儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

1月に見た映画

・天使たちのビッチ・ナイト

・ 阿部定~最後の七日間~

・シュガーラッシュ:オンライン


ディズニーキャラ共演!『シュガー・ラッシュ:オンライン』日本版予告編

クリード:炎の復讐


『クリード2』予告編 (2019年)

がっこうぐらし!


映画『がっこうぐらし!』予告編(楽曲使用版)

・ワンピース ねじまき島の冒険

ワンピース ねじまき島の冒険
 

・ アントボーイ

アントボーイ(吹替版)

アントボーイ(吹替版)

 

 ・ビデオゲーム The Movie

ビデオゲーム The Movie(字幕版)
 

 

以上、8本になります。正月なので、ちょっとピンク映画も鑑賞しました。……どっちも映画としては糞でしたが。

あと、ビデオゲーム The Movieは問題児ですね。内容がゲームをひたすらに褒め称えて、いろんなゲーム映像を間に挟んで、大して詳細も追わないままざっと歴史を追うだけのもので、うーん…と。

ワンピースに関してはノーコメント。

映画感想:がっこうぐらし!


映画『がっこうぐらし!』予告編(楽曲使用版)

 恒例の手短な感想から

ちゃんと面白かったよ。

 といったところでしょうか。

 

 個人的には、こういう作品こそが、一番、自分のような映画ファンの見る力を試されているなぁとよく思います。こういう作品に文句をつけるのって、難しいようでいて、ものすごく簡単なことですから。単に自分の偏見を全開にして映画を観ればいいのです。

 そして、雑に「普通」とか「つまらなくはない」とか、なんか分かっているようなことを言ってしまえばいいだけなのです。

 

 だからこそ、キチンと観ている人と観ていない人の差が明確に現れてしまう映画でもあることでしょう。本作、がっこうぐらし!は残念ながら、完璧な出来の作品ではありません。色々とチャッチい部分があるのも事実でしょうし、色々と緩い作品でもあります。

 所詮、アイドル映画だから、と言いたくなってしまう面もありますし、また、全体的な作品のテーマがわりとベタで「え、突飛な設定のわりに、普通のテーマだな」と言いたくなる作品でもあります。わりと出落ちのアイディア一発で話を引っ張っている面もあります。

 

 ただ、だからといって、この作品を「面白くない映画」であるかのように評してしまうのは、非常に勿体ないと思います。この映画は、意外と細かいところで、ちゃんと映画を面白くするためのツボをおさえて作っています。

 例えば、本作、気づかない人ならば、映画を見終わっても気づかないくらいに、しれっと張ってある伏線の張り方、あるいは「何を観客に見せて何を観客に見せない」という取捨選択のしっかりしているカメラワークや、不穏さを醸し出すためにシーンを切り替えるホワイトアウトを若干長めにするなどのちょっとした編集上の工夫など、細かいテクニックがかなり的確に使用されているのです。

 この細かいテクニックによって、本作がかなり突飛な設定の、下手すれば観客の感情移入が離れてもおかしくない映画であるにも関わらず、ちゃんと観客の感情を離さない、面白い出来になっています。

 

 また、ベタなホラー演出やストーリー、登場人物たちの葛藤等々も、小出しで考えられた順番やタイミングなどで提示されていくために、ちゃんと観客が惹き付けられる内容になっています。

 前述した、作り手のテクニックとの相乗効果で、無意識に観客はこの映画が放っている世界観に引きずり込まれている人も多いことでしょう。

「いや、引きずり込まれてないから。あんな安っぽい死体とか見てもなんとも思わないって」と、恐らく、今この記事を読んでいるあなたは思っているかもしれません。しかし、はっきり言いますが、この映画終盤の、結構リアルに造形された焼死体の山を見ても平然と「安っぽい死体」とか言ってしまえている時点で、どう考えても、あなたはあの作品の世界観の中に引きずり込まれています。

 

 このように実は本作には侮りがたい部分もある上に、全体的な面白くするためのテクニックが巧みなこともあって、作品全体としては「結構、面白い作品」になっています。少なくとも「ちょっと今月見たい映画を見尽くしちゃったなぁ」という映画ファンに「じゃあ、これ見てよ」と本作を薦めるくらいには、見て損がない映画です。

 

 思わぬ、掘り出しものを見つけました。

映画感想:クリード 炎の宿敵


映画『クリード 炎の宿敵』特別映像

 恒例の手短な感想から

 本当に新人監督が撮ったの?!これ?!

 といったところでしょうか。

 

 本作、かなり面白かったです。

 ロッキーシリーズや、前作のクリードとは違い、かなり無名の新人監督に任せたということで、多少なりとも奇をてらったりする可能性もあるのではないか、と思っていましたが、その不安に反して、本作はかなり王道の手法と、王道の演出が用いられており、新人監督がここまで堂々とベタベタな演出を用いてくるかと感心する出来となっております。

 

 特に感心したのは、この映画の序盤です。

 

 え、そんなに素晴らしい序盤だったかな?感心するような出来だったかな?と映画を鑑賞された方は首を傾げたかもしれません。

 そうです。そんな出来ではありませんでした。しかし、だからこそ素晴らしいのです。

 この映画の序盤は、わざと素晴らしくないように作られています。観客に「なにが話の本筋で、なにが話の脇道なのか」をはっきりと理解させるために、この映画は序盤をあえてつまらないように描いているのです。そのあえて、つまらない序盤にする、テクニックと計算高さが実に素晴らしい作り手じゃないかと自分は感心したのです。

 

 あえて盛り下げるテクニックが遺憾なく発揮されたのは、序盤のクリードがチャンピオンとなるシーンです。このシーンで使われている話を盛り下げるための演出テクニックの数々は、教科書にしてもいいほどです。

 普通であれば、クリードがチャンピオンになった時点で――前作からのファンであれば、なおのこと――物凄く気分が高揚してしまうことだと思います。普通ならば、このシーンが映画のラストになってもおかしくないのです。

 しかし、今作では、そこは話の主軸ではありません。だから、そのシーンをあえて盛り下げる必要があるわけです。その後の「本当に主軸にしたい話」をちゃんと盛り上がる話にするために。

 

 そのために、この映画では巧みに「観客を拍子抜けさせるように仕組まれた」演出が、序盤で畳み掛けるように入れられています。例えば、「試合中に一切、クリードの視点からのカットを挟み込まない」や「重要な場面で、極めて論理的にあえて無音にする」など細かく細かく様々なテクニックで、観客の気持ちがクリードの試合から離れるように仕組んでいます。

 

 この時点で自分はかなり感心しました。

 そして、「ここまで計算して観客の気持ちを映画にのめり込まないようにコントロールできる作り手ならば、逆に、観客の気持ちを映画にのめり込ませるようにコントロールすることも可能なはずだ」と、確信していました。

 結果として、自分の確信は当たっていました。見事にこの映画は、脚本で演技で撮り方で演出で観客の気持ちを巧みにコントロールしていくのです。

 あるときには、パンチの打撃のテンポに合わせて、音楽を流し、気分を高揚させ、またあるときは、主人公の悲劇を観客と同じように画面から眺めている視点から写し、歯痒い思いをより倍増させてきたり――物語の悲喜のレールに、観客たちが見事に乗ってしまうのです。

 

 そして、終盤のこれでもかと、ベタベタなタイミングでベタベタに流される、あのメインテーマ……普通の映画なら、これをやってしまうと寒いことになってしまうのですが、ここまで観客の気持ちをコントロールしている映画だからこそ、本作ではこのベタベタな演出がむしろ様式美のような、素晴らしい王道演出に様変わりしています。

 

 ここまで計算高い演出を堂々とやってのけた、ティーブン・ケイプル・Jr監督、この手腕なら、クリード以外の映画でもかなりの手堅い技量を見せてくれるのではないでしょうか。今のところ、日本では、彼の過去作を見ることが出来ないのが少し残念です。

映画感想:シュガー・ラッシュ:オンライン


映画「シュガー・ラッシュ: オンライン」日本版予告 第2弾

 恒例の手短な感想から

なんだこの俺得映画!最高!

 といったところでしょうか。

 

 

 今まで散々にディズニー映画への批評を書き、なんなら、世の中のパブリックイメージにあるディズニー像は大きく間違っていると厳しく書いたことすらある自分ですが……いや、本当に、なんなんだ、この映画は!

 

 ほとんど、自分の為にあるような映画じゃないか!

 

 本当にここまで、自分が今までの映画を通じて、散々に言ってきたディズニー像をディズニー自身が体現してしまうとは驚きです。もちろん、自分のブログがディズニーに読まれていた、とは到底思っていないのです。

 言うなれば「あ、やっぱりディズニー社内でも、自分と同じようなことを考えている人がいたんだ。しかも、長編映画が一つ出来るほどに」という驚きがあったのです。

 

 この見事にパロディとブラックジョークにまみれ、場面場面で不気味ささえも兼ね備えている本作には、自分が求めていた“ディズニーらしさ”がよく溢れているように思います。

 自分の言うディズニーらしさとは、つまり、ディズニーの黒い一面と言っても良いでしょう。

 

 ダンボでピンクエレファントパレードを流し、子どもを酩酊させようとし、バンビで母親の死をショッキングに描き、子どもの怯えた涙を誘った、そんなディズニー映画にある――「ただの子供向け映画」では片付かないような――サイケデリックだったり、恐ろしかったり、シニカルな笑いを誘ってきたりする、そんな一面です。

 おそらく、世の中の大半の人にとっては意外に思われるかもしれませんが、本作のような、ブラックジョークなどをやってしまうのも、オールドなディズニー作品では、たまに見られるものでした。そして、本作のクライマックスやダークウェブに見られるような、不気味な敵キャラクターの描写なども、実は結構往年のディズニー映画にはよくある描写で、コアなディズニーファンの間では"恐ろしすぎて"語り草になっているシーンもあったります。

  中には、ブラックジョークのやりすぎで、ディズニー自身が半ば封印してしまったような状態の作品まであったりします。*1

 

 そういった、ディズニーの黒い一面がとてつもなく凝縮されて、表に出てきた作品――それが本作、シュガーラッシュ・オンラインなのでしょう。

 

 おかげで本作は、なんというか、良い意味でなんとも酷い作品なわけです。

 どれくらい酷いかと言うと、まったく脈絡もなく、唐突にかなり昔のTVシリーズ・怪鳥人バットマンのパロディが挿入されたりするレベルです。

 おそらく、日本の観客の大半は「そんなパロディどこにあったの?」と思われるかもしれませんが、結構、あからさまにあります。*2

 

 もちろん、それだけに飽き足らず、インターネットミームの文化を大量にパロディしまくり、皮肉を入れまくり、次々と「分かる人には分かる」ブラックジョークに変え、更にはデッドプールもびっくりするレベルの巨大なメタギャグまでぶち込んでしまっているわけです。

 本作、まるでグレムリン2のようです。

 おそらく「これが本当にディズニーで作られた映画なのか」と驚かれた方も多くいることでしょう。こういう映画は、イルミネーション・エンターテインメントや、ソニー・ピクチャーズの映画がやることではないのか、と。

 

 しかし、前述したように、本作はインターネットをパロディにし、唐突なバットマンオマージュが入り、スターウォーズのクローン兵たちが現れ、ディズニーらしくない暴力的なゲームを舞台とし、それに対し、ディズニープリンセスたちはちょっとしか出てこないような作品なのですが、それでも、とても本作はディズニーそのものをよく現しているのです。

 

 そして、間違いなく、ディズニーにしか出来ない映画でもあるのです。それは――邪推かもしれませんが――本作の内容が意図的か、偶然か、同時にジョン・ラセターを現しているようにも見えてしまうことからも明らかです。

 

 本作のラルフ……正直に言ってしまって、どこかディズニーの女性社員から、過度なスキンシップで嫌われていたジョン・ラセターの存在が重なるように作られていませんか?

 実際、ジョン・ラセターは、この作品の制作に前半までしか携わっていなかったとのことで、この映画はジョン・ラセター退社後に完成されたフィルムであることは、事実なわけです。

 ラルフはクライマックスで、成長し、ヴァネロペを手放すことを選びます。それは「セクハラの訴えを受けて、退任したジョン・ラセター」という男の写し絵であるのではないでしょうか。

 

 そういった点も含めて、非常に、本作は自分にとって、感銘と感慨が深い映画でして、まさにシュガー・ラッシュ:オンラインは、俺得映画と言って過言ではないでしょう。

*1:ある時期から急にDVDに収録されなくなった、「谷間のあらそい」なんかは、その典型例です。「谷間のあらそい」は、一言で言ってしまうと「リア充爆発しろ」という陰キャ・ディズニーの気持ちがこの上なく現れている作品で、最初からオチまでブラックジョークしか無いという、トンデモナイ作品だったりします

*2:そして、あからさまにあるわりに、なんでパロディされているのか、一切観客の誰にも分からないんですよね、これ。ディズニーと昔のバットマンTVシリーズ、ビタ一関係がありませんから。たぶん本当に作り手が好きだから入れただけなのでしょう。

12月に見た映画

機動戦士ガンダムNT


2018年11月公開の映画機動戦士ガンダムNTナラティブ予告編

ドラゴンボール超 ブロリー


映画「ドラゴンボール超 ブロリー」FINAL予告

高慢と偏見とゾンビ

高慢と偏見とゾンビ(吹替版)
 

・劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス

・ サーシャと魔法のワンダーランド

十三人の刺客 

十三人の刺客

十三人の刺客

 

グリンチ


『グリンチ』予告編 (2018年)

 

以上、七本でした。

いやー、旧作の「十三人の刺客」、全然面白くない出来でびっくりしてしまいました。なんでこれが名作ということになってるんでしょうね……。

2018年映画ランキング

 あけましておめでとうございます。

 だいぶ遅くなってしまいましたが、新年になりましたので、2018年に映画館で鑑賞した映画についてランキングを書いていきたいと思います。

 

 2018年に鑑賞した映画は、以下の通りになっております。

 ・カンフーヨガ

キングスマン:ゴールデンサークル

・劇場版 マジンガーZ/INFINITY

・羊の木

・ロープ/戦場の生命線

祈りの幕が下りる時

15時17分、パリ行き

シェイプ・オブ・ウォーター

ちはやふる-結び-

リメンバー・ミー

パシフィック・リム:アップライジング

レディ・プレイヤー1

孤狼の血

いぬやしき

犬ヶ島

万引き家族

・傀儡

リズと青い鳥

ニンジャバットマン

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー

未来のミライ

志乃ちゃんは自分の名前が言えない

ファントム・スレッド

ペンギン・ハイウェイ

寝ても覚めても

泣き虫しょったんの奇跡

プーと大人になった僕

ムタフカズ-MUTAFUKAZ-

若おかみは小学生!

クレイジー・リッチ!

・ヴェノム

ボヘミアン・ラプソディ

・銃

機動戦士ガンダムNT

ドラゴンボール超 ブロリー

グリンチ

以上、36本となっております。

 

 結構、仕事で忙しい一年だったのですが、振り返ると、わりとコンスタントに新作映画を鑑賞出来ていたようです。思い返すと、あの映画この映画――様々な映画の様々な場面に抱いた思い入れが蘇ってきます。

 

 さて、そんなわけで15位から1位まで、自分の2018年映画ランキングです。

 

15位:プーと大人になった僕

基本的には良作だと思うのですが、ラスト付近が雑なのが惜しいということで、15位です。

harutorai.hatenablog.com

14位:犬ヶ島

いかにもウェス・アンダーソンらしい一作で好きなのですが、 逆に言うとかなりアクも強い作品なので、ちょっと大手を振ってオススメも難しいかなと。

harutorai.hatenablog.com

13位:銃

非常に素晴らしい映画で、どうしようもないゴミだった原作を、見事な傑作に出来た一作という点は最高だと思います。 ただ、言ってもゴミな原作に引っ張られている箇所もあり、やはり、13位が限界ではないかと思います。

harutorai.hatenablog.com

12位:ロープ/戦場の生命線

 今までにない切り口の戦争映画であり、そして、現代的な戦争の有り様をよく描けている本作は、間違いなく鑑賞したほうが良い映画であることは間違いないです。harutorai.hatenablog.com

 11位:ニンジャバットマン

今までの映画より順位が高い理由は、女性キャラがすっごい自分の好みだったこと、そして無駄なスーパー戦隊オマージュに爆笑したからです。それ以上の理由は特にありません。

harutorai.hatenablog.com

 

以上、11位まででした。11位までは「ランキングの俎上には上げたいが、思い入れはそこまで無い映画」といった感じの映画群になっております。10位からは、個人的な思い入れもある、映画となっております。

 では、10位から。

 

 10位:シェイプ・オブ・ウォーター

 全体的に奇麗にまとめられており、ギレルモ・デル・トロ作品の中では間違いなく一番の傑作であることは、確実な本作。作品のクオリティのみを焦点に当てれば、オスカー像を貰ったのも納得の出来です。すっかり、最近の洋画で見なくなってしまった、上品な雰囲気が漂う"ヒューマンドラマ"であるところにも、非常に好感を持って、10位としました。

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 9位:ドラゴンボール超 ブロリー

  いきなりこの映画が9位に来てしまうのも驚きかもしれません。しかし、誰もが一回は鑑賞すれば納得するはずです。「ここまで見事な格闘映画もないものだ」と。山内重保演出オマージュで、悟空とブロリーが戦っている最中に、画面が突然割れて、異次元に入ってしまうところ等、実はアニメーション芸術的な方面でも面白い演出が多く入れられている点も深く評価したいです。

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 8位:ちはやふる-結び-

 なんとブロリーより上に来てしまうんです。本作、ちはやふるー結びーはそれくらいの傑作映画です。少なくとも、エンターテイメント方面において、現状の邦画において最高傑作レベルの技術と構成が投じられた映画といって過言ではありません。

 主演女優がちょっとムカツクだの、少女漫画原作だから気に入らないだの、そんな面倒くさくて、みみっちいことを言っている場合ではありません。これからすべてのエンターテイメント邦画は、この「ちはやふる」を目指すべきです。

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 7位:ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー

 こんなに清々しくスター・ウォーズらしい、冒険活劇然とし、スペースロマン然とし、SFドラマ然とした映画が、なぜこんなに話題になってないのでしょうか。冗談抜きで、そして煽りでも何でもなく、周囲が見てないからという理由だけで、本作を見に行かないんだとするならば、あまりにも勿体無いことをしていると思います。

 自分は本作を見て「初めてスターウォーズを見たときの――いえ、初めてSFを見たときの胸躍ったあの感じ」をハッキリと思い出しました。それくらいにロマンと夢とイマジネーションに溢れた冒険劇が本作でした。

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 6位:ファントム・スレッド

 10位のシェイプ・オブ・ウォーター評で「上品な雰囲気が漂う"ヒューマンドラマ"」と評しましたが、今年の洋画でその本道足り得ている作品と問われれば、間違いなく本作であると言えるでしょう。

 上品な雰囲気を保ったまま、かつ、ここまで歪な人間模様を、説得力持って描きあげてしまう、ポール・トーマス・アンダーソンの力量に恐ろしさすら覚えてしまいます。鑑賞後、思わず、映画館のエレベーターの中でまったく見知らぬ人と、この映画の内容について「すごい内容でしたね」「かなり面白かったけど、かなり変でしたね」と語り合ってしまいました。それほどの衝撃的な作品なのです。

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 5位:レディ・プレイヤー1

 ヒューマンドラマだのなんだの言っても、やはり、自分もオタクです。であるからこそ、やはり、本作について大きな評価をついついしたくなってしまうのです。特に本作の何が素晴らしいって、オタクの心たるものの核心を描くことが出来ていることです。

 ただ好きでゲームをやっている――というその行為自体に、なんらかの価値を見出している人たち、それがオタクであり、ナードだと思うのです。中身が、どんな最新技術に変わろうと、どんなに画質が上がろうと、ゲームの中身が変質しようと、そのパラダイムだけは変わることが無いと思うのです。

 イースターエッグを見つけ出した主人公が、ただ呆然と立ち尽くし、涙を見せ、それを見た敵役もまたじっと涙を流した、あの瞬間にオタクの本質があったのではないでしょうか。

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4位: 寝ても覚めても

 本当にあれだけ難解な出来であった原作を、余すところなく、映画として作り上げてしまった本作と、そして本作の作り手たちには、感謝と敬意しかないです。

 柴崎友香という作家の特殊性ゆえに「特殊すぎて文学以外では絶対に、この作家の魅力が分からない」と思い込んでいた自分の頑なな思考に、本作は見事に穴を穿ちました。

 映画には、まだまだ知らない魅力を引き出せる可能性が、塊のようにごそっと転がっており、ただ、それに誰も気づいていないだけなのだとそう思えるようになりました。本作に関しては、各演者の演技も見事なので、そこも合わせてじっくりと味わってほしいです。

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 3位:万引き家族

 やはり、本作は2018年の映画において、とても重要な一作であるような気がします。ここまで中身を見てないままに、色んな人が語ってしまった映画――ということも含めて非常に2018年の、ここ数年の日本の空気というものを上手く内包できた映画ではないかと思います。

 もちろん、単純に映画の中身のみをそのまま見た場合も、素晴らしい出来であることは言うまでもありません。仮初めの家族たちの行方を、最後まで不明にしてしまった――修復されるのかされないのかさえ、本当に不明なまま――終わらせてしまう本作には、そしてラストカットのあの子の寂しそうな姿には、言い知れない感情を誰もが抱くことだと思われます。

 亡くなられてしまった樹木希林の「あ、これ、樹木希林もうすぐ死ぬんじゃないか?」と思わせてしまうような姿を、バッチリ映してしまっていることも含めて、なんとも映像にする意味があった、映画めいた映画ではないでしょうか。

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 2位:リズと青い鳥

 やはり、自分の中で音楽というものに対する思い入れ、それに対する哲学が深くあるんだな、ということを本作で実感せざるを得ません。自分はどうしても、素晴らしい音楽映画をトップレベルに置いてしまうのです。自分が音楽教師の親から生まれ、音楽家を目指していたというその生い立ちゆえに仕方ないことです。

 そして、本作は間違いなく、音楽の真実の姿を描き出した一作であることは間違いないです。ただの百合をテーマにした薄っぺらいアニメ映画ではないのです。音楽という――人類がひょっとしたら言葉よりも、文字よりも早く獲得したかもしれない――コミュニケーションツールにまつわる功罪を、これでもかと見せつけてしまっているのが本作なのです。

 そして、人と人の間にある、共依存的とも言える関係性の尊さと、その関係性にある残酷な一面の2つをじっくりと見つめている本作は、ヒューマンドラマとしても、間違いなくよく出来ているのです。

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 1位:泣き虫しょったんの奇跡

 さて、衝撃の1位だと思いますが、本当に、本作が自分にとっては2018年の1位です。泣き虫しょったんの奇跡は、その題に似つかわしくないほどに、夢を追う若者が夢破れていく人生を克明に描いております。

 しかも、その上で再び様々な人達の夢も一緒に背負いながら、夢に立ち向かっていく一人の男の人生を描いた作品でもあり、中身は本当にロッキーのような骨太映画となっております。

 夢を目指したことがあるものならば、誰もが一度は経験したであろう場面を、釣瓶撃ちしてくる上に、夢が終わってしまった瞬間の、先が見えなくなってしまったあの感じを徹底的に描こうとしてくる本作には、どうしても同じく夢破れた人生を歩むものとして共感せざるを得ないのです。

 そして、その上で、本作は将棋というものを鑑賞してしまう、将棋ファンの気持ちも的確に描いています。やはり、他のジャンルと同じく、将棋ファンもまた何かに夢破れた者たちであるからこそ、様々な期待を背負って、負けられない大一番に向かっていく棋士の姿を応援しているのです。

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 総評:

 2018年の総評ですが、「え、邦画が思った以上に面白いんだけど!」といったところでしょうか。本当に邦画の復調ぶりが目覚ましくて、テンペスト3Dの駄作ぶりに絶望した、7年前の自分に教えてあげたいほどです。

 このブログでも、例年のように「邦画が復調傾向」と唱えてきましたが、特に今年は爆発した年だったなと言えます。特に自分はヒューマンドラマ映画を重視する傾向があり、最近の邦画は、このヒューマンドラマに強い映画が多いので、洋画よりもついつい邦画の方に手が伸びてしまいます。

 洋画については…………ノーコメントです。名作童話を汚すようなリメイク映画と、ヒーロー映画、そして、ディズニーしか目立たない状況ではちょっと語るのが難しいです。

映画感想:グリンチ


『グリンチ』予告編 (2018年)

 恒例の手短な感想から

そうそう!これが見たかったグリンチ……じゃないわ!

 といったところでしょうか。

 

 少なくとも、だいぶ前にあった、ジム・キャリーがよく分からない仮装してだいぶ無理があるグリンチを演じていたあの「グリンチ」よりかは、本作はマシな出来であるとは断言できます。

 むしろ、物語の始まり方や、おなじみのグリンチのメインテーマ――を、一部サンプリングしたと思しき、メインテーマ楽曲とともにどんと出てくるグリンチの絵面などには「おぉ! これは、ひょっとして、ちゃんとしたグリンチになっているんじゃないのか?!」と胸を踊らされるところもあるのです。

 

 全体的に、アメリカで有名な、チャック・ジョーンズ監督作のグリンチ映像化作品「いじわるグリンチのクリスマス」も、かなり念頭に入れて作ったと思われるオマージュシーンも多数織り込まれており、そういった「みんなが思うグリンチらしい絵面」の再現に関しては、本作はほぼ完璧と言ってもいい出来でしょう。

 正直、自分も前半までは手を叩いて納得していたのです。「これは、なかなかに、グリンチだ」と。

 元々のグリンチからすると、だいぶ愛嬌がありすぎるキャラクターデザインになっていること、そして、チャック・ジョーンズ作を見た人なら誰もが入れてほしかったであろう「サイケデリックで、極悪なグリンチの”オリジナル笑顔”」が入っていないことを除けば、大きな不満点もなかったのです。

 

 しかし――。

 

 

 しかし、と書き綴ったということは、だいたいの人が想像つくかと思われますが、後半になると、これがだいぶ調子が変わってしまうのです。

 

 後半はもう誰が見ても――原作を知らない人が見ても――「なんなんだ、こいつ?!」と思ったことでしょう。

 あのやたらに太ったトナカイ。グリンチ界のジャー・ジャー・ビンクスと言っても過言ではない、予告編の時点では、あんな意味の分からない話の関わり方をしていたとは、到底想像がつかない、アイツ。

 まあ、映画を見た誰でも「お前、なんのために出てきたんだよ!」と驚愕したことだと思われます。安心してください。原作をそれなりに愛好している方たちは、驚いて2メートル飛び上がっているあなたたちの、はるか上を飛ぶレベルで驚愕していましたから。

 

 原作にこんなやつ居なかったぞ、と。

 

 しかも、それ以外のキャラクターは全て原作に登場している通り、なんなら、街の人達の様子までチャック・ジョーンズ版と原作の中間みたいなデザインにちゃんとしているというのに、なぜか、この訳わからないオジリナルキャラクターが「ちょっと出てきて、去っていく」という意味不明な展開に開いた口が塞がらないのです。

 

 そして、なにより自分が苛ついてしまったのは、よく分からないお説教的な演説的な長台詞シーンが、間を開けて三回も出てくる、この映画の構成自体です。

 一体、この映画の作り手は、なにを考えているのかと。

「クリスマスはかくあるものである」的なことを言いたげなシーンを、例えば、一つ入れるだけでも、この作品にとっては十分に余計な話でしょう。そもそも、原作のグリンチ自体、そんなお説教シーンなど一つもなく、その上で「クリスマスはかくあるものである」という話がちゃんと出来ているのですから。

 

 そして、そもそも、この映画が言いたい「クリスマス」というものが、なんだかズレているような気がしてなりません。グリンチにヘンテコな反省タイムを入れ、なんだか、長ったらしい懺悔の後で、長ったらしく言い訳しながら彼を受け入れる――いやいや、そこらへんで変に懺悔しなくても、変に言い訳しなくても「クリスマスなんだから、良いんだよ」で済むのが、本当のクリスマスじゃないんですか、と。

 

 いろいろと煮え切らない映画が、本作、「グリンチ」でした。

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