映画感想:スパイダーマン:ホームカミング
恒例の手短な感想から
素晴らしい!
といった感じでしょうか
久しぶりに見たマーベル映画のような気がしますが、久しぶりに見たものがこれで本当に良かったと思っています。正直に言いますが、最近、アメコミ映画に結構うんざりしていたからです。
確かにどの映画もコンスタントに、それなりに面白い内容なのですが、それと同時に妙なほどに暗かったり、変なほどにヒロイズムに浸りすぎていたり――なんだか同じような内容が多すぎじゃなかったでしょうか。
いえ、もっと僕の勝手なイメージを言ってしまうと、見ている観客層がそういう人たちばっかりなのか、やたら理系やら経済系の用語を頻発しまくって、「俺様、頭いいんだぜ?(キリッ」と言いたげな雰囲気が漂っている映画ばっかりじゃないかと。
それが僕にとっては本当に嫌だったんです。なぜなら、僕は別に映画を見て「こんな映画を見れる自分は頭が良い!」とか、そんな感慨に浸りたくはないからです。むしろ、映画中に出てくる理系用語が、明らかに誤用なことが気になって悶絶してしまう始末なわけです。*1
そんな状況の中では、今作のスパイダーマンは大変に珍しい試みであると言えます。まず、なんといっても、予告編を見ても分かる通り、明らかに本作は10年代前半に流行った「ポストヒーローもの映画」の流れを汲んでいることがとても珍しいです。
分かりやすく言ってしまえば「キックアスを、正統的なマーベルヒーローコミック映画が取り込んでみた」という映画なわけです。まさか、マーベルからこんな映画が出てくるとは想像していませんでした。その結果、本作は今までのアメコミ映画と比べても、非常に地に足がついているのです。
物語に生活感があるのです。主人公が15歳で学校に通っているということもあってか、日常があり、人々の営みがあり、その上でヒーローの戦いがあるということが映画のあちらこちらで強調されています。
実際、主人公が通う学校の生徒達の描写は、ヒーロー映画というよりは、他のコメディ映画やドラマ映画に出てくる描写に近いです。妙に搾取がどうだのと言い出す同級生や、人種の違うヒロイン、太った親友、ホームカミングパーティを話の主軸の一つに持ってくる構成などは「ハリーポッター*2」や「グレッグのダメ日記*3」「スーパー・バッド童貞ウォーズ*4」を思い出してしまうくらいです。
そのおかげで、本作、なんとも主人公の周りの人間模様が面白いのです。この手のヒーロー映画では珍しく「これからこの人はどういう人生を送っていくのだろう?」と思いを馳せてしまう内容になっているのです。
アントマンでも、こういう"登場人物の実在感"はありませんでした。あれらの映画で「まあ、言っても遠いどこかの、パラレルワールドでの、どうでもいい話だろ?」と思ってしまっている自分がいるわけです。しかし、本作は違います。
そして、その結果、サム・ライミ版のスパイダーマンを見た時に感じた「このスパイダーマンを応援したい!」と思う気持ちが久々に芽生える映画となっていました。今のようなアベンジャーズとか立ち上げてないときの、一作目のアイアンマンを見たときの「頑張れ!」と思う気持ちが芽生える映画になっています。
映画鑑賞後に、珍しく「この映画の続編が見たい!」と本気で思えた映画だったのです。*5
本当に久々に良いヒーロー映画を見ました。
*1:誤解のないように言っておくと、アメコミ映画以外でも、結構この「用語の誤用」に悶絶しています(笑) 例えば、今年公開された映画なら、メッセージの「非ゼロサム」という用語の誤用には悶絶しました。ゲーム理論を理解していないのに、なぜ出すのかと。いえ、確かに両者得も非ゼロサムなんですが、両者損も、片方損で片方得でも、非ゼロサムなケースはあるんです。なのに、なんで、両者得の言い回しで非ゼロサムとか言い出しちゃったかなと。
*2:まー、僕自身はハリポタそんなに好きじゃないんですが……
*3:映画版は……クロエ・グレース・モレッツ以外魅力がないですけど
*4:これは本気で好きです
*5:去年のナイスガイズ以来です!