儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

12月に見た映画

機動戦士ガンダムNT


2018年11月公開の映画機動戦士ガンダムNTナラティブ予告編

ドラゴンボール超 ブロリー


映画「ドラゴンボール超 ブロリー」FINAL予告

高慢と偏見とゾンビ

高慢と偏見とゾンビ(吹替版)
 

・劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス

・ サーシャと魔法のワンダーランド

十三人の刺客 

十三人の刺客

十三人の刺客

 

グリンチ


『グリンチ』予告編 (2018年)

 

以上、七本でした。

いやー、旧作の「十三人の刺客」、全然面白くない出来でびっくりしてしまいました。なんでこれが名作ということになってるんでしょうね……。

2018年映画ランキング

 あけましておめでとうございます。

 だいぶ遅くなってしまいましたが、新年になりましたので、2018年に映画館で鑑賞した映画についてランキングを書いていきたいと思います。

 

 2018年に鑑賞した映画は、以下の通りになっております。

 ・カンフーヨガ

キングスマン:ゴールデンサークル

・劇場版 マジンガーZ/INFINITY

・羊の木

・ロープ/戦場の生命線

祈りの幕が下りる時

15時17分、パリ行き

シェイプ・オブ・ウォーター

ちはやふる-結び-

リメンバー・ミー

パシフィック・リム:アップライジング

レディ・プレイヤー1

孤狼の血

いぬやしき

犬ヶ島

万引き家族

・傀儡

リズと青い鳥

ニンジャバットマン

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー

未来のミライ

志乃ちゃんは自分の名前が言えない

ファントム・スレッド

ペンギン・ハイウェイ

寝ても覚めても

泣き虫しょったんの奇跡

プーと大人になった僕

ムタフカズ-MUTAFUKAZ-

若おかみは小学生!

クレイジー・リッチ!

・ヴェノム

ボヘミアン・ラプソディ

・銃

機動戦士ガンダムNT

ドラゴンボール超 ブロリー

グリンチ

以上、36本となっております。

 

 結構、仕事で忙しい一年だったのですが、振り返ると、わりとコンスタントに新作映画を鑑賞出来ていたようです。思い返すと、あの映画この映画――様々な映画の様々な場面に抱いた思い入れが蘇ってきます。

 

 さて、そんなわけで15位から1位まで、自分の2018年映画ランキングです。

 

15位:プーと大人になった僕

基本的には良作だと思うのですが、ラスト付近が雑なのが惜しいということで、15位です。

harutorai.hatenablog.com

14位:犬ヶ島

いかにもウェス・アンダーソンらしい一作で好きなのですが、 逆に言うとかなりアクも強い作品なので、ちょっと大手を振ってオススメも難しいかなと。

harutorai.hatenablog.com

13位:銃

非常に素晴らしい映画で、どうしようもないゴミだった原作を、見事な傑作に出来た一作という点は最高だと思います。 ただ、言ってもゴミな原作に引っ張られている箇所もあり、やはり、13位が限界ではないかと思います。

harutorai.hatenablog.com

12位:ロープ/戦場の生命線

 今までにない切り口の戦争映画であり、そして、現代的な戦争の有り様をよく描けている本作は、間違いなく鑑賞したほうが良い映画であることは間違いないです。harutorai.hatenablog.com

 11位:ニンジャバットマン

今までの映画より順位が高い理由は、女性キャラがすっごい自分の好みだったこと、そして無駄なスーパー戦隊オマージュに爆笑したからです。それ以上の理由は特にありません。

harutorai.hatenablog.com

 

以上、11位まででした。11位までは「ランキングの俎上には上げたいが、思い入れはそこまで無い映画」といった感じの映画群になっております。10位からは、個人的な思い入れもある、映画となっております。

 では、10位から。

 

 10位:シェイプ・オブ・ウォーター

 全体的に奇麗にまとめられており、ギレルモ・デル・トロ作品の中では間違いなく一番の傑作であることは、確実な本作。作品のクオリティのみを焦点に当てれば、オスカー像を貰ったのも納得の出来です。すっかり、最近の洋画で見なくなってしまった、上品な雰囲気が漂う"ヒューマンドラマ"であるところにも、非常に好感を持って、10位としました。

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 9位:ドラゴンボール超 ブロリー

  いきなりこの映画が9位に来てしまうのも驚きかもしれません。しかし、誰もが一回は鑑賞すれば納得するはずです。「ここまで見事な格闘映画もないものだ」と。山内重保演出オマージュで、悟空とブロリーが戦っている最中に、画面が突然割れて、異次元に入ってしまうところ等、実はアニメーション芸術的な方面でも面白い演出が多く入れられている点も深く評価したいです。

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 8位:ちはやふる-結び-

 なんとブロリーより上に来てしまうんです。本作、ちはやふるー結びーはそれくらいの傑作映画です。少なくとも、エンターテイメント方面において、現状の邦画において最高傑作レベルの技術と構成が投じられた映画といって過言ではありません。

 主演女優がちょっとムカツクだの、少女漫画原作だから気に入らないだの、そんな面倒くさくて、みみっちいことを言っている場合ではありません。これからすべてのエンターテイメント邦画は、この「ちはやふる」を目指すべきです。

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 7位:ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー

 こんなに清々しくスター・ウォーズらしい、冒険活劇然とし、スペースロマン然とし、SFドラマ然とした映画が、なぜこんなに話題になってないのでしょうか。冗談抜きで、そして煽りでも何でもなく、周囲が見てないからという理由だけで、本作を見に行かないんだとするならば、あまりにも勿体無いことをしていると思います。

 自分は本作を見て「初めてスターウォーズを見たときの――いえ、初めてSFを見たときの胸躍ったあの感じ」をハッキリと思い出しました。それくらいにロマンと夢とイマジネーションに溢れた冒険劇が本作でした。

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 6位:ファントム・スレッド

 10位のシェイプ・オブ・ウォーター評で「上品な雰囲気が漂う"ヒューマンドラマ"」と評しましたが、今年の洋画でその本道足り得ている作品と問われれば、間違いなく本作であると言えるでしょう。

 上品な雰囲気を保ったまま、かつ、ここまで歪な人間模様を、説得力持って描きあげてしまう、ポール・トーマス・アンダーソンの力量に恐ろしさすら覚えてしまいます。鑑賞後、思わず、映画館のエレベーターの中でまったく見知らぬ人と、この映画の内容について「すごい内容でしたね」「かなり面白かったけど、かなり変でしたね」と語り合ってしまいました。それほどの衝撃的な作品なのです。

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 5位:レディ・プレイヤー1

 ヒューマンドラマだのなんだの言っても、やはり、自分もオタクです。であるからこそ、やはり、本作について大きな評価をついついしたくなってしまうのです。特に本作の何が素晴らしいって、オタクの心たるものの核心を描くことが出来ていることです。

 ただ好きでゲームをやっている――というその行為自体に、なんらかの価値を見出している人たち、それがオタクであり、ナードだと思うのです。中身が、どんな最新技術に変わろうと、どんなに画質が上がろうと、ゲームの中身が変質しようと、そのパラダイムだけは変わることが無いと思うのです。

 イースターエッグを見つけ出した主人公が、ただ呆然と立ち尽くし、涙を見せ、それを見た敵役もまたじっと涙を流した、あの瞬間にオタクの本質があったのではないでしょうか。

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4位: 寝ても覚めても

 本当にあれだけ難解な出来であった原作を、余すところなく、映画として作り上げてしまった本作と、そして本作の作り手たちには、感謝と敬意しかないです。

 柴崎友香という作家の特殊性ゆえに「特殊すぎて文学以外では絶対に、この作家の魅力が分からない」と思い込んでいた自分の頑なな思考に、本作は見事に穴を穿ちました。

 映画には、まだまだ知らない魅力を引き出せる可能性が、塊のようにごそっと転がっており、ただ、それに誰も気づいていないだけなのだとそう思えるようになりました。本作に関しては、各演者の演技も見事なので、そこも合わせてじっくりと味わってほしいです。

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 3位:万引き家族

 やはり、本作は2018年の映画において、とても重要な一作であるような気がします。ここまで中身を見てないままに、色んな人が語ってしまった映画――ということも含めて非常に2018年の、ここ数年の日本の空気というものを上手く内包できた映画ではないかと思います。

 もちろん、単純に映画の中身のみをそのまま見た場合も、素晴らしい出来であることは言うまでもありません。仮初めの家族たちの行方を、最後まで不明にしてしまった――修復されるのかされないのかさえ、本当に不明なまま――終わらせてしまう本作には、そしてラストカットのあの子の寂しそうな姿には、言い知れない感情を誰もが抱くことだと思われます。

 亡くなられてしまった樹木希林の「あ、これ、樹木希林もうすぐ死ぬんじゃないか?」と思わせてしまうような姿を、バッチリ映してしまっていることも含めて、なんとも映像にする意味があった、映画めいた映画ではないでしょうか。

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 2位:リズと青い鳥

 やはり、自分の中で音楽というものに対する思い入れ、それに対する哲学が深くあるんだな、ということを本作で実感せざるを得ません。自分はどうしても、素晴らしい音楽映画をトップレベルに置いてしまうのです。自分が音楽教師の親から生まれ、音楽家を目指していたというその生い立ちゆえに仕方ないことです。

 そして、本作は間違いなく、音楽の真実の姿を描き出した一作であることは間違いないです。ただの百合をテーマにした薄っぺらいアニメ映画ではないのです。音楽という――人類がひょっとしたら言葉よりも、文字よりも早く獲得したかもしれない――コミュニケーションツールにまつわる功罪を、これでもかと見せつけてしまっているのが本作なのです。

 そして、人と人の間にある、共依存的とも言える関係性の尊さと、その関係性にある残酷な一面の2つをじっくりと見つめている本作は、ヒューマンドラマとしても、間違いなくよく出来ているのです。

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 1位:泣き虫しょったんの奇跡

 さて、衝撃の1位だと思いますが、本当に、本作が自分にとっては2018年の1位です。泣き虫しょったんの奇跡は、その題に似つかわしくないほどに、夢を追う若者が夢破れていく人生を克明に描いております。

 しかも、その上で再び様々な人達の夢も一緒に背負いながら、夢に立ち向かっていく一人の男の人生を描いた作品でもあり、中身は本当にロッキーのような骨太映画となっております。

 夢を目指したことがあるものならば、誰もが一度は経験したであろう場面を、釣瓶撃ちしてくる上に、夢が終わってしまった瞬間の、先が見えなくなってしまったあの感じを徹底的に描こうとしてくる本作には、どうしても同じく夢破れた人生を歩むものとして共感せざるを得ないのです。

 そして、その上で、本作は将棋というものを鑑賞してしまう、将棋ファンの気持ちも的確に描いています。やはり、他のジャンルと同じく、将棋ファンもまた何かに夢破れた者たちであるからこそ、様々な期待を背負って、負けられない大一番に向かっていく棋士の姿を応援しているのです。

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 総評:

 2018年の総評ですが、「え、邦画が思った以上に面白いんだけど!」といったところでしょうか。本当に邦画の復調ぶりが目覚ましくて、テンペスト3Dの駄作ぶりに絶望した、7年前の自分に教えてあげたいほどです。

 このブログでも、例年のように「邦画が復調傾向」と唱えてきましたが、特に今年は爆発した年だったなと言えます。特に自分はヒューマンドラマ映画を重視する傾向があり、最近の邦画は、このヒューマンドラマに強い映画が多いので、洋画よりもついつい邦画の方に手が伸びてしまいます。

 洋画については…………ノーコメントです。名作童話を汚すようなリメイク映画と、ヒーロー映画、そして、ディズニーしか目立たない状況ではちょっと語るのが難しいです。

映画感想:グリンチ


『グリンチ』予告編 (2018年)

 恒例の手短な感想から

そうそう!これが見たかったグリンチ……じゃないわ!

 といったところでしょうか。

 

 少なくとも、だいぶ前にあった、ジム・キャリーがよく分からない仮装してだいぶ無理があるグリンチを演じていたあの「グリンチ」よりかは、本作はマシな出来であるとは断言できます。

 むしろ、物語の始まり方や、おなじみのグリンチのメインテーマ――を、一部サンプリングしたと思しき、メインテーマ楽曲とともにどんと出てくるグリンチの絵面などには「おぉ! これは、ひょっとして、ちゃんとしたグリンチになっているんじゃないのか?!」と胸を踊らされるところもあるのです。

 

 全体的に、アメリカで有名な、チャック・ジョーンズ監督作のグリンチ映像化作品「いじわるグリンチのクリスマス」も、かなり念頭に入れて作ったと思われるオマージュシーンも多数織り込まれており、そういった「みんなが思うグリンチらしい絵面」の再現に関しては、本作はほぼ完璧と言ってもいい出来でしょう。

 正直、自分も前半までは手を叩いて納得していたのです。「これは、なかなかに、グリンチだ」と。

 元々のグリンチからすると、だいぶ愛嬌がありすぎるキャラクターデザインになっていること、そして、チャック・ジョーンズ作を見た人なら誰もが入れてほしかったであろう「サイケデリックで、極悪なグリンチの”オリジナル笑顔”」が入っていないことを除けば、大きな不満点もなかったのです。

 

 しかし――。

 

 

 しかし、と書き綴ったということは、だいたいの人が想像つくかと思われますが、後半になると、これがだいぶ調子が変わってしまうのです。

 

 後半はもう誰が見ても――原作を知らない人が見ても――「なんなんだ、こいつ?!」と思ったことでしょう。

 あのやたらに太ったトナカイ。グリンチ界のジャー・ジャー・ビンクスと言っても過言ではない、予告編の時点では、あんな意味の分からない話の関わり方をしていたとは、到底想像がつかない、アイツ。

 まあ、映画を見た誰でも「お前、なんのために出てきたんだよ!」と驚愕したことだと思われます。安心してください。原作をそれなりに愛好している方たちは、驚いて2メートル飛び上がっているあなたたちの、はるか上を飛ぶレベルで驚愕していましたから。

 

 原作にこんなやつ居なかったぞ、と。

 

 しかも、それ以外のキャラクターは全て原作に登場している通り、なんなら、街の人達の様子までチャック・ジョーンズ版と原作の中間みたいなデザインにちゃんとしているというのに、なぜか、この訳わからないオジリナルキャラクターが「ちょっと出てきて、去っていく」という意味不明な展開に開いた口が塞がらないのです。

 

 そして、なにより自分が苛ついてしまったのは、よく分からないお説教的な演説的な長台詞シーンが、間を開けて三回も出てくる、この映画の構成自体です。

 一体、この映画の作り手は、なにを考えているのかと。

「クリスマスはかくあるものである」的なことを言いたげなシーンを、例えば、一つ入れるだけでも、この作品にとっては十分に余計な話でしょう。そもそも、原作のグリンチ自体、そんなお説教シーンなど一つもなく、その上で「クリスマスはかくあるものである」という話がちゃんと出来ているのですから。

 

 そして、そもそも、この映画が言いたい「クリスマス」というものが、なんだかズレているような気がしてなりません。グリンチにヘンテコな反省タイムを入れ、なんだか、長ったらしい懺悔の後で、長ったらしく言い訳しながら彼を受け入れる――いやいや、そこらへんで変に懺悔しなくても、変に言い訳しなくても「クリスマスなんだから、良いんだよ」で済むのが、本当のクリスマスじゃないんですか、と。

 

 いろいろと煮え切らない映画が、本作、「グリンチ」でした。

映画感想:ドラゴンボール超 ブロリー


映画「ドラゴンボール超 ブロリー」FINAL予告

 恒例の手短な感想から

最高! これを待っていたんだ!

 と言ったところでしょうか。

 

 「神と神」とか「復活のF」とか、あそこらへんの駄作は完全に忘れた状態で、ぜひ見てください!

 いきなり、上記のような書き出しから始まってしまいましたが、本当に本作に関してはその状態で見ていただきたいと思います。本作、「ドラゴンボール超 ブロリー」を鑑賞するにあたって、過去作をちょっと見てみようかなとか、予習しなきゃいけないかなとか、そういう心がけは一切いりません。

 本作、明らかに近年のドラゴンボール映画シリーズとは、根底から別物になっております。なので、「神と神」「復活のF」を鑑賞する必要性は一切ありません。というか、絶対、それらを見ないまま見たほうが本作は楽しいです。

 それくらい、本作は冗談抜きで、かなり完成度の高い逸品となっています。

 

 自分もうんざりするほど失望させられてきた、近年のドラゴンボール映画シリーズでしたが、今作は往年の素晴らしいドラゴンボール映画シリーズに遜色することがない――むしろ、匹敵どころか超えている可能性すらありえる――作品と言っていいでしょう。

 作画は文句なしに完成度が高く、戦闘シーンが今までのドラゴンボールと比べてもハイスピードかつ圧倒的な迫力を持っているのは、もちろんのこと、わざわざ往年のドラゴンボールシリーズっぽくするために、キャラクターの線をあえて荒々しく描くなどの工夫まで見られます。

 そして、トゥーンシェードのCGアニメも、見事に使いこなしており、普通の線画アニメーションで描かれたシーンと、トゥーンシェードアニメーションが違和感なく混じり合っているのは、驚嘆に値します。アークシステムワークスのゲーム並に、トゥーンシェードが線画と区別のつかない出来になっています。

 

 音楽も試みとしては面白いものだと思います。かなり奇をてらったものとなっていますが(若干、仮面ライダーオーズっぽいような?)むしろ、自分からすると、強引にでも観客の気分を盛り上げようとする、作り手の姿勢に結構好感を持ちました。本作の異常にハイテンションなノリの中ならば、そこまで大きな違和感もないように思いますし。

 

 そして、本作の筋書きもなかなか素晴らしいです。特に本作の序盤は、下手な有名監督のアニメ映画よりも遥かに上手いと言っていいでしょう。展開や、描かれ方からして、マン・オブ・スティールを意識していると思わしき構成となっていましたが、はっきり言って、マン・オブ・スティールの100倍は上手い序盤の描き方です。

 各登場人物の設定等の情報を、上手に話の中に織り込んでおり、過不足なくちゃんと全員の基本的な情報を、一見さんでも分かるレベルで提示できているのです。それも、ほんの僅かな尺の間に。

 この構成力は衝撃的と言ってもいいです。

 

 そして、登場人物たちのコミカルなやり取りなどが挟まれつつも、ひとたび戦闘を始めたら、ほぼほぼ終わりまでノンストップで戦闘シーンが続いていくのです。このコミカルさと戦闘シーンの激しい落差――これこそ、まさにドラゴンボールらしい筋書きと言えるでしょう。

 また、過去のブロリー三部作などを手がけた、山内重保監督が得意としていた演出方法や、独特のカット割り、レイアウト、特殊効果なども本作のあちこちに忍ばされており、こう見えて、実は過去のブロリーへのリスペクトも、かなりきっちりやっている作品でもあったりします。

 

 若干、クライマックス付近のフュージョンネタでグダグダになりかけていたところもありましたが、逆に言うと、あそこの部分くらいしか欠点がない筋書きだと言えます。

 もちろん、自分の好みからすると、若干本作の話は軽い内容に落ち着いてしまった気もして残念に思う部分もあるのですが*1……ただ、これは本当に"好み"のレベルの話です。

 少なくとも「神と神」「復活のF」などのように好み云々以前に酷いという話ではないのです。

 なんなら、本作がドラゴンボール映画で一番好きだという人が居てもおかしくはないでしょう。それくらいに隙がなく、よく出来ています。

 

 いやぁ、あのつまらない前二作から、本当にここまで面白くなっているとは、驚きです。

*1:ちなみに、自分は「危険なふたり 超戦士はねむらない」という、ブロリーが二回目に登場するドラゴンボール映画が、かなり好きです。この作品は、ドラゴンボール映画シリーズの中でもトップを争うレベルで傑作なので、一回、鑑賞してみることをオススメします。

映画感想:機動戦士ガンダムNT


2018年11月公開の映画機動戦士ガンダムNTナラティブ予告編

 恒例の手短な感想から

……まあ、これで良いんじゃね?

 といったところでしょうか。

 

 巷で一部の人が言うほどの傑作でもなく、かといって一部の人が言うほど駄作でもない、というのが本作に対しては一番妥当な評価なのではないでしょうか。

 決して、つまらない作品というわけではなく、それなりに観客の興味を引き立てるような、思わせぶりな台詞や設定、人間関係がちゃんと序盤から描かれ続け、また(少なくとも、本作品内の筋書き単体に限って言えば)大きな破綻もないわけです。

 

 なおかつ、戦闘シーンの作画などは目を見張るものがありますし、なにより、本作、音楽がなかなかに輝いた見事な出来映えではないでしょうか。物語の要所要所を音楽の素晴らしさがきっちりと盛り上げてくれているので、観客の高揚感や感情を引き出す、エンターテイメントとしては十分に良作といえるでしょう。

 

 肝心のガンダム部分にしても、やり過ぎだろうと思う箇所はあるものの、過去の様々なガンダム作品をオマージュしたのだなぁと思わしきシーンが、いくつも挿入されており、そこまでガンダムシリーズの中で極端にはみ出た作品でもないと思われます。

 少なくとも、ガンダムOOとか、あそこら辺のトンデモぶりと比べれば、十分にガンダムシリーズ内におさまっている内容だと言えます。

 宇宙世紀ものとして見ても、そこまではみ出しているようにも思えません。

 *1

 

 しかし、とはいえ、ところどころで出てくる、なんだか言ってることが中二病臭い、主人公たちの台詞回しの数々や、恐らく作り手があまり理解してないままいい加減に入れたと思われる、統計学八卦がうんたらのよく分からない解説や、クラシックを鼻で歌いながら出てくる敵キャラに代表される「ほら、こんな設定や話を出せちゃう俺たち、大人だろ?」と言いたげな作り手たちの幼稚さ、スケールが大きい話のようで実は異常に矮小化しているテーマ性などが、気にならないと言ったら嘘になります。

 そこはとても気になりますし、はっきり言って、その手の要素のせいで、この映画の完成度は損なわれていると言っていいです。

 

 また、この話自体「あれだけ、ゴチャゴチャした話を進めておいて、最終的にやりたいことは、ただ、逆襲のシャアを焼き直してるだけって……」と言いたくなってしまう部分があるのは否めません。噂に聞けば、富野監督もこの部分に関して苦言を呈したとのことで、ガンダムを知っている人ならば、全員漏れなくこの点を気にされるのかなと。



 それに個人的には、そもそも作り手の思想というか、根本的な考え方自体が「よくよく考えると、それって、ただの選民思想だよね?」という話になってしまっているのも、凄く気になります。

 これは宇宙世紀ガンダムシリーズ全体に蔓延る問題で、もっと言ってしまえば、大元のファーストガンダムの時点で既に実は内包されていた問題点ではあるのですが、*2今回のガンダムは、特にそれが露骨に出てしまっている印象を受けます。

 心が広くて、優しい、素晴らしい人じゃなければ、そんなにダメなんですか?

 その考え方って、本当に良いことなんですかね?

 というか、そんな考え方をしている時点で優しくもなんともないですよね? 

 

 僕には、他人のことをなにも考えていない、幼稚な考え方に見えます。



 以上のように、本作、なんというか深く考えようとすると、なんだか引っ掛かる点が多すぎるのです。ただし、作品自体が悪い出来かというと、そうでもなく、むしろ、良く出来ているのが頭の痛いところなのです。

 現実の場で、本作のような思想を言い出されたらブチギレ待ったなしの案件だと思いますが、言っても本作、所詮はエンターテイメントであり、フィクションであり、そしてただの映画なわけです。つまり、そこまでマジに受け取っても、どうしようもないわけです。

 

 だからこそ、自分としては本作に対し「まあ、これで良いんじゃない? だって映画なんだし」という評価になるのです。

*1:まあ、世の中には、この点で「本作の技術は、それまでの宇宙世紀ものの歴史を逸脱している」等々の文句を言っている人が多くいるようですが……正直、アプサラスやらデンドロビウムやら、外伝の宇宙世紀もので、それまでのシリーズからすると整合性がつかない兵器やら技術やらが出てくるなんて、いつものことなので今更文句を言っても、といった感じです。

*2:ファーストガンダムの時点で、そこら辺の問題を、ザビ家の独裁という形で、ザビ家をスケープゴートにすることで誤魔化して話を終わらせてしまっており、それ以来、この問題とまともに向き合っているガンダム作品がないんですよね……

11月に見た映画

・ヴェノム


『ヴェノム』予告

ボヘミアン・ラプソディー


映画『ボヘミアン・ラプソディ』最新予告編が世界同時解禁!

・銃

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・グースバンプス モンスターと秘密の書

・ 殺しの分け前/ポイント・ブランク

・ 月光仮面

月光仮面

月光仮面

 

月光仮面 絶海の死斗 

月光仮面 絶海の死斗

月光仮面 絶海の死斗

 

 

以上、7本です。月光仮面、結構、面白いですね。少年探偵団シリーズからの影響が色濃くて、その手の話が好きな人にはかなりおすすめです。

映画感想:銃

www.youtube.com

 恒例の手短な感想から

作り手の技量で素晴らしくなった、としか言いようがない

 といったところでしょうか。

 

 芥川賞作家でもある中村文則の「銃」を原作として、作られた本作なのですが、本当に素晴らしい出来であると思います。

 特に何が素晴らしいかは明白です。

 あのどうしようもない原作を傑作に作り変えてしまったことが、本当に素晴らしいとしか言いようがないのです。

 

 ハッキリ言ってしまって、原作は石原慎太郎を何から何まで、大劣化させてパクっている中二病小説*1以外の何者でもないです。

 と言いますか、中村文則という作家自体の作風自体が、「文系引きこもりが妄想世界でパンクやって自惚れているような」「今更、アプレゲールをやっている痛い中二病患者」としか言いようがない作風なのです。

 

 たとえば、本作の銃でもそうですが、なにかとてつもない衝動を抱えた少年が、銃という「人の生死をいくらでも操れる道具」を持つことで興奮し、次第に、その中に眠っている衝動が性的な欲望等々とともに現れてくるーーという、この筋書き自体が既に「石原慎太郎の小説っぽすぎる」内容でしょう。

 作中で、主人公はセフレやヒロインの女の子にあえて、怒られるように「性の悪徳」を行うわけですが、これらの行動、「陰茎で障子をぶち抜く」のと、意味合い的にはなにも違わないわけです。


 そして、そんな筋書きの中で、なんとも「こじせた中二病の童貞作家の妄想」としか言いようがないリアリティのない描写が数々出てくる――言ってしまえば、魅力の欠けた石原慎太郎――慎太郎氏に喩えるのが不快ならば、もやしっ子がイキってアレックス*2コスプレしてるような内容と言い換えてもいいです。――それが本作「銃」の原作である「銃」という小説でした。

 

 そんなしょうもない原作が、まさかここまで、見事な作品になっているとは。

 

 これは一重に、映画の作り手たちの手腕によって、ここまでの作品になり得たのだと言って構わないでしょう。

 主演である村上虹郎中二病中二病と感じさせない――むしろ、中二病的な言動に説得力さえ持たせ、リアリティを補強してしまっている――風体と素晴らしい演技は文句のつけようがないです。

 悲劇のヒーロー気取りで、主人公がベートーベンを流すシーンなんて、あまりにも幼稚過ぎて普通ならば「寒すぎるわ!」と文句を言いたくなってしまうところですが、彼の風体、あの感じの演技で、やられてしまうと、なんだか説得力があるのですから不思議です。 

 去年の「武曲 MUKOKU」でも、素晴らしい演技をするなぁと思っていましたが、本作は更に素晴らしい演技をしています。

 

 そして、もちろん、カメラワークや美術、音楽のつけ方一つ一つにまで細かい配慮と工夫の行き届かせたうえに、最後の最後で観客に思わずああっと言わせてしまう演出プランを思いついた武正晴監督も評価されるべきでしょう。

「百円の恋」で、ようやく日の目を見た武監督ですが、本作においても、評判に違わない手腕を発揮しています。

 

 特に最後の「思わずあっと言ってしまう」演出とそこでの各役者の演技は、本当に素晴らしいです。あそこの演出のおかげで、本作は、原作のふわふわと宙に浮いた中二病的な結論やテーマを、ちゃんと「地に足がついたもの」へと落とし込めていると言って過言ではないです。

 

 原作では、この場面、ただただ、単に主人公が中二病的な感じでコワレタ(笑)ような描写で描かれており、読んでいて、背中が痒くなってくるほどアレな感じが満載だったのですが、本作ではむしろ「壊れていた主人公が戻った」かのように演出されているのが、本当に見事としか言いようがないのです。


 そして、だからこそ、「確かに、本当にこういう場面になったら、むしろ、人間ってちょっと頭のどこかで冷静になるのかもなぁ」と、実感を持つことができ、作者のマスターベーションが痛々しい物語を、ちゃんと観客の共感を呼ぶ物語へと昇華させることが出来ているのです。

 

*1:石原慎太郎中二病が結びついていることに驚愕される方もいるかもしれませんが、石原慎太郎氏は実は新海誠の「ほしのこえ」を鑑賞して褒めていたり、と結構ソッチの人たちとメンタリティが近い人間なのです。

*2:時計仕掛けのオレンジの

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