儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

1月に見た映画

1.カンフーヨガ


映画『カンフー・ヨガ』 本予告

2.キングスマン:ゴールデンサークル


映画「キングスマン:ゴールデン・サークル」予告B

3.百円の恋

百円の恋

百円の恋

 

 4.劇場版マジンガーZ/INFINITY


『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』予告編1

5.探偵はBARにいる

探偵はBARにいる

探偵はBARにいる

 

6.エクスマキナ

 

 

以上、6本です。

ちょっとスケジュールの組み立てをミスして、1月31日にもう2本鑑賞するつもりが、 2本を見終わったときには2月1日になっていて「あ、しまった」と。

 というわけで、来月の鑑賞本数が10本くらいになっているかもしれません。

映画感想:劇場版 マジンガーZ/INFINITY


マジンガーZ最後の出撃?『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』予告編

 

 恒例の手短な感想から

終盤が良かったから、良し、とするかなぁ…………。

 といったところでしょうか。

 

 前評判的になんとなく気になる作品だったのですが、残念ながら自分としては「期待外れ」と言わざるをえない出来でした。そこまで素晴らしい作品とは言い難いかなと……。

 「クライマックスの展開が辛うじて盛り上がる展開だったから、まあ良しとするか……」というその程度の感慨しか覚えられない、どうでもいい作品でした。

 ものすごい単刀直入に言ってしまいますが、この作品の作り手たちは「昔のノリだから」「昔のスーパーロボットだから」という言葉を、作品への作り込みの甘さへの言い訳にしてしまっていませんか?

 少なくとも、僕にはそう感じられる一作でした。

 別に設定の考証を現実的にしろとか、整合性つけろとか、そういうことが言いたいわけではないのです。この作品の全体としての物語のバランスや、話を盛り上げるポイントの入れ方などが、いい加減過ぎるという話をしているのです。

 

 ひょっとすると、これは自分がアニメ版のレッドバロン*1を大好きでいるためなのかもしれませんが、自分にとっては、今作のところどころがご都合主義なくせに、変なところでグダグダグダグダと理屈を説明する、妙なノリがまったく合わないのです。

 あんな複雑な理屈じゃなくて「この力を与えるべきか迷っていたけど、あなたに預けます……」とか「兜甲児が、ピンチに『そうだ!敵の光子力エネルギーも同じ光子力エネルギーなら使えるんじゃないか!?』って思いつく」とか、もっと分かりやすくて、納得のいく理屈を付けられないものでしょうか。

 自分なんか「絶体絶命だけど死ぬ気の根性で立ち上がったー!」で全然良いんですが。それで心の底から「最高だ!」と拳突き出して喜べるんですが*2、なんでこんなにグダグダ理屈付けちゃったんでしょうか。

 

 そもそも、今回の話でゲストとして混ぜられているオリジナルキャラクター……彼女の存在は、どこからどう見ても、2000年台以降のガンダムSEEDに出てきそうなキャラクターにしか見えませんし、実際、彼女絡みの話は量子論やら多世界解釈やら*3謳い文句の「昔のマジンガーZっぽさ」はどこ行ったんだ、と疑問に思う内容です。

 実際、周囲とのキャラクターにまったく溶け込んでおらず、なんだかマジンガーZの映画というよりスーパーロボット大戦の映画を見ているような気分になってきます。それくらい、違う作品から急に連れてきてしまったような容姿です。

 

 このように、どうにも自分にはこの映画の妙なノリは合いませんでした。ただ、戦闘シーンなどが面白かったことや、クライマックスの展開が素晴らしかったことも確かです。

 例えば、板野サーカス的なミサイルシーン等々に代表される、いかにもなリアルロボット作品風の戦闘シーンも、既視感の塊のはずなのに、マジンガーZでやってみると意外と新鮮に感じられることは自分にとっても驚きの発見でした。

 そして、なによりもクライマックスの世界の光子力がどんどん集まっていく展開ーー既存のこの手の「みんなの応援が!」的な展開の作品と比べる*4と、若干雑なところもあるのですがそれでも、やっぱりこういう展開はいいですね。単純に世界が協力するというシーンは、なんだか感動してしまいます。

 

 一部、作画がおかしいシーンや、あと明らかに塗りのレイヤーと線画のレイヤーがズレているシーンなどもありましたが、全体的には良作画であったことも間違いないです。

 

 なので「上記のことをもって、この映画は良しとする」ーー変な言い方になりますが、本作に関しては、この中途半端な感想が自分の感想になるのです。

*1:そんなものあったの? と思ったあなた。あったんですよ! Gガンダムの裏番組だったせいでマイナーだったけど、熱いロボットアニメが!

*2:例えるなら、柴田ヨクサルエアマスターで「屋敷が浸透勁で気を打ち尽くして、もう立ったまま気絶しそう! そんな彼に坂本ジュリエッタの蹴り足がーー! 屋敷、死に物狂いで泣きながら、絶叫して彼の蹴り足をないはずの気で受け止め、そのまま相手の頭に最後の振り絞った一撃!」みたいな理屈じゃない熱い展開とか大好きなんですが

*3:またかよ!多世界解釈!SF関係者はなぜ、量子論の数ある解釈のうち、多世界解釈しか取り上げないのか本当に不思議です!全世界のSFの作家たちは多世界解釈以外を知らないのでしょうか?

*4:ウルトラマンティガとか、ドラゴンボールとか、あと、マイナーどころで言うと、アニメ版の住めば都のコスモス荘とか、数年前の映画版ドットハックとか

映画感想:キングスマン:ゴールデン・サークル


映画「キングスマン:ゴールデン・サークル」予告B

 恒例の手短な感想から

さすがのマシューヴォーン。最高だ!

 といったところでしょうか。

 

 マシュー・ヴォーンという監督に外れなし! そう言ってしまいたくなるほどに、作品を作れば良作か名作しかないマシューヴォーン監督ですが、本作も相変わらず最高でした。

 前作のキングスマンは、このブログでも書いたように「あまりにも特異すぎる傑作」であり、あれの続編を撮るとなると、さすがにマシューヴォーンと言えども難しいのではないかと考えていましたが、杞憂だったようです。

 

 もちろん、何もかもがずば抜けた出来であった前作ほどの作品かと問われると若干、疑問のある部分はありますが、いわゆるシリーズものの二作目と考えると、本作は十二分な魅力のある成功作でしょう。

 前作のキングスマンに見劣りしない、続編となっています。

 

 まず、本作は前作からすると明確に方向性を変えています。前作は、強くオールド007をオマージュしており、前面に華麗さを押し出した上で、その華麗さを皮肉っているようなスプラッタギャグを挿入するような方向性でしたが、これをやめています。

 本作はどちらかというと、華麗さよりも地に足のついた泥臭さがよく出ています。それは主な舞台がアメリカに移っていることからもよく分かりますし、なによりこの映画の主題として使われている、数々のカントリー系楽曲を見ても明白なことです。

 そして、全体的によりコメディ色が強い出来となっています。ネタバレになるので避けますが、某ポップミュージシャンがこの映画で終始活躍する姿は間違いなく、観客の爆笑を誘うことでしょう。他にも小さいエロギャグなどが織り混ぜられており、前作以上に笑える一作となっています。

 

 そして、この上記二つの変化により、前作とはアクションの方向性さえも変化が見てとれるようになっています。

 断言しますが、アクションシーンに関しては本作の方が編集、スタント、流れているBGM、コメディチックなシークエンス含めて、前作よりも全てが上です。特にクライマックスのアクションシーンは、相変わらず音楽センスが抜群のマシューヴォーンによる、見事な選曲と絡まって、興奮間違いなしのシーンになっています。

 正直、このシーンだけでこの映画の評価が3割は増していると思えるくらいに素晴らしいです。

 

 ただ、もちろん、本作には欠点がないわけではありません。まず、なによりも本作は筋書きが、かなり適当です。前作も若干ツッコミどころはありましたが、本作はツッコミどころしかないような状態だと言えます。

 ただし、冷静に考えれば、なのですが。

 本作はクリフハンガー的に衝撃の展開が次々待ち受けているので、正直、冷静に考えている暇がないため、ツッコミどころが、あまり気にならないのです。

 

 なにより、ツッコミどころだらけとはいえ、話のテーマに、相当な時事ネタを取り扱っていることは評価に値します。本作は間違いなく、ドゥテルテ大統領の麻薬戦争や、ドナルド・トランプのような存在、そして、それらを通して、世界中の右左構わず、正義にひたすら突っ走ろうとしている狂気の風潮を痛烈に皮肉っていることは間違いないでしょう。

 

 また同時に実は麻薬常習者や、人間のおかしな感覚を皮肉っている内容でもあります。

 冷静に考えれば、そもそもの麻薬自体、常習していれば、本作で敵が巻いていたウイルスの感染症状に近いようなことは、将来、起こるはずなのです。しかし、その危険性を気にせず、なんなら開き直って麻薬を常習するくせに、それがウイルスとなった途端に人間は大騒ぎしてしまうわけです。

 これはなんとも皮肉げな設定でしょう。

 

 このように、本作は相変わらず絶妙なマシューヴォーンの手腕をよく表す一作となっているのです。

映画感想:カンフーヨガ


映画『カンフー・ヨガ』 本予告

 恒例の手短な感想から

言うほど珍品でもない、普通に楽しい映画

 といった感じでしょうか。

 

 去年の年末らへんに、一部の映画好きやツイッターなどで話題になった映画が実はありました。「相当な珍品映画」「変なところしか無い映画」と評する人が多く、とても風変わりな映画があるのだとか。しかも、それがジャッキー・チェン主演の映画であるんだとか。

 風変わりな映画ならば、まず見に行くことを信条にしているクソ野郎こと、自分としては観に行かない訳にはいきません。また自分は同時に、そこそこはジャッキー・チェン映画を好んでいる人です。やはり、観に行かない訳にはいきません。

 というわけで、観に行った「カンフー・ヨガ」だったのですが……。

 

 いえ、これ想像以上に普通に楽しめるエンターテイメント映画でした。

 逆に言うとそこまで風変わりではないです。もちろん、これを風変わりだと誤って捉えてしまう人の気持ちも理解できなくはないのです。確かに、筋書きとしては矛盾点が多いですし、勢いだけしかないようなシーンも多いです。

 また、最初の20分くらいは正直、つまらないシーンもあったりします。

 しかし、この映画は、そういう風変わりなヘンテコ映画ではないんです。

 

 むしろ、この映画は昔の連続活劇のノリを、現代的にやろうとしている映画というのが相応しい評価でしょう。実際、途中のセリフでインディー・ジョーンズのことに言及していますが、あれはインディー・ジョーンズ自体もまた、そういった昔の連続活劇に影響を受けている映画だからです。

 昔の連続活劇は、全体的な話の整合性や、細かい理屈などがおかしい場面が多いものでした。観客をハラハラさせて、笑わせて、興奮させられれば、あとの細けぇこたぁどうでもいいんだよ!――っていうノリで作るのが、普通だったのです。

 実はこの映画が無茶苦茶なのは、そのノリを復活させようとしているからです。実際この映画は頭から終わりまで、ギャグだらけです。しかも、ギャグの内容は使い古されたような古典的なものが大半です。そして、ギャグのないところには、ひたすらにアクションとスリルが入っています。

 まさに連続活劇的です。

 だからこそ、あちこちのシーンが整合性がつかなくなっていたりするのです。むしろ、あえてジャッキー・チェンの趣味で「整合性を付けさせていない」とさえ言っていいかもしれません。彼も連続活劇のファンだからです。

 

 また、インドとの合作であるために、最後に入ってくる謎のダンスエンディングも、よくよく考えてみれば北野武の「座頭市」などでもあったものですし、まあ、この手のエンターテイメント性を追求した映画ではありがちなことです。

 なので、本作はそこまで変な映画ではありません。むしろ、伝統的なエンターテイメント映画であると評していいでしょう。ですから、本作は風変わりな映画だけを求める変わり者だけではなく、もっと広い層に親しまれていいはずなのです。

 ジャッキー・チェンのアクションも、このブログで去年取り上げた「スキップトレース」と比べると、編集や撮影などの妙もあり、だいぶマシに見えていますし、往年のアクション映画ファンならば一見の価値ありです。

 ぜひ、鑑賞してみてください。

12月に見た映画

ゴッホ 最期の手紙


全編が動く油絵!映画『ゴッホ 最期の手紙』特報


映画『光』本予告編 ロングバージョン

・SCOOP


映画『SCOOP!』特報映像

銀魂


映画『銀魂』予告2【HD】2017年7月14日(金)公開

スター・ウォーズ/最後のジェダイ


「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」本予告

オリエント急行殺人事件


映画『オリエント急行殺人事件』予告編

 

以上、6本です。あんまり12月も鑑賞できなかったなぁ…。

2017年映画ランキング

あけましておめでとうございます。
新年になりましたので、2017年の映画ランキングを発表していきたいと思います。
2017年に鑑賞した、2017年の映画は以下となっています。

銀魂(実写版)
オリエント急行殺人事件(ケネス・ブラナー版)
スター・ウォーズ/最後のジェダイ
ゴッホ 最期の手紙
KUBO/クボ 二本の弦の秘密
猿の惑星:聖戦記
ブレードランナー 2049
アトミック・ブロンド
アウトレイジ最終章
ドリーム
逆光の頃
三度目の殺人
スキップトレース
ウィッチ
咲-Saki-
スパイダーマン:ホームカミング
スターシップ9
ジョンウィック:チャプター2
メアリと魔女の花
モアナと伝説の海
22年目の告白 -私が殺人犯です-
美しい星
SING/シング
帝一の國
無限の住人
ナイスガイズ!
わたしは、ダニエル・ブレイク
夜は短し歩けよ乙女
夜明け告げるルーのうた
ブルーに生まれついて
キングコング 髑髏島の巨神
武曲
LOGAN/ローガン
怪物はささやく
メッセージ
パッセンジャー
ムーンライト
ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険
ラ・ラ・ランド
虐殺器官
ドント・ブリーズ
ネオン・デーモン

それでは、この41本の中から、厳選してランキングにしていきましょう。

2017年映画ランキング

15位 ゴッホ 最期の手紙

harutorai.hatenablog.com

今年は15位の段階で、傑作がランクインしてしまうという異常事態です。
個人的には、ゴッホを題材にしている割に、実は画風があまりゴッホ的ではない、リアリスティックな画風であるところが若干惜しいような気もしていて、そこで順位を下げてしまいました。

14位 SING/シング

harutorai.hatenablog.com

 この映画も本当はこんな順位に据えたくないのですが……上が詰まりすぎてて、ここにしか収まりませんでした。いやー、音楽映画としては冗談抜きでここ十年の中で最も傑作と断言して良い出来なんですが、それがこの順位なのです。

13位 ウィッチ

harutorai.hatenablog.com

 例年なら、こんな順位に来るような映画ではないんですけどね。
 こんな順位にきてしまったのは、一重に自分がホラーを苦手としているからです。
 映画としては曇りのない傑作なので、それ以上の理由はありません。

12位 帝一の國

harutorai.hatenablog.com

 最近は意外と邦画の実写案件も「あれ、わりと良い映画じゃね?」ということが多くなってきましたが、本作も間違いなく、そのうちの一つに入るものでしょう。

 ネットの住人には実写映画を酷評して、周りを見下すことを惨めな趣味にしている方が多いので、こういう良作は本ブログとかが、ちゃんと拾い上げないとな、と思う次第です。

11位 無限の住人

harutorai.hatenablog.com

 ちょうどキムタクバッシングの風潮で、見ないまま本作をバッシングしたかった人たちと、一部の映画ファン層の「邦画はなんでも貶せばいい(※自分たちが信仰している映画評論家が誉めたもの以外)」という狂った風潮が合致して、叩かれてしまった本作ですが、アメリカでの好評を示すように映画としては、かなり良い映画です。もちろん、グロ全開なので人は選んでしまいますが。

10位 ナイスガイズ!

harutorai.hatenablog.com

 本作も、例年ならベスト5くらいに絶対に入れているんですが今年に限っては難しかったです。ここまで、ベタに話を作っていって、でも、非常に面白いなんて映画が、2017年に作られた事自体が驚きと言っていいでしょう。かなりエスプリを効かせたオチも良いものでした。

9位 わたしは、ダニエル・ブレイク

harutorai.hatenablog.com

 ここまで時事ネタな内容もないですが、同時にこの手の「時事ネタ」な作品の中では、一番的確な信念を持った映画と言えるでしょう。他の映画のようにありきたりな「チャリティ精神」――つまり、貧乏でも助け合えばいい、などという見殺しを容認しているだけの浅薄な思想を持ち込まなかったことを評価します。

8位 夜は短し歩けよ乙女

harutorai.hatenablog.com

 この映画も、普通ならベスト3くらいに食い込んでくる作品なのですが、今年に限ってはこの状態です。――まあ、湯浅政明監督作品自体に、もう一本更にすごいやつが公開されてしまいましたし、仕方ないという気もしますが。
 ともかくとして、本作は本当に素晴らしかったです。原作以上に原作の魅力をここまで引き出した上に、完全な湯浅政明テイストに落とし込みきった本作ですが、何よりもここまで最初から最後まで、観客に「疲れた」と思わせないままに、ハイテンションで貫徹しきれたことが素晴らしいです。

7位 ドリーム

harutorai.hatenablog.com

 本作も本来ならば、ベスト3に(略)。
 個人的に原題の「forbidden figures」をもっと活かした邦題にして欲しかったなぁと思うのですが、それを抜いても素晴らしい映画でした。この手の差別を扱った映画にありがちな「とにかく、絶賛される理由は映画の主張している部分ばっかりで、映画としての出来は……」みたいな状態ではなく、単に映画の出来としても素晴らしく、演出等々もオシャレに仕上がっていていることが良いのです。
 素晴らしい映画で、素晴らしい物語であれば、白人だろうが黄色人種だろうが、黒人の主人公の気持ちに共感することが出来るのです。僅かでも理解することが出来るのです。ただ、主張をスクリーンから居丈高に叫ばれるより、こちらの方が効果は深いでしょう。

6位 スパイダーマン:ホームカミング

harutorai.hatenablog.com

 本作も本当に素晴らしかったです。アメコミ映画ファンでも何でもない自分が、断言するのだから間違いないでしょう。最近のアメコミ映画は、神話的な要素が多すぎて、ヒーローものというより、ほぼただの現代ファンタジーであることが、どうしても納得行かなかった自分ですが、本作はまさにそんな人にうってつけの映画です。
 これぞ、ヒーロー。これぞ、ヒーロー映画だろうという部分を、本作はよく見せています。願わくば、このスパイダーマンは、アベンジャーズとは深く絡まないで、じっくりとこの路線でずっと行ってくれるとありがたいのですが……最近の洋画は、そういう期待を裏切ってきたりするんですよね、困ったことに。

5位 夜明け告げるルーのうた

harutorai.hatenablog.com

 基本的に映画においては、傑作しか作っていない湯浅政明監督ですが、本作はその中でも今までの集大成的な側面を持つ傑作と言っていいでしょう。何一つ理解できない話、意味が分からないシーン、最高にキマっている(クスリが)アニメーションの数々が多重に絡み、もつれ合って、最終的には訳が分からないまま、人の涙さえ誘ってしまうという、得体の知れない映画――それが本作です。
 ただただ、本作は言ってしまえば「斉藤和義歌うたいのバラッド最高じゃね? マジ最高! やべーわこの歌!」って言いたいだけの映画なのですが、その最高じゃね?と言いたい気持ちをひたすら詰め込むと、ここまでおかしい映画になってしまうのかと、湯浅政明の才能に驚愕するばかりです。

4位 スター・ウォーズ/最後のジェダイ

harutorai.hatenablog.com

 本作も実は「ルーのうた」とある意味では同種の映画だといえます。本作も、とにかく「フォースは偉大だ」と言いたいだけの映画なのですから、そして、そのフォースの偉大さを知らしめるために、ある一点の素晴らしい興奮のみに、映画の全てを委ねてしまっている作品なのです。
 しかし、だからこそ、自分は大きく評価したいです。ハッキリ言ってこんな映画は狙ってできる作品ではありません。というか、絶対、狙っていないです。ひたすら、奇跡によって、偶然出来上がった産物なのです。そんなものがスターウォーズシリーズの一つに入ってしまった――それだけで十分に素晴らしいではないですか。

3位 ブルーに生まれついて

harutorai.hatenablog.com

 いや、正直2017年のランキングの、しかもこんな上位に入れるのは心苦しいのですが……しかし、問答無用で素晴らしいので入れるしかありませんでした。これぞ、真のジャズ映画でしょう。自分はジャズを題材にした映画は(自分がそもそもジャズを志したものであることもあり)結構、鑑賞してきましたが、ここまで素晴らしいものは今まで見たことがありませんでした。
 本作はジャズの、音楽の大きな力と、そして、その大きな闇を描いているのです。素晴らしい音楽とはなんなのか、そこまでやって手に入れたものは果たして素晴らしいといえるのか――音楽に絡む、様々なテーマを巧みに暴いた本作をどうしても、音楽に生きたものとしてこの順位に入れたいのです。


1位 キングコング 髑髏島の巨神
1位 逆光の頃

harutorai.hatenablog.com

harutorai.hatenablog.com

 この二作だけは、どうしてもランキング出来ませんでした。どんなにジャンルが違おうとも、どこまでテーマが相反しようとも、安易に「全てを一位にする」などという選択肢を選ばず、なるべく誠実に順位を決めてきた本ブログですが、この2つは無理です。
 自分にとってどうしても思い入れが最高に強い二作だからです。オールタイムベストに間違いなく食い込む二作だからです。
 どちらの映画も、人によっては「そこまでかな?」と感じる人もいることでしょう。どちらもそこまで筋書きが良く出来ているわけではないからです。しかし、この二作の映画は筋書きなど忘れさせてしまう何かが存在しています。おそらく、今年の映画では群を抜いて素晴らしい撮影を見せ、美しいビジュアルをこれでもかと詰め込み、人物の細かい所作一つ一つにまで拘ったであろうことが伺える演出など、どちらも自分にとっては、なにか大きな指針となる、金字塔となりえる一作だったのです。
 キングコングはこれから怪獣映画の金字塔として、自分が他の怪獣映画を見た時の評価の指針にすることでしょう。
 逆光の頃はこれからのドラマ映画の金字塔として、自分が他のドラマ映画を見た時の評価の指針にすることでしょう。
 なので、この2つはどうしても、順位を選べないのです。

 

総評

 今年は、良い映画と良くない映画の落差が激しすぎでした。
 良い映画は、問答無用で傑作級の出来栄えであり、良くない映画はことごとく「なんでそうなるの?」と言いたくなるような微妙な出来栄え、あるいは明確な糞映画――そんな状況だったように思います。
 特に洋画がこの傾向にあったと思います。前評判を期待して観に行っては、肩を落として帰ってくることが当たり前になっていました。特に11月以降は酷かったですね。ネットでは無理して褒めているような文章がひたすらに並び、「君は名誉外国人になりたくて、映画を褒めているのか?」と問い詰めたくなったことも多々ありました。
 邦画も邦画で相変わらず酷い映画は作られ続けていますが……去年と同じような比率で面白い映画も作られていましたので、そこはまあ良かったのかなと。邦画も11月以降が不作ラッシュになっていたのが、本気で絶望しかけましたが。

 ともかくとして、今年の総括としては「数年前から自分が言っている傾向が相変わらず続いている」という感想がぴったりでしょう。このブログで2年ほど前から言い続けているように「洋画がだんだん落ちてきており、邦画が回復基調」です。
 この状況が続くと本気で、そのうちハッキリと洋画が見捨てられる時期が来てしまうと思うので、ここらへんで頑張って欲しいと思うのですが――「リブート・シリーズもの」商法がほぼ崩壊しつつあるのに、まだ飽き足りずに続けているところ、本当にヤバいのかもなぁと危機を感じる一方です。

映画感想:オリエント急行殺人事件(ケネス・ブラナー版)


映画『オリエント急行殺人事件』予告編

 恒例の手短な感想から

神アピールがうざすぎる

 といったところでしょうか。

 

 自分はこの映画が公開される前から、この映画の情報を聞いて、こんな感想を漏らしたことがありました。

 「え、ケネス・ブラナーが自分主演で、オリエント急行殺人事件を映画化とか、ケネス・ブラナー、正気なのか?」と。正気なのか?――というのは、巨匠であるシドニー・ルメットの傑作に挑むのは無謀だとか、アガサ・クリスティの名作を穢すなとか、そういう意味で言っているわけではありません。

 ひたすらに、これを自分で監督して、自分で主演するという「ヤバさ」について言っているのです。

 なぜなら、オリエント急行殺人事件は原作の時点で、ポアロにかなりの神格を授けている作品だからです。言ってしまえば、この作品におけるポアロとは「神様そのもの」だと言っていいです。

 12人の乗客は、キリスト教の12人の使徒のメタファーです。そんな、彼らの行った罪とその懺悔を聞き入れ、寛大な心を持って受け入れ、許しを与えられる存在――それは神様しか居ないでしょう。ポアロ=神だからこそ、そして、ポアロが許したからこそ、彼らの罪が問われることはない――それがオリエント急行殺人事件という作品なのです。

 

 ここまで読んでいただければ、ケネス・ブラナーに対して「正気か?」と思った僕の心境は理解できるでしょう。そうです。そんなオリエント急行殺人事件を、自分がポアロ役で演じるのを自分が監督する、ということは、つまり、自分で監督して神様を演じているということです。

 正気なのか、と思うのも当然です。

 ――で、そんな正気なのか?という疑問をいだきながら本作鑑賞しましたが……。

 

 見事に、ケネス・ブラナーの正気ではない、「俺は神様だ」アピールが充満した。なんとも恐れ多く、傲慢な作品が誕生していました。そういう意味で、この映画はすごいです。

 シドニー・ルメットやら、ドラマ版やら散々映像化されているオリエント急行殺人事件の映像化の中で、最も出来が悪いのは言うまでもありませんが、そんなことがどうでも良くなるほど、この映画にはケネス・ブラナーの「ポアロケネス・ブラナー)はGOD!!」というドヤ顔とナルシズムで充満しているのです。

 

 映画冒頭、わざわざエルサレムを舞台に、よりにもよって嘆きの壁で、挙句の果てに一神教の三大宗教・キリスト教イスラム教・ユダヤ教の敬虔な信徒を相手に、ポアロが推理と言う名の裁きを行うシーンを入れただけでも、十分を遥かに超えるレベルで「俺様は神様だ」アピール出来ているというのに、そのあとも、まあ次々と原作の隙間を縫っては「俺様は神様だ」ということを言いたいシーンが、出てくること、出てくること……まったくケネス・ブラナーが謙虚になる気配がないのです。

 映画冒頭からちょいちょい、出てくるゆで卵はイースターエッグなどのキリスト教の風習に由来するものですし、原作にある、ポアロ=神様を匂わせているセリフも――他のシーンとかはいい加減だったり、捜査のパートは虫食い状態の穴あきにしてるくせに――ここだけは、バッチリ原作どおりに入れていたり、と、この映画に追加されている要素の全てがケネスの「I am GOD」という自己顕示欲に満ちています。

 

 挙句にクライマックスの12人の乗客たちを裁くシーンは、どう見てもダビンチの「最後の晩餐」をオマージュしています。ここまでして、ケネス・ブラナーは「自分が神様だ」と言い張りたいのでしょうか。本当にどうしようもないと言わざるをえません。

 この傲慢な作品とケネス・ブラナーこそが、神に裁かれるべきでしょう。

 キリスト教徒でもなんでもない自分ですが、そう思います。

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