映画感想:X-ミッション
映画 『X-ミッション』本予告【HD】2016年2月20日公開
恒例の手短な感想から
こんなに悪い意味で頭が悪い映画は久しぶりだ!
といったところでしょうか。
"ノーCG"を謳い、実際にエクストリーム・スポーツをやっているところを撮影した上でアクション映画にしたという、かなりの大胆な宣伝文句で推されていた本作――実は、表立って宣伝されてないけれども、キャスリン・ビグローの「ハートブルー」のリメイクでもあったりします。
当然、映画ファンとしては一応、中身が気になるということで、見に行ってきたのですが、ハッキリ言います。
これは1800円を払って見る映画ではありません。
一応、それなりに見どころもあります。実際、エクストリームスポーツを行っている場面自体は、なかなかハラハラさせたりもするのです。しかし、その魅力だけでは、到底擁護できないほどにこの映画は、滅茶苦茶なのです。滅茶苦茶すぎて、話を追うのが面倒くさくなってしまい、見ていて、相当眠くなります。
内容はエクストリームスポーツを題材にしているとおり、過激で、音楽もゴリゴリのサウンドで流れているにも関わらず、この映画は相当眠くなるのです。これは珍しいです。
まず、この映画、ハッキリ言っておきますが”ノーCG”は大嘘です。
予告編の時点で「誰がどう見てもCGにしか見えない映像」が目白押しで、相当、胡散臭かったのですが、案の定でした。大波に浮かぶ船、崩れる山の土砂、宙に舞う札束……目立つだけでも、最低、三箇所は確実にCGが使われていることが分かります。
しかも、CGのクオリティが……お世辞にもよく出来ているとは言いがたいレベルで……「今時、こんなに分かりやすいCGでよく”ノーCG”を謳ったよな」と、逆に感心させられてしまうほどです。
また、CGを使っているという部分を抜いて考えても、肝心のエクストリームスポーツの場面が……また、お世辞にもよく出来ているとは言いがたく……特に撮影と編集がマイケル・ベイに中途半端に影響を受けたような*1、せわしないカット割りと、無駄なアップの連続で、なにが起きてるのか極めてわかりづらいことが多いのです。肉弾戦等のアクションシーンも相当に酷いです。
そして、話の筋書きや、セリフなども、とてもではないけれどもいい出来ではありません。というか、この映画の場合、話の流れがおかしいとか、そういう以前の問題が多いです。例えばこの作品では、敵は「オザキ8」という、8つの修練を達成することを目指しているということが明かされるのですが、この映画のテーマであるはずのオザキ8、途中のシーンでなぜか"7つの修練"になっていて、そして、映画の終わり近くになると、いつの間にか"8つの修練"に戻っていたりします。
他にも、途中、主人公が潜入捜査の課程で、敵・ボディと仲良くなりすぎて彼を撃つことが出来ず、悔しそうに上空に向けて銃を乱射する*2シーンがあったかと思えば、次のシーンでは、強盗しにきた「ボディ一味」全員に向かって(ヘルメットで顔を隠しているせいで一味のうち誰がボディか分からないので)ボディ!ボディ!と呼びかけながら、なんの躊躇もなく、次々撃ち殺していくというサイコぶりを発揮していたりと、もう無茶苦茶なのです。
しかも、では、この映画はそういう銃撃戦とかアクションシーンのみに焦点を当てていて「細けぇこたぁいいんだよ!」精神で作られた、”狙った大味アクション映画”なのかというと、これがそうでもないのです。
実は、話のあちこちには中途半端に環境保護だの、捕鯨船がどうだのという、変に真面目な話が混ぜられているのです。しかも、妙に敵がアメリカの企業を相手に闘っているというところも強調していて、なんとなく反米思想っぽいものや、反日思想っぽいものを嗅ぎ取ることもできます。
ですが……この環境保護の話も捕鯨船の話も、反米思想も反日思想も、全部が異様なほど中途半端で薄っぺらく、しかも、劇中でオザキ8を達成すると”悟り”が得られるだのなんだの言っていますが、この悟りに関する言及も(元のハートブルーでさえ、そこは中途半端だったのに、輪をかけて)中途半端なことばかり言っていて――総合すると、まるでそこらへんの新興宗教の教祖が言っている説教のような内容なのです。
なので、アクション映画にもなりきれていません。もちろん、かといって、頭が良い映画でもないです。つまり「本当の意味で頭が悪い」映画なのです。
「ハートブルー」のリメイクでありながら、どうしてここまでダメな内容にできたのか。本当に不思議です。