映画感想:パラサイト 半地下の家族
第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編
恒例の手短な感想から
これ、ポン・ジュノにしては微妙だろ
といったところでしょうか。
アカデミー賞の監督賞まで獲得した本作ですが、端的に言ってこの感想が似合うと思います。「前評判だけで過大評価されてしまった」と。「ポン・ジュノという天才監督が居るらしい」「見てみたけど、なんかよく分からないところあったなー、でも天才らしいし、高評価した方がいいよね」というその風潮だけでここまで行ってしまった映画が、本作「パラサイト」です。
ハッキリ言って本作は、今までのポン・ジュノ映画の中でも、下の方から1、2番目の出来です。スノーピアサーよりかはマシかなと言う程度で、それ以上では決してありません。
登場人物がカメラに向かって、これみよがしに「ニヤッ」て笑うシーンを入れたり、映像上の比喩をわざわざセリフで説明している場面があったり、と映像表現の様々な面が「本当にあの『母なる証明』のポン・ジュノなのか?」と疑いたくなるほどにレベルが低くなっています。
その上、脚本もレベルが低く、伏線はいちいち全部セリフで「はい。これ伏線ですから、みなさん理解してくださいね」と解説してくれる傾向の――いわゆるバカ向け映画となっています。
しかし、なによりも本作がおかしいのは、各登場人物の設定でしょう。
よくよく考えると「なにその、ご都合な設定」としか言いようがない設定だらけであり、本作を挙げて「韓国の貧困を描いている」などとドヤ顔している人たちは、この違和感だらけの貧困家庭に疑問を持たなかったのでしょうか。
まあ、世界的に流行っている貧困に気遣っているポーズだけがしたいだけの「リベラルという名を冠した貴族様たち*1」からしたら、こんな薄っぺらい程度に貧困を捉えてくれている映画の方が、同情しているポーズを取りやすくて便利なのかもしれませんが……。
だからこそ、ここまで、すんなりと賞を取れたのでしょうし。
少なくとも、自分には「カブスカウトに通っていた過去を持つ息子、美大を目指していた娘、完璧なドライビングが出来る父親、メダルを持っているアスリート母親」なんてトンデモ設定の家庭から貧困を描かれても、それが貧困を描いたことになるとは到底思えません。
同じ金獅子賞の「万引き家族」のほうが遥かにちゃんと貧困を描いていました。
また本作は登場人物たちの行動の動機や、感情が酷く単純です。そこも今までのポン・ジュノ映画を堪能してきた身からすると、まったく納得がいきません。クライマックスも「あぁ、ムカついたから殺したのね」という酷く単調な感情があるのみです。「母なる証明」のクライマックスと比べると、なんと陳腐な話で終わっていることでしょうか。
今までの流れなんて全部無視して、バカにされてると分かったから怒って、好かれてると分かったから好いて――一事が万事、そんな感じで感情が単純なので、見ていて登場人物全員がバカに見えてきます。そして、その部分を「コメディだから」とごまかしているわけです。
そんな映画の、そんな登場人物に感情移入など、当然、全く出来ないです。
正直、ポン・ジュノ監督は「格差」やら「階級闘争」の話をテーマとして選んではいけない気がします。
ポン・ジュノ監督、この手の話をテーマにすると「昔の左翼小説か!」と言いたくなるほど紋切り型で薄っぺらい描写しか出来てないのです。スノーピアサーのときも、そうでした。
そんな、ガッカリ映画がパラサイトでした。自分としては「母なる証明」見たほうがどう考えても面白いよ、とただそう思います。