儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:ギヴァー 記憶を注ぐ者


映画『ギヴァー 記憶を注ぐ者』予告編 - YouTube

恒例の手短な感想から

低予算ながら、かなり面白い

といったところでしょうか。

 

 まず、見るからに低予算の映画だということは間違いなく言えます。舞台セットのチャチさや、途中、未来を感じさせるために出てくる自転車のフォルムが「正直、今の世の中だとこういうデザインの自転車ってあるから、あんまり未来っぽく見えないよなー」と思うところといい、CGのクオリティといい、今どきのSF映画ではかなり珍しく安っぽいつくりになっていることは間違いないです。

 が、しかし、だからといって映画としてつまらないかというと、そうではありません。むしろ、低予算な中でどうにか工夫して、面白く撮ろうと作り手たちが頑張ったのか、なかなか感心させる良い映画となっています。

 正直、映画の出来からすると公開期間が短すぎる(109系列のシネコンでは、9月18日で終わってしまうところ多数の模様)のではないかと心配になるほどです。

 原作はロイス・ローリー「ザ・ギバー 記憶を伝える者*1」。同書は一部で根強い支持があった児童文学であり、この映画を見ると、根強い人気があるというのも、それなりに納得できます。

 一応、基本的な話としては、近未来SF的な設定になっているのですが、それはあくまで表面的な話であり、実は話の構造自体はどちらかというと、ファンタジーに近い構造をしています。ファンタジーに近い構造のSFというと、最も有名な作品ではスター・ウォーズなどがありますが、本作は、それらよりも遥かにファンタジーに近い構造となっています。

 寓話的なファンタジーと言っていいでしょう。

 しかも、この「ファンタジーに近い構造のSF」という部分が、結構、ある意味で反則技とも言える効果を、物語全体に波及させています。言ってしまえば、近未来SFの部分が「寓話」にリアリティを持たせているのです。寓話というのは、いろいろな世の中の物事を、大袈裟にデフォルメして描いた話であり、そのために、当たり前ですが、リアリティのある話とは言いがたい側面を持ってしまうのも事実です。だからこそ、寓話は大体の場合、完全な異世界――ファンタジーという形で処理されてしまうのが常です。

 それを近未来SFという「現実の世界と地続きの異世界」に設定することで解消しているのが本作と言えます。事実、この映画では、主人公が継承される記憶の中身が、現実の資料映像等を使ったものになっており、寓話と現実を巧みに繋げています。そのこともあってか、この映画のストーリーには、非常に人の心を打つものがあるのです。

*1:5年ほど前にこの映画と同じ『ギヴァー 記憶を注ぐ者』という題で新評論から復刊したようです

 

ギヴァー 記憶を注ぐ者

ギヴァー 記憶を注ぐ者

 

 

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