儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画レビュー:東京プレイボーイクラブ


映画『東京プレイボーイクラブ』予告編映像 - YouTube

 

 

 

 東京プレイボーイクラブとは、名の通りの繁華街にある風俗店。そこを経営する成吉のもとに、地方で働いていたもののトラブルを起こし、追い出され、居場所を無くした勝利がやってきます。成吉は、昔のよしみである勝利を歓迎し、一緒に居酒屋へ。

 一方その頃、東京プレイボーイクラブでボーイを務めていた貴弘は、自分の浮気相手に妊娠したことを告げられ、金に困ります。貴弘は、居酒屋に行ってしまっている成吉に、東京プレイボーイクラブの店番を頼まれ、店番をしていると……

 マーティン・スコセッシジョニー・トーなどが好きな人にとっては、なかなかグッと来るところの多い映画だったのではないでしょうか。また、大沢在昌あたりのハードボイルド小説が好きな人にとってもこの内容はたまらないでしょう。小道具といい、撮影ロケの場所といい、あの時代のハードボイルド小説のイメージにぴったり当てはまっていると思います。

 かつ、細かい設定は現代的にアレンジが加えられています。言葉遣いや、若者の現実的なようでちょっと現実が見えてない感じなど、今の時代だからこそあるものも、かなり的確に捉えられていると思います。

 この映画が一番特徴的なのは「話」です。とても曲がりくねった物語で、「この人が主人公」というような、一人明確な主人公を設定しているような物語ではありません。とにかく、話の流れに連れて、どんどんとその場の主役が変わっていく仕組みになっています。

 これも、人によっては批判の対象になるのかもしれません。が、しかし、僕はむしろ、このストーリーラインはだいぶ完成されたものであるように思います。主役が交代していくまでの話の繋げ方は、かなり論理的で鮮やかです。もちろん、完璧ではなく、一部の登場人物が途中から物語から消えてしまったりしていたりもしますが。

 また、この物語はところどころに間抜けな展開を入れるのが上手いです。「現実として本当にこういうことありそうだよな」という間抜けな展開を、持ってくるので、シリアスだというのに見ているコチラはなんとなく笑ってしまうところもあったりします。こういった「間抜けさ」をさらっと入れられるところも、ハードボイルド・ヤクザものの魅力です。

撮影もなかなか面白いところがありました。人物が道路を歩くときは、必ず、その人物を中心に、左右がシンメトリーに近くなるように撮影されていたりするところのこだわりは、映画好きとしてよく分かります。また、固定カメラ(フィックス)で長回し、というほどではないけど、ちょっと長めのシーンを撮ったりするところもなかなかいいです。そこから生まれるリアルな演技の感じ等が、映画としての説得力を増しているように思います。

 音楽も良かったです。特にこの映画は、音楽を入れるタイミングが上手いと思いました。こちらの予想を裏切りつつ、バンと、こちらの気分を一気に高揚させるような、絶妙なタイミングで音楽を入れられていると思います。

 一つ、文句をいうなら、主役陣の演技はもう誰もが文句なしなのですが、あの途中から出てくる三兄弟。末っ子の梅造を演じた三浦貴大さんは、申し分なく素晴らしいと思います。怒鳴り演技も、最後の演技もとても上手く、これにはまったく文句がないのです。が、長男、次男の演技のクオリティがちょっと…。特に次男の竹男を演じられた方、演技がマンガっぽすぎると思います。そこだけ気になってしまいました。

 ですが、全体的には素晴らしい映画です。

 この映画は端的に言えば「和製ハードボイルドの更新」を行ったのだと思います。それくらい、日本のハードボイルドにある要素を上手く抽出して、今の時代に溶け込ませています。

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