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儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:パリ猫ディノの夜


映画「パリ猫ディノの夜」予告編 - YouTube

 

 

 早速、感想を述べます。

 一見の価値がある素晴らしいフィルムでした。

 

 まずオープニングシークエンスで流れる〈Le JAZZ du Cambrioleur〉の、昔のおしゃれなノワールを連想させるような渋さとかっこよさのある音が、素晴らしいです。オープニングシークエンスで描かれている影絵のような絵と相まって僕としては、ここだけで十分に魅了されてしまいました。音楽はかなりよくできています。全体のアニメーションも素晴らしい。なによりもこの映画は空の色の変化が見事ですので、今度見るという人はそこに注目するとより楽しいのではないでしょうか。全体としては、どことなく懐かしいような、絵本の世界のような絵柄で、おしゃれな雰囲気に彩られています。最近のアニメの傾向には、だいぶ逆らっていて、決してリアリズムに徹したものではないのでそこの過剰な期待をしてはいけません。製作者の好きなように作られたパリの街並みは、ありとあらゆるところがモダンな絵画のようで、そういった面白さに満ち満ちている映画だと思います。

 実際、登場人物の心象が、それまでのリアリティラインを無視して、そのまま画面に現れてくるという、アニメであることを利用したマジックリアリズム的な映像表現がそこかしこに仕掛けられています。しかも、この映像のマジックは、最終的なオチにまで繋がってくる重要な表現として扱われています。ここからも、まったくリアリティというものを気にしていない、もっというとリアリティというものが気にならない作品になっていることは明白です。珍しい絵柄を使ったことによって、見ているとかなり不思議な感じがするフィルムになっていることは間違いがないです。

 話自体は意外にも、このようなおしゃれな雰囲気にもかかわらず、コメディ寄りです。個人的には、少しコメディをやりすぎているような気もしますが、それでも、犬のリュフュの天丼ギャグなどはカートゥーンアニメに通じるセンスがあってか、場内が爆笑していました。

 後半からはコメディの色がだんだんと減っていき、緊張感のあるアクションものに変わっていきます。手に汗握るような展開も多く、たいていの人はワクワクしながら見れることだろうと思います。特に後半は、暗闇での場面が素晴らしいと僕は思います。真っ黒な部屋の中で、移動する人たちの姿を、このアニメにしかできない方法で描き、見事にこっちをハラハラさせていきます。

 各々のキャラクターも非常に良く出来ています。特に、主人公であるゾエの失語症であるという設定が絶妙で、この子の設定が、この物語を面白さをかなり牽引しています。また、ゾエの失語症は、父親を殺害されたショックから起因しているものですが、それと同時に、母親であるジャンヌとの「決定的な気持ちの隔たり」を表してもいるように思います。これはこの映画を見た人ならば、納得してくれるはずです。

 感想の最後になりますが、なによりもこの映画は、最後に起きるマジックが素晴らしいです。あの映像は決してネタバレ無しで見て欲しいと思います。

 

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 さて、映画の感想はここまでですが、少し延長して、その他のことについて少し言及させていただきます。

 この映画の冊子、これでいいんですか。

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 パンフレットではないです。宣伝用のチラシを少し豪華にした程度のシロモノで、実際、無料でピカデリーに山積みされていました。パンフレットはないそうです。

 この映画に関する紙資料がこれだけしかないのは、少し問題だと思います。前述しましたが、この映画は音楽などが素晴らしいものです。テーマ曲などもそうですし、Le JAZZ du Cambrioleurもそうです。が、そういった情報さえ載ってないのはどうなんだろうと思います。おかげで、Le JAZZ du Cambrioleurという題名を探し当てるまでにものすごい苦労をする羽目になってしまいました。オープニングシークエンス、及びエンドロールで、テーマ曲と一緒に流れる唯一の曲の曲名が分からないって、少しどうだろうと思います。

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