儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:トイ・ストーリー4


「トイ・ストーリー4」日本版予告

※今回はネタバレを結構している感想になります。

 

 恒例の手短な感想から

意外なオチでもないし、普通に面白かった

 といったところでしょうか。



 いきなり、真っ向から巷の評判を覆すようなことを書きますが、本作、「トイ・ストーリー4」を意外なオチだとか、今までとは違う作品であるというような感じ方をするのは、かなりおかしいです。

 まず「意外なオチ」という点についてですが、いくらなんでもこの内容で、ウッディが外の世界に残っていくオチになることについて「意外だ!」と感じてしまうのは、受け取る側の方の問題かと思います。

 

 この映画の冒頭に、わざわざ過去の回想という形で「ボー・ピープと別れることになったウッディがボー・ピープについていこうと、箱に入ろうと一瞬決断する」シーンが入れられている時点で、どう読み取っても、この映画は「それがテーマの映画」でしょう。

 はっきり言ってしまって、この映画の作り手たちは最初からフォーキーやボニーことなど、どうでもよく、ウッディのことしかテーマにする気がないのです。

 

 そして、エンタメ映画の定形で言ってしまえば「冒頭で事情があって添い遂げられなかったカップル」のシーンがあったら、普通、「じゃあ、オチで何らかの形でカップルが添い遂げるんだろうな」と思うはずです。

 

 また、冒頭に限らず、映画本編中でも再会したボー・ピープとウッディが惹かれ合っていく様子を、しつこいくらいに何度も描写し、様々な登場人物の口から「外の世界がいかに素晴らしいか」という話を語らせているのです。ならば「作り手たちは、そういうオチにしたいんだなぁ」と読み取れて当然ではないでしょうか。

 

 なので、この映画のオチは意外でもなければ、なんでもありません。むしろ、この手の映画としては、驚くほどに普通のオチに収まったといって過言ではありません。

 

 意外に感じてしまう人がいるのは、これほどの描写を入れてもなお、受け取る側が頑固な思い込みで縛られてしまっているのではないでしょうか。

 あるいは自分がぬいぐるみやおもちゃ好きであるために、「何が何でも、そう合って欲しくない」という強い思いがあるか、のいずれかでしょう。

 

 巷では、この映画のオチを「今までのトイ・ストーリーを否定する話」と受け取っている人も多いようですから。

 

 

 しかし、自分からすると、その受け取り方もまたおかしいと思うのです。本作の一体、どこが「今までのトイ・ストーリーを否定している」というのでしょうか。むしろ、今までのトイ・ストーリーが言っていた「子どもに愛されることはおもちゃの幸せ」という幻想を強固なまでに守ったようにしか見えませんが……。

 

「だって、ウッディがボニーのもとから離れてしまったじゃないか」と思っているのでしょうが、冷静に考えてください。ボニーは別にウッディのことを、好きでも何でもありません。というか、劇中ではっきり示されていないだけで、ほぼボニーにとって、ウッディはただのゴミです。

「ゴミのフォーキーは、ボニーが必要としているから玩具になった」という事実は裏を返せば「玩具だけどボニーが必要としてないウッディは、ゴミである」という事実になります。

 

 僕から言わせれば、あのままウッディがボニーのもとに戻る展開にした方が、よっぽど「今までのトイ・ストーリーを否定する」ヤバい映画が完成していたと思います。

 

 なぜなら、映画中のウッディは、別にボニーに再び気に入られるようなことを何一つしていませんから、あのままボニーのもとへ戻れば、やはりクローゼットの中で押し込まれっぱなしで終わりです。

 

 そうして、観客たちに薄々と「ゴミから作り上げられ、おもちゃになっていくフォーキー」「おもちゃだったはずなのに、役割を失い、だんだんゴミとして扱われていくウッディ」という姿の二つの皮肉げな姿を想像させてEND――という、そんなヤバ過ぎるオチになったはずです。*1

 

 それと比べて、なんとこの映画は「トイ・ストーリーの幻想」を健気に守っていることでしょう。この映画のオチならば、ウッディは「愛されなくなったから、別の愛してくれる子どもを探しに行った」とも取れますし、実際、エンドロールでもウッディはおもちゃたちが子供の手に行き渡るように奮闘している姿が描かれているので、「子どもに愛されることはおもちゃの幸せ」という価値観の否定なんてまったくしていないわけです。

 

 だからこそ、自分としては「普通の、面白い映画だったなぁ」というのが、本作への感想になります。

 若干オタク臭いパロディギャグはもちろん、全体的に人形ホラー映画へのオマージュも見られるあたりもなかなか良かったですし、玩具たちのロマンスをギャグ抜きで、エロティックに感じられるものに演出しようと様々な工夫を凝らしているのも面白かったです。



 別に意外な作品でも、衝撃的な作品でも、なんでもありません。

 本作は普通の内容です。

 

 

*1:というか、ゴミから出来たフォーキーの存在を鑑みるに「最初は、そういうオチにするつもりで、作っていたけど、さすがに子どもに見せるのは、残酷すぎてやめた」のではないでしょうか?

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