの中で葛藤し、実に思春期的な反抗などをしながら、音楽の出来る道を模索しようとする姿は、おそらく、同じような反抗期を経験したことある人たちならば、必ず感情移入できるものだろうと思います。

 南米に伝わる「死者の日」をモチーフとし、あくまで現実と地続きの世界での出来事にしていることも、本作の話の設定などによくマッチしており、現実と地続きであるからこそ、夢や現実を語ることに説得力が出ています。

 

 また、作中に出てくるラテン系音楽の面白さなども目を見張るものがありました。最近のジャズシーンで微妙にこの系統のラテン系音楽等をレアグルーヴとして、再評価している向きがありますが、それも納得のことでしょう。

 

 ただ、手堅い出来で面白い本作ですが、それ以上のものがない、と言ってしまうとそれは事実かもしれません。もちろん、映画としては面白いだけで十分な話であり、それ以上は贅沢な話です。

 それでも、本作はディズニーが大切にしてきた「音楽」をテーマにしているからこそ、もう少し「音楽」に対しての深い尊敬や、音楽への強い想像力が欲しかったのです。本作は、音楽が話の主軸になっていますが、そのわりに「音楽とはなんなのか」という部分を掘り下げることが出来たかと言われると極めて疑問があります。

 比較してしまうのは心苦しいのですが、同じ音楽をテーマとした近年のアニメーション映画としては、イルミネーション・エンターテイメントの「SING/シング」の方が遥かに音楽について深い尊敬と、そして、「音楽とはなんなのか」という問いへの深い掘り下げを描けていたのではないでしょうか。

 

 掘り下げ、と書いてしまうと難しいことを述べているように思えてしまうかもしれませんが、要はこの映画を見たあとで「あぁ、心底からいろんな音楽を自分も聞いてみたいっ。こんな音楽の世界を体験してみたい」と思えないのです。

 これは話自体が「音楽を大きくフィーチャーしていながら、実のところ、話の核心で言いたいことが『音楽と関係なくなってしまっている』」ことが原因なのでしょう。実際、映画のラスト、エピローグで音楽を奏でる主人公の姿は、少し違和感があります。

 この話の流れで、それまで音楽を許していなかった主人公の一家が、音楽を許容するようになるのも「それは話として、ちょっとご都合が過ぎる」ように思えますし……本作、近年のディズニー作品の中では、小粒感が強い作品となってしまったのではないでしょうか。

 

 そこだけが惜しい作品でした。

3月の見た映画

・壊れかけのオルゴール 

劇場版 こわれかけのオルゴール [Blu-ray]

劇場版 こわれかけのオルゴール [Blu-ray]

 

百日紅

 ・15時17分、パリ行き

 ・ガールズ&パンツァー 劇場版 

シェイプ・オブ・ウォーター


『シェイプ・オブ・ウォーター』日本版予告編

ちはやふる ―結び―


「ちはやふる -結び-」予告

・カイト/KITE

カイト/KITE(吹替版)
 

・ テイキング・チャンス

 

以上、8本を鑑賞。

 今月の、自宅鑑賞映画ラインナップは「ちょっと前に話題だったけど、なんか嫌な予感がして見なかった映画」を重点的に見ました。結果、あんまり良い収穫は無かったのです。予感は当たっていたようです。

 原恵一は相変わらず、キザな演出を入れて寒いことしてくるし、『ガルパンは言うほどいいものじゃないぞ』って感じだし、カイトは原作を汚したとかそれ以前のレベルの産業廃棄物……うーん。

映画感想:ちはやふる ―結び―


「ちはやふる -結び-」予告

 恒例の手短な感想から

驚嘆の一作

 といったところでしょうか。

 

 確かに「ちはやふる 上の句」は間違いなく、近年の実写化映画において珍しいほどにエンターテイメントとして、この上なく誰でも楽しめる内容になっており、素晴らしい映画であったことは間違いないのです。

 しかし、言っても邦画の悪い癖が抜けきれていなかったり、下の句になると若干、低調になっていたりもしたのです。

 面白いといっても「邦画としては面白い」というレベルの映画であったことも事実です。まだまだクオリティの詰められそうな映画シリーズでした。

 

 まさか、その「ちはやふる」がこんな頭抜けた傑作になってしまうとは……。

 

 一体、この映画シリーズになにが起こったのでしょうか。競技かるたの多彩な演出、あの手この手でクライマックスを盛り上げる一転集中した話の筋書き、効果的に使われるアニメーション……この映画は、なにもかもが、「上の句/下の句」の遥か上を行く出来で完成されています。

 ハッキリ言って、本作、現在同時期に上映されているディズニーピクサー映画と、真っ向から勝負しても構わないほどの出来です。「上の句/下の句」にあったキズは、ことごとく解消され、それどころか上出来な内容に修正が施され、カメラワークも、演技の付け方も、コメディシーンの入れどころと、そこからのシリアスに持っていく流れの上手さも、誉めどころにしかなっていないのです。

 

 ここまで映画の作り手たちが大きく成長を見せるとは、まったく予想もしていませんでした。

 

 本作は、とてつもなく素直な映画です。演出や脚本や演技の全てがストレートで、ひねくれていないのです。もちろん、ひねくれているから良い悪いという話ではないのですが、やはり、本作のようなカラッとした分かりやすい青春映画には、ストレートで素直な演出が似合います。

 昨今ブームになっている将棋報道の過熱ぶり、三月のライオンの演出、最近のラブコメ映画の演出、いろんな映画やアニメの表現をとにかく取り入れていこうという、作り手たちの姿勢は、まさに素直そのものです。

 おそらく、ここまで素直な演出は、何かとひねくれがちな、才能ある邦画の著名監督たちでは出来なかったことでしょう。

 本作をここまでの面白さに出来たのは、間違いなく作り手たちの努力と研鑽によるものだと言えます。

 そして、そんな素直にいろんな表現を取り入れ、この映画をとにかく面白いものにしようとした作り手の姿勢そのものが、本作のメインテーマと見事に噛み合っており、映画のテーマ自体の説得力にもなっているのです。

 

 

 ちはやふる原作ファンも、下の句だけならばあれですが、本作が「完結編」であるならば、大満足でしょう。鼻が高いでしょう。自分が好きな漫画がここまでの素晴らしい映画を産み出せたのだという事実は、とても心地が良いものでしょう。

 その感覚は間違っていないです。それほどの傑作が、本作です。

 

 唯一、ニコニコ動画の演出だけ、素直に取り入れすぎててどうなのか、と言われかねないものでしたが、自分からすれば、あの程度は愛嬌と考えればいいと思っています。

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