映画感想:スキップ・トレース
恒例の手短な感想から
ジャッキー、もう限界なんじゃ……?
といったところでしょうか。
いや、それなりに期待して観に行ったんですけどねー。思った以上に酷い映画でした。いえ、面白くないと言うつもりはありません。それなりに面白い部分もあったことはありました。
ただ、この映画の面白い部分というのが……もうジャッキー映画としては致命的にダメな状態なんです。
ジャッキー・チェン映画といえば「ポリス・ストーリー」や「ラッシュ・アワー」などに代表されるように「ポリス・サスペンス・カンフーアクション」が売りでした。
もちろん、若手の頃はクンフー主体の映画が目立っていましたが「ハリウッドスターになった後のジャッキー・チェンの映画」といえば、もう誰もが脳裏に、上記のサスペンス・アクション映画を思い浮かべるはずです。
どんな作品にしても、どんなに基本設定や会話場面の演出がつまらない作品であっても「サスペンス・アクション」だけは抜群に面白い!――それがジャッキー・チェン映画であり、むしろ、それを抜いてしまったらジャッキー・チェン映画じゃないだろうと思えるほどでしょう。
だからこそ、本作、スキップ・トレースはかなり致命的なのです。
実は、本作、「サスペンス・アクション」の部分が致命的につまらないのです。映画において、サスペンス的に、あるいはアクション的に盛り上がりやすい、序盤や終盤がとにかくつまらない出来であることからも、それは断言できます。
数分前の会話とさえ、整合性が合わないダメすぎる筋書きはもちろんのこと、サスペンスを盛り上げる演出や、それを撮っているカメラのショボさなど、ありとあらゆる要素が、本作のサスペンス・アクションをつまらなくしています。
その上、ジャッキー・チェンのアクション自体、全盛期や往年の勢いがまったく感じられない状態となっていることが、状況の悪さに拍車をかけています。本当に「ジャッキーも歳なのだなぁ」と思わざるをえないほどで、例えば、蹴り一つを入れるだけでも、かなりヨロヨロしているのです。
アクション自体もクオリティがかなり下がっており、今までのジャッキー映画を劣化コピーしたような内容がずっと続くのみ。実際、制作現場でもジャッキーだけではアクションを盛り上げるのは無理だと判断されたのか、クライマックスはあんまり話と関係ないキャットファイトやら、銃撃戦でかなり誤魔化しています。
この状態なので、正直、この映画で「ジャッキー映画を見た」という気分になるのは無理です。どれくらい無理かというと、「まだツインズ・エフェクトを見た方がジャッキー映画を見たという気分になれるだろう」というレベルです。
このように、まあ、ジャッキー映画としては、かなり限界の見えている本作なのですが、冒頭でも言ったように一応面白さもあることはあるのです。
それは、野郎二人がいろんな場所へと旅していく、珍道中映画としての面白さです。かなり内容としては、馬鹿馬鹿しい場面とギャグが多いのですが、まあ、この部分は普通に面白いかなと。
正直、どうでもいいサスペンス部分と「お前、整形しすぎだろ」と言いたくなるような顔をしている女優さんを取り除いて「ハングオーバー」みたいな映画にしたら、もっと面白かったんじゃないかなぁ、これ………。