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儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:悪の法則


映画『悪の法則』予告編 - YouTube

 

 

 さっそく、感想を

かなりいい映画でした。

 

まあ、確かにとてつもなく悪趣味で、かつ、まったく救いようのない話であることは事実だと思います。*1しかし、僕からするとそこがむしろ素晴らしいと言わざるをえなかったです。リドリー・スコットの一連作からするとだいぶはみ出た内容であることは間違いないでしょう。代表作である「ブレードランナー」のイメージなんかで見た日には度肝を抜かれることは間違いないです。なにせ、脚本がコーマック・マッカーシーですから。

この映画は随所でリドリー・スコットという作家の”作家らしいところ=作家性”という枠の隙間から、どろどろと”コーマック・マッカーシーらしさ”が漏れています。「あー、リドリー・スコットだな」というよりは「うわー、コーマック・マッカーシーだよ…これ」と思う場面が多すぎです。

ほぼ映画の冒頭にある、キャメロン・ディアスハビエル・バルデムが開口一番にする会話の時点で、コーマック・マッカーシーリドリー・スコットを食い破ってボトボト垂れてくるさまが見て取れます。――抽象的な表現をしすぎました。具体的に言えば、リドリー・スコットが作り上げている画面や演出よりも、コーマック・マッカーシーが作り上げた”セリフ回し”の方が強烈過ぎて、リドリー・スコットの映画のはずなのに、コーマック・マッカーシーが監督したんじゃないかという気分になってしまうのです。

だからこそ、この映画はリドリー・スコットの良くない面が補われたように僕は思います。リドリー・スコットには、クライマックスがあんまり盛り上がらないという欠点があるのですが。*2今回の映画は、むしろ、クライマックスに行くに連れて盛り上がるポイントが、バンバン増えていって「サスペンス&観客の心をへし折る展開」の乱れ打ちとなっています。正直、僕はブラッド・ピットの(ネタバレのため伏せ字)で、「誰だ…?この中の誰が…?誰が来るんだ…?」とかなりハラハラしながら見ていました。

 

そして、この映画がなによりもいいのは、コーマック・マッカーシー的としか言いようがない渇いた絶望感です。コーマック・マッカーシー原作「血と暴力の国」の映画化である、コーエン兄弟の「ノーカントリー」を見てみると、わりと今回の映画が近しい内容であることに気づく人も多いかもしれません。

文学的な内容である、と取る人も多いかもしれません。事実として、この物語はかなり象徴的なエピソードがいくつか入っています。ネタバレにならない範囲で言うと、「トラックに積んである”第四の缶”がトラックごと売り渡されていく…」といった話は、寓話のように「ただの話ではなく、なにかを示唆している内容」であることは明らかです。そういった内容が苦手な人には合わないかもしれません。

が、しかし、僕はそういったものでも全然楽しめる人間ですので、全く問題なく――むしろ、悪趣味でとても怖い内容であると同時に、それが楽しめるからこそ、僕はこの映画が大好きです。

 

(※少し、ネタバレになる考察を入れるので、ここからちょっと行を空けます※)

 

 

 

 

 

ちょっと、僕がこの映画を見て思ったのは、この映画は「欲望」の映画である、ということです。わかり易い例なので、コーエン兄弟の「ノーカントリー」を挙げますが、コーエン兄弟で、ハビエル・バルデムの演じるシガーは、超自然的な「人間を越えた法則で動く人間」という設定がされていたと思います。この映画では、そのシガーに当たる人物は、明らかにキャメロン・ディアスが演じる”彼女”でした。「得体のしれない存在」と周りが評する彼女は、明らかに今作における”シガー”です。

が、どうも、彼女はシガーみたいに超自然的なものの象徴みたいな象徴性は持っていないように思えます。むしろ、彼女は協会で懺悔するふりをして神父を誘惑しようとしたり、やたら人間的でかつ、それでいて、なんだか「得体のしれない存在」として設定されているようです。

これを思った時に僕は『ひょっとすると、彼女は”「欲」というもの権化”なのではないか…?』と思うのです。欲の権化であるから、やたらと人間的な行動を取るし、でも、欲の権化であるからこそ、得体が知れないのではないかと。

実際、そのことを示唆するように、彼女は劇中で何度も「なにか食べたい?」と尋ねられるたびに「とてもお腹が減っているわ」と返しています。彼女は欲の塊であり、欲が満たされることは決してないから、彼女は常にお腹を空かしている、そう考えられます。そして、彼女は欲の権化であるからこそ、取り憑いた人たちを次々と「最悪の状況」に陥れていくのでしょう。

ゆえに「欲望」の映画だと思うのです。この映画の本当の主役は、”彼女”なのではないかと。

*1:とはいえ、世の中にはこれ以上に救いがない映画なんてゴマンとあるわけですし、その中には名作とされるものも多数ありますが

*2:ブレードランナー」はまさにその典型で、話自体はサスペンスを感じさせるような「追いかけ合い」なのに、なぜか、全然、画面上は盛り上がらないままで気づいたら終わってしまいます。テーマも、悪役のセリフも悪くないのに、なぜか

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