映画レビュー:シャーロック・ホームズVSヴァンパイア
https://www.youtube.com/watch?v=jJn4hSkqnsU
※予告編、ブログに転載できませんでした。
おそらく、もし、あなたがレンタルビデオ店でこのタイトルの名前を見かけたら、手に取り、後ろの説明文等々をまじまじと見つめ、こういうことだと思います。「これ、絶対トンデモ映画でしょ」
で、実際、中身がトンデモかというと、全然そんなことはありません。
きっと、シャーロック・ホームズVSヴァンパイア…シャーロック・ホームズVSヴァンパイア…というこのとんでもないタイトルからすれば、もう、いかにも見せかけだけ、シャーロックホームズっぽい鹿撃ち帽とパイプを持ち、けれども、それ以外にはまったく共通点のない、なんならワトスンさえ傍にいないような、トンデモ・シャーロック・ホームズが、陽の光を浴びるとかコウモリになるとかの要素だけをついだ、ドラキュラ伯爵などの伝承とはなんの関係もないようなただの牙剥いた吸血鬼と、真っ向から戦い、最後は「なんじゃそりゃ」と言いたくなるような、どうしようもないオチで終わるような映画であるに違いないと思うことだと思います。
ですが、この映画、実際にはそこそこであるものの、しっかりと作られた「シャーロック・ホームズ・パスティーシュ映画」の一つであることは間違いがないです。
パスティーシュというのは、模倣という意味であり、転じて「二次創作的に、原作者ではない他者によって、作られた続編・新編」のことを指します。このシャーロック・ホームズVSヴァンパイアという映画は、まさにそのパスティーシュものの一つです。
いつものごとく、暇そうに過ごしているシャーロック・ホームズのもとに、吸血鬼によって殺されたという事件が舞い込み、吸血鬼を信じていないシャーロック・ホームズは、その謎を解き明かそうと、事件が起こった街ホワイトチャペルに出向くのですが…
という筋書きも、まさに「あぁ、いつものシャーロック・ホームズ」といったところでしょう。DVDの裏にある説明を信じるならば、コナン・ドイルが遺していた「あらすじ」を元にこの話は書き上がっているそうで、そういうことであれば、なおのことパスティーシュと言って差し支えないと思います。
今年、コナン・ドイル財団が正式に認めた、公式続編として、アンソニー・ホロヴィッツ「絹の家」という長編小説の邦訳が刊行されたりしましたが、あれとこれを合わせてみてみるのもいいと思います。「絹の家」もそこそこ良く出来たパスティーシュで、話の組み立て方が似ていることに気づけると思います。
ただ、言わせてもらえば、少しシャーロック・ホームズの性格やワトスンの性格に、微妙に原作からの差異があることも認めざるをえません。聖書に関するくだりの、頑固さなど、確かにシャーロック・ホームズには頑固な一面もありましたが「ここまで頑固だっただろうか」という疑問はあります。また、少し、話に現代的な、社会の抑圧や人々の偏見みたいな要素を絡めているのですが、これもシャーロック・ホームズシリーズとしてみると少し浮いているような気もします。単純に一つの話として見た場合には十分に面白いのですが。
ですが、伏線の貼り方や事件の真相の明かし方など、全体的にはシャーロック・ホームズの雰囲気をよく真似ていますし、"チャーチ"に関するオチの付け方もなかなかこちらの虚を突く形でいいと思います。
なにより、映画の上映時間が88分と短く、視聴するストレスもあまりないので、それだけでいいのだとも思います。とにかく、この映画は、脚本がとてもサスペンスを盛り上げる形で巧みに展開されていきますので、そこを楽しめれば十分でしょう。