映画感想:いぬやしき
恒例の手短な感想から
物足りなくもあるが、悪くもなく
といったところでしょうか。
まあ、次作の出来がこれだったことを鑑みると、「アイアムアヒーロー」はそこまで偶然で出来上がった作品でもなかったんだなぁと、納得出来たことがこの作品の最大の収穫かもしれません。
それくらいには、悪くない出来の映画です。欠点が多すぎて、とても手放しで褒められない出来なのも事実ですが。少なくとも、原作・アニメをそこまで知らない自分からすると、それなりに本作は楽しめました。
宣伝文句であった空中戦やアクションシーンも、なかなか素晴らしい出来で、アニメや漫画では描いたところで「大したアイディアじゃねーや、これ」と思えるような陳腐なアクションの絵面も、実写映画で、佐藤健と木梨憲武がやってるせいで、妙にセンスオブワンダーがあり、心惹かれるモノがありました。
これだけでも、この映画を見る価値はあるかなと思います。そういう意味では、アメコミ映画のアントマンにちょっと存在意義が近い映画かもしれません。普通の戦闘シーンなんだけれども、状況がおかしいので新鮮味があるという面白さです。
そこの魅力を十分に引き出せているだけでも、本作が及第点をなんとか越えたことは間違いないでしょう。映画にする意味はちゃんとあったわけですから。
ただ、とは言っても、邦画の予算範囲では一部のアクションには物足りない部分があるのも事実でしょう。また、そういった面を考慮しないとしても、人物ドラマがかなりスカスカであることは否めないです。
特に主人公である犬屋敷家の、ステロタイプとベタで塗り固めたような家族像は、共感しろと言われても無理でしょう。作り物のような描写が多くーーかつ、そのわりに妙なところでリアリティを出そうとしているアンバランスさが、ハリボテとしか言い様のない家族像を作り上げてしまっています。(この映画でギャグっぽい家族像にされても困る気はしますが)
途中、かなり唐突に物語が展開してしまうシーンもあり、ドラマ部分は「肝の部分さえ描ければどうでもいいや」という考えで作られていることは明白です。肝とは、前述したアクションシーンと及び「そのアクションシーンに至るまでの過程」のことです。
「なぜ主人公は、戦うに至ったのか」「なぜ悪役は、戦うに至ったのか」
明らかにこの映画のドラマ部分は、この二つを描ききることだけを前提につくられており、逆に言うとそういう映画の作り方を許容できる人でないと、本作を楽しむのは難しいと思われます。
自分としては、アクションシーンが楽しめましたし、こういった「肝ができてりゃ、細かいことはいいんだよ!」という作り方も嫌いではないので、普通に面白かったですが。