儘にならぬは浮世の謀り

主に映画の感想を呟くための日記

映画感想:ヴィンセントが教えてくれたこと


映画『ヴィンセントが教えてくれたこと』予告編 - YouTube

恒例の手短な感想から

ついに来た!2015年ワースト!

といったところでしょうか。

 

 もうとにかく、本作はなにからなにまで、徹頭徹尾、全てがとにかく酷いの一言に尽きると思います。こんなものをゴールデングローブ賞の主演男優候補に挙げる神経がまったく分かりません。

 ハッキリ言って、話の内容は、ただ単にグラン・トリノをものすごく雑にパクってるだけです。イーストウッドが演じていた役を、ビル・マーレイに変えて、グラン・トリノっぽい場面を用意して、グラン・トリノっぽい設定を用意し、そこにビル・マーレイ的なゆる~い笑いと、極めて不快なメッセージを織り込んでいるだけの内容なので、これから、この映画を見ようと考えている人は、グラン・トリノを見たほうがいいです

 

 まず、話の筋。ここはもうツッコミどころだらけで、どこがどう間違っているのか指摘しても指摘し尽くせない、決定的な脚本のミスも放置されたままの状態です。

 例えば、ヴィンセントの隣に引っ越してきた少年が、イジメっ子と和解し、取られた財布を返してもらうシーンが本編にあったりしますが、すごいことに、この映画、その財布を返してもらうシーンの前に、競馬場でその少年が、自分の財布を鞄から取り出したりしています。

 それだけでなく、途中から急に、今までそんな演技一つもしてなかったのに、あるシーンを境に、急に訛った英語で話し出す登場人物が居たり――ビンテージの車を途中のシーンで「動かなくなったから捨てた」とか言ってたのに、後のシーンになるといつの間にか車が普通に元の場所にあったり――映画のシーン一つ一つが、まったく論理的に繋がっていません。ありとあらゆるシーンを見るたびに「なぜ、こうなった?」という巨大な疑問が常に頭を巡ることになります。

 そして、話の筋が酷いだけでなく、登場人物たちのやり取りも基本的にまあ酷いです。この映画、誰かが何かを言うたびに、周りにいる人達が、それをオウム返しするやり取りがあまりにも多すぎです。そして、そのやり取りの全てが、まーとにかくつまらないから、見ている側は反応に困るしかないのです。

 役者の演技も論外で、ビル・マーレイは、いつものごとくテキトー演技をしてばかりで、しかも、他の役者はセリフをまともに覚えてないのか、しょっちゅう視線が泳ぐから「あー、こっちにカンペあって、それ読んでるんだなー」とバレバレ。演出でそれをカバーすることも出来ておらず、一番酷いのは、映画冒頭らへんにある、前述の少年が初めて教室にやってきたシーンです。生徒たちが、とあるセリフを声合わせて喋るシーンがあるのですが、全員がカメラの下にあるカンペを見ているテイクがなぜか活かされてしまっています

 

 そして、なにが酷いって映画のメッセージでしょう。まあ、見た目サイテーな男にもいいところがあるよ、というメッセージは分からなくもないです。が、しかし、その一つの『良いところ、ちょっとした良いところ』があるだけで、このヴィンセントという人間が、人に掛けてきた迷惑の数々を、全てチャラにするのは明らかに間違っています。

 これ言ってしまえば、DV男にも優しいところがあるから、DVのことは見逃してあげようよって言ってるのと同じじゃないですか?

 この映画のテーマ的には、「ヴィンセントという老人が粗雑ながらも実は周りの人間を気遣っているストーリー」のつもりで作ったんだと思います。しかし、実際の本作は「周りの人間に冷たく扱われているようで、実はとても世話させられていて、気を遣われていて、すっごい優しくされているのに、それに気付かない、老人・ヴィンセントが、どういうわけか知らないけど、励ましのために、聖人扱いまでされてしまう、極めて不快な自己中映画」と言わざるをえないです。

 全て含めて、堂々の2015年ワースト作品です。

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